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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第1章−3 「海底」の秘密

2018-01-22 08:44:14 | 私が作家・芸術家・芸人
「これから話すことは我が一族の呪われた運命についてじゃ。だが、お主なら呪いを断ち切ってくれると信じておる」
「呪い! いったい、どのような?」
「儂は殺手として、数えきれないほどの命を殺めて来た。明朝復活こそならなかったが、最後の君主制国家の清を打倒して共和制国家である中華民国の樹立に成功した。その後、多くの洪門の幹部たちが、新政府に取り入り正当政府の要人となった。だが、悪魔に魂を売り渡した儂にはそんな資格などありはしなかった」
「すべては、大義のためだったのでは?」
「もちろんだ。だが、仲間と信じていた連中は革命が成就したとたん掌を返すように殺手の儂に冷たい視線を浴びせかけ、あまつさえ切り捨てようとした。儂はすべてを恨むようになった。裏切った仲間たち、己の運命、さらに世の中のすべてを。誰からも畏れられる存在になると決心した儂に残された場所は、黒社会だけだった。そして、呪いは『海底』を見てしまったことから始まった」
「海底?」
「別に海に潜ったわけではない」
 黒龍がニヤリと笑った時、彼の顔は黒社会の大立て者に見えた。
「儂は『海底』と呼ばれる組織の極秘情報を記した会簿を見られる立場にいた。『海底』という名の由来は、日本人を母に持つ海賊、鄭成功の孫が1683年に洪門に関する秘密を鉄箱に入れて海中深く沈めたからだ」

          

「そこに、何が書いてあったのですか?」
「加盟組織の名称や構成、入会方法、裏切り者への罰、秘密のコミュニケーション手段などだ。『海底』は大幹部だけが所有を許されていたため別称『金不換』、金に換えられないものとも呼ばれていた。非合法組織への参加自体、この国では命がけなのだ。権力者に知れば命の保証はない。そのため、さまざまな隠語やサインを発達させる必要があった。まず手の動き、次に隠語に気づけば、面識無き会員同士でも、誰が大義に命をかける兄弟で、何を求めているか分かる。兄弟同士と分かれば、怨みや因縁があっても水に流される」
「なぜ『海底』の呪いが、我が一族にだけにかかったのですか? 他の幹部も、見ることができる立場にあったのでは?」
「奴らが見たのは1848年『海底』を発見した漁師から郭永奏が手に入れたもの。儂が太平天国の最中に見せられたのはパラケルススと名乗るものが持つ『裏海底』だ。あやつは、アポロノミカンとか呼んでいたが・・・・・・」


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