「聞きたいことがあるんだけど、KKK団のビラの文句読んだ? 死への旅路が終わりを告げ、始まりの旅の幕を切って落とされるって部分があったでしょ。何のことかわかる?」
「読むには読んだが、まるでスフィンクスの謎かけだな」
ナオミは、小さい頃に朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足の動物なあにという謎かけを夏海から出されて、簡単に「人」だと答えて驚かれたことを思い出した。
「前半部分はわたしたちのことを言ってるような気がするんだけど」
「どういう意味だ?」
「こころざしをおなじゅうする者。これは、LUCGのことじゃない。わたしたちは世界中からここで学ぶために集まってるわ」
「南風の地につどいて戦いの宴に身をささげよ 十字架の戦士たちと競う瞬間って部分はどうなる?」
「今回のKKK団の講演会のことじゃないかと思うの。カンザスはカンサ族の言葉で南風の人々を意味するし、クー・クラックス・クランは十字架を意味するギリシャ語kuklosと派閥を意味するclanを組み合わせたものでクロスに語感が似ているわ」
「それじゃ、炎がすべてを包みというのは?」
「その部分は、まだ解釈出来ないんだけど・・・・・・」
「そして、死への旅路が終わりを告げ、始まりへの旅が幕を切って落とされるか。死への旅路といえば、人間なんて常に死に向かって進んでいるわけだが」
「今、何て言った?」
「いや、死に向かって進んでいる」
「まさか、そんな・・・・・・」
「どうした、ナオミ! 顔が真っ青だぞ」
「不死者・・・・・・ゾンビみたいな話じゃないでしょうね」
「あり得ない」
「父がネイビーにいたのは知ってるでしょ。以前、冗談みたいなことを考える奴がいるって。死体を甦らせられないかを研究した医学者の話を聞いたと言うの。今、カンザスシティで起こっているみたいな死体紛失事件が続発して医学者が犯人だとわかって大事件になったの。だけど、軍が彼の研究に興味を持ったために処罰はされなかったらしいわ」
「それと、今回の件とどんな関係が?」
「ケネスが言ってた。たしかに死んでる奴を戦闘員に使えれば怖いものなしだな。だってもう死ぬ心配がないんだから」
その瞬間、自分の考えに凍りついた。
湾岸戦争がとっくに終わっても連絡のないケネスのことが心配でナオミはあえて考えないようにしていた。
ああ、なぜもっと早くこのことに気がつかなかったの!
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