皆の視線が、アストロラーベに集まった。
アストロラーベがつぶやいた。リギスめ、知っておったか・・・・・・
その時、ずっと黙っていたミスティラが、口を開いた。
「かまいませぬ。もとより裁かれて刑を受ける運命だった我が命。それにマクミラ様がお兄様たちの助太刀を受けている以上、魔女たちなどに負ける道理がございません」
「うるわしき姉妹愛よな」ドルガが言う。「だが、後悔することになっても知らぬぞ。よかろう、第一の闘いにはメギリヌを送ろう。そちらからはマーメイドの小娘が出るのじゃな?」
アストロラーベが確認する。「ナオミよ。どうじゃ、闘うか?」
「水が渦巻く部屋と聞いて、引っ込めるはずがないでしょ。この真珠で出来た戦闘服を着て、水中の闘いで私が誰かに遅れを取るとでも?」
「その意気やよし」
部屋に入ろうとするナオミに、マクミラが声をかけた。
「ちょっと待って」
「何?」
「人のことは言えないけど、あなたはまだ目覚めきってない」
「いまさら・・・・・・」
「たしかに、いまさらね。だけど、わたしは少なくとも冥界の記憶だけは完全に持っている。海神界出身のあなたは、精神世界での闘いは苦手なはず」
「だから何なの?」
「闘いの秘訣を教えておくわ」
「ふ〜ん、今日はやけに親切ね。いったい何?」
「何があってもおそれないこと。必ず勝つという強い意志を持つこと」
「それだけ?(Just like that?)」ナオミは、拍子抜けした。
「それだけよ(Just like that.)」マクミラが、あっさり念を押した。
「ちょっと待った!」皆が顔を向けると、声の主はケネスだった。「俺も参加させてもらう。アストロラーベとやら、お前は言ったな。もしも我らと前世よりのなんらかの縁あるならば、共に精神世界へ赴きアポロノミカンに予言された闘いに加わらんことを願う。もしもその呪文が正しいのなら、俺にも闘いに参加する権利と義務があるはずだ」
「お主に権利と義務があると申すのか?」
「20年前ネプチュヌスからナオミを預かった時、あいつは俺が死に場所を探しているといいやがった。ナオミと出会って、俺はようやく守るものができた。ここでナオミを守ることができなければ、何のために俺はこれまで生きてきた。もしもナオミを守って死ねるなら、ここは最高の死に場所になるはずだ」
「ケネス、ダメだよ。ここは人間がどうこうできる場所じゃないんだから」
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