財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第1章−7 襲撃の目的(再編集版)

2020-05-04 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「ケネス、だてに長年ネイビーにはいないね」
「ちゃかすんじゃない。学習能力のない奴はいつか命を落とすか、大切な仲間を失う。学習能力の高い奴だけが生き残れる。一度くらい勝ったと調子に乗っていると痛い目を見るし、逆に、敗北から財産を得ることもある。覚えとけ。襲撃の目的には、3つある。第一が様子見だ。序盤戦でよくあるパターンだが、実力がかけ離れている場合ならいやがらせや、余裕をもっている場合なら脅し。一目置いている場合なら、牽制の可能性もある。だが、今回はそうした可能性は排除していいだろう。なぜか、わかるか?」
「全滅させられるまで闘ったのだから様子見ではない」



「及第点の答えだ。様子見だったなら、そこそこの奴を出して勝てば御の字、負けそうなら適当な時点で撤収させている。全員を真っ正面からつぎ込むなんてありえない。じゃあ、第二の可能性、本気の襲撃を説明しよう。敵の殲滅を目指して周到な攻撃をしかける場合だ。戦略的に最重要な対象にならば、いきなり全勢力を傾けることもありえる。この可能性に関してはどう思う」
「たぶん違う。私たちに負けるようじゃ主力部隊とは思えないし、私たちがそれほど重要なターゲットだったとも思えない」
「謙虚だな。だが、たぶん当たりだ。闘いの最中にゾンビー・ソルジャーの『ころしてくれ』という声を聞いたというのは間違いないんだな?」
「まちがいないわ。あの声を聞かなかったら心を鬼にできなかったかも」
「ナオミらしいな。そいつらは、何の訓練も受けていない非戦闘員が無理矢理に戦わされていたんだろう。そんな連中に勝ったとしても、何の自慢にもならない。考えてみろ。もしも命知らずで、特殊工作部隊の訓練を受けた連中がゾンビー・ソルジャー化されていたらどうだ? 次も勝てるか?」
 ナオミは、そんな状況を想像してぞっとなった。
「いいか、特殊工作部隊の連中は資質も訓練も与えられる任務も当たり前のものとは段違いなんだ。たとえば、湾岸戦争はわずか数十人の犠牲者によって勝利を収めたとメディアによって報道されてる。フン、冗談じゃない! 月のない夜にレーダー装置を働かなくさせて最初の空爆を成功させるために、百人は特殊工作部隊員がワイヤーケーブル切断作業中に死んでるさ! だが、奴らの死体のほとんどが見つかってないんだ」
「MIA?」(“missing in action”の略で「任務遂行中の行方不明」の意)
「その通り。どんな戦闘でも、犠牲者全員の死体が見つかるわけじゃないし、何人かが捕虜になっている可能性も否定できない。しかし、今回はMIAの数が多すぎる」
「それは、つまり・・・・・・」
「カンザスでお前たちが闘った連中同様、どこかでゾンビー・ソルジャー化されてる可能性があるってことだ」
「まさか! カンザスの闘いでは、クリストフも行方不明なのよ」
「もうしばらく調べてみる。現時点ではっきりしたことは言えないが、調査は大分核心に迫ってる。ミシガン山中にあやしげな施設があるらしいんだが、周辺の警備が厳重すぎて入り込めない」


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