財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−4 引き抜き(再編集版)

2020-07-30 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 しかし、頭のいいマクミラはすでに気がついていた。
 どうしようない人間界においても、ひとつの可能性が残されていたことに。
 それは、こころよきものたちのネットワークだった。
 ふところが深く優秀なリーダーの下には、よき人間たちが集まって開かれた議論が行われる。そんなときには、それぞれの実力がきちんと認められるだけでなく、上のものが下のものの才能を伸ばしてやることができた。
 世界中から最高の英知の集まる研究機関に傑出したリーダーが誕生するという奇跡もまれに起った。歴史上、そんな条件がカジノのルーレットの大当たりのようにそろうこともあった。

 わたしにもそんな仲間はできないものか・・・・・・
 マクミラが、ジェフについ愚痴をこぼすことも多くなっていた。
「極右団体の連中といると、ゲームのためといってもイヤになるわ」
 そのため、ナオミとの闘いでクリストフと出会った時、マクミラは思った。
 フ〜ン、この男、おもしろいオーラを出してる。

 ゾンビーランドの医療用ベッドには、アルゴスから発せられた稲妻を受けて全身焼け焦げたクリストフが横たわっていた。
 マクミラは、腕組みをして考え込んでいた。足下には、例によってキルベロス、カルベロス、ルルベロスの3匹がまとわりついている。
 赤ん坊時代のマクミラにヴァンパイアにされて以来、忠誠心をつくしてきたジェフェリー・ヌーヴェルヴァーグが訊いた。
「マクミラ様、おそれながら相手側メンバーの命を救うのは、ゲームのルールに抵触しませんでしょうか? プルートゥ様の罰が下るようなことを見逃しては、亡き父からなんとしかられることか」
 マクミラが答える。「心配無用よ」
 ゾンビーランドの責任者ドクトール・マッドが、同意した。「その通り」
 普段なら魔道斉人が表に出ているが、心血を注いで作ったゾンビーソルジャー軍団のメンバーがナオミたちに全滅させられたショックで引っ込んでしまい、陰の人格マッドが現れていた。
「そう、心配不要なのだ。これだけひどく雷に打たれてヴァイタルサインがあることの方が奇跡なのだ。普通なら火傷面積が3割を越えれば生死にかかわる。だが、この男は無事な部分の方が3割以下だ。できることは医学的には何もない。だが、ジェフの質問の答えには興味がある。瀕死の重傷を負った相手側の戦力を助けようとは、どういう了見なのだ?」
「相手の貴重な戦力を自陣営に取り込めれば、相手の戦力を低下させて同時にこちらの戦力も強化できる。一石二鳥ではないか?」
 ジェフが納得して言う。「なるほど、そういうことでしたら」
 だが、マッドは納得しない。「この薪の燃えかすのようになってしまった男が、それほどの人材という根拠はなんじゃ? 今は、これまでの軍団を越えるゾンビーソルジャーの研究にかかり切りなのじゃ、それを聞かせてもらうくらいの権利は儂にはあるはず」
「この男が持っているオーラよ」
「オーラ?」
「この男には、父に似たオーラを感じる。ヴラド・“ドラクール”・ツペシュは、冥界でも人間界から来たものとしては傑出した存在。この男を救って味方にできれば、大きな戦力になるはず」
「そんな仕事の手伝いは契約にはなかったはずじゃ。ムダな努力をするほど儂はヒマではない。燃えかすをいじくりまわしたければ、好きにするがよいわ」
 マッドは捨て台詞を残して、別室に向かってしまった。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−3 不条理という条理(再編集版)

2020-07-27 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 勘違いしたものが優秀なものの足をひっぱるなどということはありえない神々の世界を知っているマクミラには、人間界の状況は全く理解しがたかった。まるで人間界においては、「不条理が条理」であるかのようだった。
 そうした時、マクミラは人間界に送られる場での冥主プルートゥの父への質問を思い出した。
(人間どもの魂と思いを交わすたびに、不思議に思う。あやつらは、なんのために生まれ、なんのために生きるのか。神に愛され才能を開花させた者は、芸術家や導くものとしてその名を残す。だが、多くは現世的な成功を求めて争い、他人をけ落としてでも、上を目指す一生を送る。生存競争が自然の摂理だとしても、なぜ他の生物を殺し、搾取し、飾り立てるのか? なぜ他の動物と共生する道を探らず、破壊の道をひた走るのか? なぜ野辺の草花に目を向けようとはしないのか? なぜ競争をし、優劣をつけるのか? なぜ個性を尊重しようとはしないのか? なぜ肌の色の違いや、自然の恵みをめぐって殺し合うのか? なぜ助け合い、お互いを尊敬しないのか? 知れば知るほど、人間がわからなくなる。生きること自体が目的と、うそぶくやからもいる。しかし、それは誤りじゃ。たかだか百年の寿命しかもたず、70を過ぎれば身体が不自由になり、80を過ぎれば判断能力の劇的衰えを経験する。それでは苦しむために生きるようなものではないか。「なぜ人間は生きるのか?」冥界に来た哲学者や教祖と呼ばれる者共の誰も、答えを出せなかった。答は、人間一人一人にかかっているとしか言えぬのか、ドラクール?)
 そのために日本の芥川龍之介が書いたという『蜘蛛の糸』を読んだ時には、この寓話は人間界の比喩ではないかと思った。
 地獄で苦しんでいた極悪人の犍陀多がかつて蜘蛛を助けたことを釈迦が思い出して、極楽から一本の蜘蛛の糸を垂らして救ってやろうとする。しかし、上っていた細い一本の糸に数限りない罪人たちもよじ登り始めた時、犍陀多が「これは自分のものだ、降りろ」と叫んだとたんに蜘蛛の糸が切れてしまうという話である。
 なぜなら底辺にいるものは、自分より上に行こうとするものを、そうはさせじと引きずり下ろそうとするのが常である。釈迦のようにすでに高い位置にあるものだけが、「細い一本の糸を垂らして」他人を引き上げてやろうとする。だがそれも地獄の底辺で苦しむ亡者たちのじゃまによって、挫折することが多いのだが。
 神々の世界においては、嫉妬や中傷があったとしても、誰かの能力が過大評価されたり過小評価されたりすることはなく、真の実力が認められたし能力のあるものは常に一目置かれた。そのために、嫉妬や中傷が誰かの行動原理になることはなく、そんな暇があったら努力をすることが当たり前だった。
 ところが、人間界では努力して上を目指すよりも、他人を引きずり下ろす方が手っ取り早いとか、それが最優先だと信ずるものも多かった。
 優秀な人間にとっても全体にとっても不幸なことには、嫉妬や中傷に血道を上げる輩が力を持った時に、誰かが愚行を批判することは不可能だった。
 なぜなら、そんなことをすればとばっちりを受けることがはっきりしていたからだった。さらに、おかしなことには自らが所属する分野の努力を放棄した人間は、他の分野ですでに権威を獲得した人間にすり寄ることも多かった。畑違いであれば、自分のみじめさを直視する危険をおかすこともないからである。
 マクミラは、「その人がすごいのはわかるが、あなた自身はどうなのだ?」と問いたい気分だった。ドロドロした波動の人物と一緒にいると、精神状態だけでなく体調まで悪くなるために、人間を知れば知るほど気分が重くなった。
 同時に、自分の考えに気づいて愕然とすることもあった。
 ん、何を悩んでいる? 
 まるで立場が逆ではないか。ナオミではあるまいし! わたしの立場では、ひどい人間が主導権を握って優秀な人間たちに仕事をさせずに絶滅の方向へ向かえばよいのだから、人間のおろかさをよろこぶべきなのだ!


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−2 ポシー・コミタータス(再編集版)

2020-07-24 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 第五期に入って、KKK団は他の極右団体と連帯を図るようになる。
 たとえば、1960年代に設立されたアメリカにおけるKKK団と並ぶ強大極右組織「ポシー・コミタータス」である。この団体のメンバーたちは、政治はローカルなものだと考えており、選挙で選ばれる各地の保安官こそ最高の行政官であり、カウンティと呼ばれる各郡では、保安官が連邦や州政府の影響なしに自由な権限を持つべきだと考えている。白人こそがイスラエルの失われた支族の子孫であり、ユダヤ人は悪魔から派生しており、黒人その他の少数民族は人間以下であると考えていた。さらに、一部のメンバーは戦争や災害に備えて生き残るために、食料備蓄や武装する必要を信じるサバイバリズムを信奉している。1976年のFBIの報告書によれば、当時すでに全米で1万二千人から5万人のメンバーとさらにその約十倍のシンパがおり、二十三州に七十八の支部があると言われていた。

 先ほど触れたKKK団第五期の理論家の一人ボブ・マイルズは、ミシガン州フリントの出身であり、KKK団内部の対立を解消して、他の人種差別団体との連携をかけて実現させることに貢献した人物である。
 KKK団は、非合法組織の常でさまざまな符牒を用いていた。自分たちにだけ通じる表に出せない言葉を共有することで、裏のきずなを強めようとする儀式のようなものだった。彼らは、全米組織をエンパイア、全米の長をインペリアル・ウィザード、特定の州組織をレルム、各レルム長をグランド・ドラゴンと呼んでいるが、マイルズはミシガン州のグランド・ドラゴンにまで上り詰めている。マクミラは、マイルズがまとめあげた暴力的な非合法活動組織のノウハウと、白人国アメリカの将来のビジョンを知りたいと思ったのであった。
 マクミラは、人種対立をあおったり騒乱の引き金を引いたり、これはと思う人材を発掘するために、極右団体と交流を持った。しかし、人材発掘の可能性に関しては絶望的だった。実際、人類にとっては幸運だったのは下司な集団には光る人物は全くいなかったからだ。優秀な人間は自分の意見をはっきりと主張する傾向があり、必ずしも組織には向いてはいなかった。
 マクミラは、人間を見ていて興味深いと思った。いかなる集団であっても、優秀な人間などまず10人に1人もおらず、せいぜいマシな人間が3割、普通の人間が3割、ひどい人間が3割というのがマクミラの評価だった。
 興味深いのは、最もひどい人間はレベルが低すぎて自らのレベルを認識できずに「自分こそ優秀」と勘違いしている点だった。少しマシな人間も、優秀な人間の匂いだけはかぎつけて、陰で悪口を言ったり足を引っ張ることに血道を上げる。結果として、たまたま指導する者も優秀でない限り、優秀な人間は才能を伸ばすよりもつぶされることが多かった。自分のベストを他人がやすやすと超えていく時、それを努力と才能の結晶と呼ぶことができずにあらさがしをする輩のなんと多いことか! まるで彼らの活躍が親の仇でもあるかのように。ところが、普通の人間は概して謙虚であり勘違いもしないために正しい判断をすることが多かった。結果として、ほとんどの集団ではねたみとそねみがメンバーの行動原理になっていた。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−1 ミシガン山中(再編集版)

2020-07-20 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 魔物狩りが一段落したマクミラは、ヌーヴェルヴァーグ・タワー最上階の自室で思い出していた。
 1991年夏、聖ローレンス大学でのゾンビーソルジャーたちとの闘いで傷ついたクリストフの肉体をミシガン州山中に持ち帰った時のことを。
 勝負に勝った「ご褒美をあげる」とナオミたちに約束したからには、彼女の友人を見殺しにするわけにはいかなった。これは、戦争や裁判ではなくゲームなのだから、ボーナスポイントというわけだ。
 山中には、ヌーヴェルヴァーグ財団が運営する4つのテーマパークがあった。
 通常のテーマパークが「夢と希望の象徴」なら、マクミラのテーマパークは「悪夢と恐怖の象徴」だった。第1の建物ゾンビーランドでは、不老不死の研究がおこなわれていた。第2の建物ノーマンズランドでは、軍事兵器が研究されていた。第3の建物ナイトメアランドでは、精神世界の研究をおこなわれていた。最後の建物アポロノミカンランドでは、魔術と神話の研究とアポロノミカンが探索されていた。
 クー・クラックス・クラン(KKK団)と関係を持ちながら、彼らが拠点を持つ南部ではなく、中西部のミシガン州に研究所を置いたのにはわけがあった。KKK団の歴史は、5つに分けることができる。
 南北戦争直後の1866年に誕生してから「再建の時代」の第一期には、彼らはほとんど反乱軍同様の無法集団であった。
 しかし、1920年代に再興した第二期には、合法的に極右政治運動を行い、会員数は数百万人に達したと言われる。
 最も悪名高い第三期が、公民権運動に対抗して黒人に対するリンチやテロを行った1960年代である。
 第四期の1970年代は、団体がPR活動に従事した時期で、後にKKK団のリーダーシップを取ることになる理論家たちが誕生した。
 1980年代以降の第五期に入ると、黒人差別団体という伝統的な方針から、白人優越主義(White supremacy)を全面に押しだして、アジアが世界の脅威になるという黄禍論、ユダヤの世界陰謀説、反共産主義などが掲げられるようになってデモや襲撃などが中心的な活動になっていく。
 また、ミシガン州にはミニットメンと呼ばれた、独立戦争時代に即時召集に備えて待機していた民兵以来の伝統を持つ準軍事組織が存在していた。こうした武装勢力は、自分のことは自分で守るという大義名分の元に軍事訓練さえおこなっていた。
 「赤さび地帯」と呼ばれる東・中西部の重工業地帯は、かつて鉄工業を中心に栄えていたが、現在では自動車業界などの構造不況産業を抱えて失業率が高い。こうした地域には、非大卒の白人貧困層が海外からの輸出増加や連邦政府の政策に不満を募らせており人種差別主義的な運動が育つ下地があった。


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マーメイド クロニクルズ第二部(再編集版)序章〜第三章バックナンバー

2020-07-17 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「第一部 神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ

 

第二部のストーリー

 マーメイドの娘ナオミを軸とする神々のゲームを始めたばかりだというのに、再び最高神たちが集まらざるえない事態が起こった。神官マクミラが人間界に送られた後、反乱者や魔界からの侵入者を閉じこめた冥界の牢獄の結界がゆるんできていた。死の神トッド、悩みの神レイデン、戦いの神カンフ、責任の神シュルドが堕天使と契って生まれた魔女たちは、冥界の秩序を乱した罪でコキュートスに閉じこめられていた。「不肖の娘たち」は、彼女たちを捕らえたマクミラに対する恨みをはらすべく、人間界を目指して脱獄をはかった。天主ユピテルは、ゲームのルール変更を宣言した。冥界から助っ人として人間界に送られるマクミラの兄アストロラーベとスカルラーベ、妹ミスティラは、彼女を救うことができるのか? トラブルに引き寄せられる運命のナオミは、どう関わっていくのか? 第一部で残された謎が、次々明らかになる。

冥界関係者

プルートゥ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「裁くもの」で冥主

ケルベロス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3つ首の魔犬。「監視するもの」でキルベロス、ルルベロス、カルベロスの父

ヴラド・“ドラクール”・ツェペシュ ・・ 親衛隊の大将軍。「吸い取るもの」で人間時代は、「串刺し公」とおそれられたワラキア地方の支配者

ローラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・“ドラクール”の妻で、サラマンダーの女王。「燃やし尽くすもの」

アストロラーベ ・・・・・・・・・・・・・・ ヴラドとローラの長男で、親衛隊の軍師。「あやつるもの」

スカルラーベ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同次男で、親衛隊の将軍。「荒ぶるもの」

マクミラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同長女で、人間界に送り込まれる冥界最高位の神官でヴァンパイア。「鍵を開くもの」

ミスティラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同次女で、冥界の神官。「鍵を守るもの」

ジェフエリー(ジェフ)・ヌーヴェルバーグ・ジュニア … マクミラの育ての父

悪魔姫ドルガ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 死の神トッドの娘で「爆破するもの」。マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

氷天使メギリヌ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 悩みの神レイデンの娘で「いたぶるもの」。マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

蛇姫ライム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 闘いの神カンフの娘で「酔わすもの」。マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

唄姫リギス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 責任の神シュルドの娘で「悩ますもの」。マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

海神界関係者

ネプチュヌス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 海主。「揺るがすもの」

トリトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ネプチュヌスの息子。「助くるもの」

シンガパウム ・・・・・・・・・・ 親衛隊長のマーライオン。「忠義をつくすもの」

アフロディーヌ ・・・・・・・・ シンガパウムの長女で最高位の巫女のマーメイド

ナオミ ・・・・・・・ 同末娘で人間界へ送り込まれるマーメイド。「旅立つもの」

トーミ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ナオミの祖母で齢数千年のマーメイド。

ケネス ・・・・・・・・・ 元ネイビー・シールズ隊員。人間界でのナオミの育ての父

夏海 ・・・・・・・・・・・・ 人間界でのナオミの育ての母。その後、ニューヨークに

ケイティ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ナオミのハワイ時代からの幼なじみ

天界関係者


ユピテル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「天翔るもの」で天主

アポロニア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アポロンの娘で親衛隊長。「継ぐもの」


ケイト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アポロンの未亡人。「森にすむもの」

ペルセリアス ・・・・・・・ 同三男で天使長。「率いるもの」で天界では金色の鷲。人間界ではクリストフ

墮天使ダニエル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ マクミラの「血の儀式」と神導書アポロノミカンによって甦ったクリストフ

コーネリアス ・・・・・・・・・・・・・ 同末っ子で「舞うもの」。天界では真紅の龍。人間界では孔明



「第二部 序章」

「第二部 第1章−1 ビックアップルの都市伝説」
「第二部 第1章−2 深夜のドライブ」
「第二部 第1章−3 子ども扱い」
「第二部 第1章−4 堕天使ダニエル」
「第二部 第1章−5 マクミラの仲間たち」
「第二部 第1章−6 ケネスからの電話」
「第二部 第1章−7 襲撃の目的」
「第二部 第1章−8 MIA」
「第二部 第1章−9 オン・ザ・ジョブ・トレーニング」

「第二部 第2章−1 神々の議論、再び!」
「第二部 第2章−2 四人の魔女たち」
「第二部 第2章−3 プル−トゥの提案」
「第二部 第2章−4 タンタロス・リデンプション」
「第二部 第2章−5 さらばタンタロス」
「第二部 第2章−6 アストロラーベの回想」
「第二部 第2章−7 裁かれるミスティラ」
「第二部 第2章−8 愛とは何か?」

「第二部 第3章−1 スカルラーベの回想」
「第二部 第3章−2 ローラの告白」
「第二部 第3章−3 閻魔帳」
「第二部 第3章−4 異母兄弟姉妹」
「第二部 第3章−5 ルールは変わる」
「第二部 第3章−6 トラブル・シューター」
「第二部 第3章−7 天界の議論」
「第二部 第3章−8 魔神スネール」
「第二部 第3章−9 金色の鷲」


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第3章−9 金色の鷲(再編集版)

2020-07-13 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 アポロニアに向かって、ケイトが伝える。(お忘れかい、マクミラ様が降臨してからヴァンパイアになられたことを)
 今度はユピテルが思念を返す。(それと今回のことと、いったいどういう関係があるのじゃ?)
(マクミラ様とナオミ様が闘った夜ですが、ペルセリアスの遺体が消えた理由はおそらくマクミラ様が持ち去ったのではないかと)
(なんのために?)
(少なくとも、3つの理由がこのケイトには見えます。1つ目は、闘いに勝ったナオミ様にマクミラ様は「ごほうびをあげなくては」とおっしゃいました。それはホールを丸焼きにして講演会を中止したことではなく、仲間の命をすくってやるという意味。精神は肉体の影響を受けるものです。人間に生まれ変わったマクミラ様は、知らないうちに「言霊」(ことだま)にしばられております。2つ目は、マクミラ様は慎重なお方で、むやみにヴァンパイアの仲間を増やすことはしなかった。しかし、聡明なお方なので、これはという相手を見逃すこともしない。ペルセリアスを自陣営に取り込めれば、敵陣営の戦力を同時に弱めることにもなり、一石二鳥と考えるはず。最後の理由は、・・・・・・)
(どうした?)
(アポロニアよ、お主が、銀狼、雷獣、金色の鷲、龍の神獣たちと契りをむすんで父親の違う息子たちを次々に産んだ時でも、愛に関して過剰であった我が夫アポロンの血筋のせいと考えて何も伝えなかった。だから、己の息子が母から独り立ちするかもしれぬと知っても、ショックを受けるのではないぞ)
(母上様、死んだかもしれぬペルセリアスが生きていると聞かされて、これ以上ない幸せを今、感じております。ご遠慮なくマクミラ様がペルセリアスを助けた最後の理由を、どうぞ伝えてくだされ)
(最後の理由は、マクミラ様がペルセリアスに恋をしたのではないかと思う。そう驚いた顔をするものではない。マクミラ様は、冥界で最高位の神官であらせられた時分、たしかに「誰も愛さず、誰からも愛されずに」おられた。だが、マクミラ様が唯一惹かれておられた男性が父親のヴラド・ツェペシュ将軍じゃ。“ドラクール”様が「吸い取るもの」と呼ばれるのは、ヴァンパイアだからではない。周りのものの気持ちを吸い取り、引きつけてやまない魅力のゆえにじゃ。ペルセリアスには、時折“ドラクール”様と同じオーラを感じることがあった。マクミラ様が、最初から自分の気持ちに気づいているとは思えぬ。なぜなら、一度も愛を知らぬものは、目の見えぬものが本当の色を知らぬように、自分の感情の動きに気づくこともない。だが、いったん自分の気持ちが愛と気づいたとき、二人に何が起こるかは、わしにもわからない)
 そこまで聞いて、ユピテルが愉快そうに思念を発した。
(天界からは助太刀を出せずに、新しいゲームには興ざめと思っていたものが、おもしろい展開になったものじゃ。プルートゥめ、「冥界のことは冥界のものたちで始末をつける」と宣言しおったが、元天使長の助けを借りると知ってくやしがる姿が目に浮かぶようじゃ。アポロニアよ、心配は無用。道は必ず開ける! Ad astra per aspera!)


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第3章−8 魔神スネール(再編集版)

2020-07-10 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

(たとえ堕ちたといえども四人は、まだ冥界の一員。神の存在のまま人間界に仮の肉体を持ってとどまれば、1~2年の命。ですが、人間界に長くとどまる別の手だてがございます)
(それは、いったい・・・・・・)
(魔界に伝わる秘技を使えば、次々と人間に乗り移り続けることで長い年月、人間界にとどまることができます)
(その業を、四人の内に知っているものがいると申すのか?)
(かつての大天使ルシファー、今や大魔王サタンの遠縁メギリヌならば・・・・・・人間界に行くたびにあの四人が魔界と接触していたのは周知のこと。それに、四人がマクミラを恨みに思う理由は、捕まえられたせいだけではありませぬ。最大の理由は、四人の愛しい相手、魔神スネールがマクミラを愛してしまったため。スネールは、マクミラが四人を捕らえている間に人間界に堕ちて、今では「太古の蛇」と呼ばれるようになっております。四人は、マクミラを滅ぼしてしまえば、スネールの愛を再び得られると考えているのです)
(なんということじゃ。四人を始末できなければ、人間界に魔女どもが放たれたままになるだけではなく、スネールと結託する危険まであるというのか! だが、プルートゥは天界と海神界からの助太刀を拒みおった。何もわしにできることは、何もないのか!?)
(おそれながら、今回、マクミラ様を助けるのは冥界からの助太刀だけではないと思われます)
(ナオミのことを指しておるのか? しかし、あの四人の力に対抗するだけの力は、まだないのではないか?)
(いいえ、我が息子ペルセリアスです)
(金色の鷲が本来の力を出せれば大きな戦力となろうが、ペルセリアスは前回の闘いの後、行方知れずになっているのではないか?)
(仰せの通りでございます。しかし、息子が亡くなれば必ず母には分かるはず。わたくしには、まだペルセリアスがまだ生きているような気がしてなりませぬ)
 そのとき、ずっと沈黙を守っていたアポロニアの母ケイトが思念を伝えた。
(ユピテル様、ペルセリアスは死んでいないが、もう生きてもいないかも知れませぬ。「森にすむもの」のわしじゃからこそ、わかる。ペルセリアスは、ミシガン州の森の中で今でも変態を続けて生きております)
 アポロニアが、はっとして思念を返す。
(それはいったい?)


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第3章−7 天界の議論(再編集版)

2020-07-06 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 遠く映るその影が太陽の黒点として知られる四次元空間、エリュシオン。
そこに鎮座するユピテルの支配するオリンポス神殿。ここは「光の眷属」でなければ、瞬時に蒸発してしまいかねない光と灼熱の空間。
いつものんびり飛び回る神殿の極楽鳥のリーダー錦鶏鳥と銀鶏鳥が、緊張から宿り木から離れようとしない。
 大広間では、「天翔るもの」ユピテルが怒りのオーラを発散していた。
 中央に位置するのが親衛隊長で、「継ぐもの」アポロニア。
 父「輝けるもの」アポロンから美貌を、母「森にすむもの」ケイトから勇敢さを受け継いだ神界最強の女神。ケイトの血筋を引く者たちは、かつて人間界でスキュティアの地にアマゾネス王国を築いたと言われるが、真偽のほどは確かめようもない。
 いつもなら各々が百万の兵を率いる息子たちも顔をそろえるが、すでに人間界に送り込まれて彼らの姿はない。長男の光の軍団長「光り輝くもの」シリウス、次男の雷の軍団長「対抗するもの」アンタレス、三男の天使長で「率いるもの」ペルセリアスだけではない。組織が嫌いで、したがう上司も部下もいなかった、末っ子で真紅の龍の「舞うもの」コーネリアスまでいなくなっていた。今日は、めずらしくケイトが出席していた。

 ユピテルが、会議の開始を伝えた。
(皆の者、面をあげよ。ドルガ、メギリヌ、ライム、リギスの四人の魔女が人間界に向かったことで、三神界によるゲームのルールが変わる。アポロニアよ、まず戦況分析を聞かせてもらおう)
 アポロニアが、冷静に思念を伝える。
(最初の戦いでは、ナオミたちの側がマクミラの側に勝利を収めました。冥界の牢獄から抜け出した四人が向かう先は、マクミラのいるニューヨークです。残念ながら、我が息子たちは完全な目覚めにはほど遠いありさま。今回の戦いの先行きを考えると、親衛隊長として誠になさけない気持ちでございます)
(あせって人間界の受け皿を考えずに彼らを送り込んだのは、わしの手落ち。そう責任を感じることはない。だが、魔女たちが仮の姿で人間界にとどまれば、せいぜい1~2年の命のはず。そこが気になる。いくらマクミラ憎しといえども、あの自由奔放に生きるためならすべての掟をやぶりかねない四人が、なぜ多元宇宙ではなく人間界に逃げたのか)
(あくまで予想でございますが、おそらくもはや堕天使としてではなく、魔界のものとなって生きるつもりではないかと)
(どういうことじゃ?)


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第3章−6 トラブル・シューター(再編集版)

2020-07-03 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

(新たに助太刀を送れるのは、たしかに冥界からだけじゃが、わしはこうした時にそなえて布石を打っておいた)
(ナオミの育ての父ケネスの背中のタトゥーでございますな・・・・・・)
(さすがかつての「うらなうもの」よ。前もって準備しておいたものを使うのなら、新たな助太刀を送ることにはならぬ)
 ネプチュヌスが、今度はシンガパウムに顔を向けた。
(ケネスの背のタトゥーは、いざというときには海神界と人間界をつなぐチャンネルになる。一度限りじゃが、チャンネルを通してお主を人間界に送れるのじゃ。今のナオミでは、四人の魔女たちと勝負にはならぬ。たとえ、マクミラと共闘したとしてもじゃ。万が一の時は、ナオミを助けるために人間界に行くのじゃ)
(おそれながら、わたくしには親衛隊の仕事がございます。すでに、人間界に行ったナオミのために不在となるわけにはいきませぬ)シンガパウムが武人らしい思念を返す。
 その時だった。
 ネプチュヌスの息子で、王子トリトンが思念を発した。神殿の男たちのほとんどがマーライオンなのに対して、ネプチュヌス直系の神であるトリトンは美しい顔立ちに魚の下半身を持っていた。
(シンガパウム様、ご心配にはおよびません。わたくしをお忘れですか?)
親衛隊の一員として北門を守る責任者トリトンは、「助くるもの」であった。いつも遠くを見るような瞳からは、心の内は探れなかった。しかし、いったん剣を振るえば、流れる大河さえ切り裂かれたことを忘れて流れ続ける達人である。気品、威厳、高潔。そうした言葉が似合う神だった。
(王子よ、娘を救うのは、わたくしごと)
 普段ならけっして親衛隊長のシンガパウムに逆らうことのないトリトンが、怒ったような思念を返す。(それは違いますぞ。神々のゲームが続いている以上、海神界にはナオミを助ける責任があります。いざというときには、「助くるもの」として不肖トリトンがシンガパウム様の代理をつとめさせていただきます)
 本当は、トリトンは自分自身でナオミを助けに行くと伝えたかった。だが、あえてその気持ちを封印した。ネプチュヌスのお気に入りのナオミと幼少時からいつも共に遊んだトリトンは、気がつけば兄妹のような関係になっていた。ナオミにとってトリトンはなんでも話せて頼りがいのあるやさしい兄だったが、美しいマーメイドに成長したナオミにトリトンは兄妹以上の感情を持つようになった。だが、いつもトリトンの前で無防備に振る舞う「妹」に、絶対権力を持つ最高神の子である「兄」が愛の告白などできただろうか? 愛を告白出来ぬ立場なら、せめて兄として妹を助けてやりたいという一心であった。
(シンガパウムよ、王子の顔を立ててやってはくれぬか? それに、ひさびさにお主の戦いを見てみたいと思うのは、わしだけではあるまいて)ネプチュヌスが引き取って思念を送る。
(お主が人間界で、ナオミを助けることはすでに定められている。それに、わしもお主の戦いを見てみたいと思うものじゃ)トーミが思念を伝えた。
 ネプチュヌスが決断を下す。(それでは、ナオミが危機を迎えたとき、シンガパウムは助けに人間界に降臨する。ただし、シンガパウムが降臨できるのは一度きりとする!)


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