財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−5 血の契りの儀式(再編集版)

2020-08-03 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「魔道、いやマッド抜きで、これだけ損傷を受けた患者を救えるのですか?」ジェフは途方に暮れたように言った。
「現代医学の力など、端から当てにする気はないわ。さあ、ひさびさに祭祀を執り行うとするか」マクミラがハスキーボイスで続ける。
 腕まくりをしようとした時、3匹がワンと一声吠えた。
「我としたことが・・・・・・まず血を吸わなくては」青白い顔がなぜか赤らんだ。
 するどい牙をクリストフの首筋に突き立て、わずかに残った血流を探し当てる。安堵の表情が浮かぶが、儀式に十分な血を吸えたかは確信がなかった。
「いざ、“ドラクール”一族の契りの儀式を始めん。この者、我らとの縁ありや。もしも前世よりのなんらかの縁あるならば、黄泉がえり我が眷属とならんことを願う。もしもなんの縁もなかりせば、プルートゥ様の元へと向かい裁きを受けるがよい」
 マクミラが左手首に自ら鋭い牙を突き立てた。
「我が腕より流れ落ちる血、この者の体内を駆けめぐらんと欲す! 流れ落ちる血、この者に“ドラクール”一族の眷属にふさわしい魂と身体を与えんことを祈らん! 流れ落ちる血、この者に呪いと祝福を与えんと欲す!」
 たちまち静脈が破れて、真っ赤な血がしたたり落ち始めた。
「以前、言ったわね。我は、ヴァンパイアの身内を増やすことには慎重だと。だが、この男を救うのは正しいことだと確信がある」
 焼け焦げたステーキどころか、暖炉の中の燃えさしのようになったクリストフの身体が、マクミラの手首からの血を受けて変化を起こし始めた。
 ドクン、ドクン、・・・・・・
 マクミラの血がクリストフの身体に落ちる度に、ヤケドした皮膚に赤みが戻り、心拍を停止していた心臓の鼓動が戻ってきた。
 かすかにだが、ウッ、ウッと呻き声が聞こえた。
 マクミラがつぶやく。「まだ完全には細胞が死んでいなかったようだね。もしそうなっていたら精神を作り替えることもできないし」
 必死の形相は、さながら「フランケンシュタイン計画」を進めていた当時の魔道であった。
 だんだんとクリストフの回復のスピードが遅くなっていく。それでもマクミラは血を垂らすことをやめない。
 あまりに多量の血を見てジェフが心配になる。「マクミラ様、それでは血液のほとんどを流してしまいます。どうぞ、私の血もお使いください」
「ダメよ。儀式の途中で血を変えるなんて・・・・・・ましてや、お前のワインブレンドの血では効き目があやしい」
「こんな時に、ご冗談を・・・・・・」
 いつもの青白い顔がさらに青白くなって、マクミラがうめく。
「たしかに冗談を言ってる時じゃないわね。我がオリジナル・ブラッドをもってしても、これ以上はなんともしがたいか・・・・・・」
 考え込んでいたジェフが思い切って言う。「マクミラ様、奥の手を使われては」
「奥の手?」
「アポロノミカンです」


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