夕闇ただよう上空から、四人の魔女たちは不老不死研究を行うゾンビーランドの様子をうかがっていた。
ミシガン山中の建物は、ブラム・ストーカーの小説から抜け出したドラキュラ城のような不気味さをたたえていた。敬愛する父の「伝説」に、娘のマクミラが無意識の内にしたがっていたのかも知れない。
軍事研究を行うノーマンズランドは、ゾンビーランドに隣接している。警備員の姿はないが、見る者が見ればハイテク監視装置が完備されているとわかった。
精神世界研究をおこなうナイトメアランドは、二つの建物に隠されていたため様子が分かりにくかった。最後の建物アポロノミカンランドは、さらに奥に鎮座しており、最も厳重な管理体制下におかれていた。
「警戒厳重な建物じゃな。爆撃して様子を見てみるか?」人間界に来て肉を持ったドルガが、まだ慣れない声で言う。
「中にいる奴はよほどの冷血漢とみえる。人間とは思えないほど冷たい、だが暴力的なオーラを感じる」メギリヌが、やはり声に出して答える。
「外からの攻撃には、ドルガ様の能力がよさそうじゃ」ライムが言う。
「扉が開かれれば、私が全員を眠らせるでありんす」リギスが同意する。
ドルガが、翼の羽ばたきを強めていく。そのたびに起きる竜巻も、大きくなっていく。ドルガの目が輝いた瞬間、翼から自ら意志を持ったかのように荒れ狂う竜巻がゾンビーランドを襲った。
バリ、バリ、バリ・・・
ドリルのような音を立てて竜巻が爆発すると、正面の扉が吹っ飛んで異次元空間に飛んでいってしまう。これが冥界最強技の一つとおそれられたドルガのファイナル・フロンティアであった。
跡形もなく消え失せた扉がどこにいくかは、ドルガ自身にも分からない。
一つだけ分かっているのは、扉がもう二度とこの世界に戻ってくることはないということだ。
「さすがドルガ様」メギリヌが言う。「腕はちっともにぶってはおられぬ」
「いや」ドルガが答える。「まだまだ、我の本領にはほど遠い」
その時、ゾンビーランドからドクトール・マッドが姿を現した。
「誰じゃ、派手に花火を上げるのは?」上空の魔女たちを睥睨する。「事と次第によってはただではおかぬぞ」
「アポロノミカンを見た人間が、ここにもいたでありんしたか。しかも、禁断の知識をものにしているとは。お前さん、名はなんと申すでありんす?」リギスが答える。
「いったい、いつの話じゃ? 禁断の扉など、とっくの昔に開かれておる。聞かれて名乗るもおこがましいが、最初に生を受けた名が魔道斉人。だが奴が引っ込んで以来、ドクトール・マッドが儂の名じゃ」
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