財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−9 最悪の組み合わせ?(再編集版)

2021-03-29 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 氷天使に対してマーメイド?
 普通に考えれば、最悪の組み合わせに近い。
 フロストキネシスによって水が凍らされてしまえば、マーメイドにとっては陸地で闘っているも同じ。実際、ここまでの闘いを見る限り、ナオミは苦戦している。
 ここは冥界最強の炎使いスカルラーベを当てるか、あるいはアストロラーベが軍師役に専念するならば、弱いとはいえサラマンダーの女王の血を引くマクミラでもよい。なんにしても、ここはパイロキネシスを持つものを当てるべきであった。しかし、四人の魔女相手のシミュレーションをしている時でも、アストロラーベは対戦相手の組み合わせは何も漏らしてはくれなかった。
 それでも、マクミラには確信があった。
 必ず軍師には、深い考えがあるはずだ。
 ここまでは、アポロノミカンの予言通りになっている。

 ・・・・・・清らかなる魂と
 邪なる魂が出会う
 百年に一度のブリザードの吹き荒れるクリスマスの夜
 四人の魔女と神官の闘いが幕を開ける時
 血しぶきの海に獅子が立ち上がり
 マーメイドの命を救う・・・・・・

 見守っていたケネスだったが、もういても立ってもいられなかった。
 クソッ、蟷螂の斧かも知れないが、飛び出して行くか?
 その時、身体の内部からケネスだけに聞こえる声が話しかけてきた。
(ケネス殿、しぶきを上げることはできもうすか?)
(お前は、ずっと俺の背中にいたナオミの父親だな)精神感応能力のないはずのケネスが、返事をした。
(我が名は、シンガパウム。しぶきさえあれば降臨し、氷天使とまみえることが叶いまする。だが、氷の世界のままでは・・・・・・呼び水が必要なのでござる)
(しぶきがあればいいんだな?)念を押すと、ケネスは氷上に飛び出した。
「ナオミ、絶対負けるなよ!」次の瞬間、ケネスは自らの心臓に抜き手を突き刺すと、ひっかくように血管を引き裂いた。
 あざやかな血しぶきが、一気に数メートルも立ち上がった。
 その血しぶきの中から、ケネスの背中のタトゥーから抜け出したシンガパウムが立ち上がった。
(ケネス殿、かたじけない)
(礼にはおよばないぜ。俺たちの娘を、ナオミを早く助けてやってくれ)大量出血に、薄れ行く意識の中からケネスが伝える。

 足から腰、腰から腹、腹から胸へだんだんと身体が凍りついて、ナオミも意識が薄れつつあった。最初は激痛だったのが、血の巡りがなくなってきたのか、眠くなってきた。
 その時、目の前になつかしい姿がぼんやりと見えた。
 シンガパウム様・・・・・・でも、こんなところにいるハズがない。
 夢かしら? 私、このまま死ぬのかな?


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