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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第1章-6 神獣たちの闘い

2018-02-03 10:58:18 | 私が作家・芸術家・芸人

 地鳴りが収まると、突然、噴砂と噴水が地面のあちこちで始まった。続いて、多重竜巻が起こった。
 中心にスーパーセルと呼ばれる積乱雲が生じて、強い上昇気流と下降気流が生まれた。上昇気流領域では、下降気流層に乗り上げた暖かく湿った空気が上昇する。時に地上10から15キロにまで達する強力な上昇気流は、積乱雲の発生に必要であり、この過程で空気中の水蒸気が凝固して雲が生まれる。
 下降気流領域では、集中豪雨が降っている。雨は大気中で蒸発する時に気化熱を奪い下層を冷すと自身の重さで大気を押し下げるために、下流気流が増強される。激しいダウンバーストに伴い、強い雨が降り続けるだけでなくアラレや雹が降る。
 龍は、すべてをなぎ倒し上空に吹き上げる上昇気流とすべてを押し流す集中豪雨と、当たれば大けがをさせるアラレや雹をあやつれた。
 神獣たちの特訓がパワースポット内の竜泉を刺激して、龍を目覚めさせてしまったのだった。
「チャック、ビル、油断するな!」孔明が怒鳴った。
 次の瞬間、霞ヶ浦の水が竜巻によって数十メートルもわき上がった。
(我が眠りを覚ましたのは誰じゃ?)全員の頭の中に、雷鳴のような思念が響き渡った。(銀狼、雷獣、ほう、龍の血を引く者までいるか・・・・・・)
「眠りをさまたげたことはあやまる。この場は、この老体に免じて矛先をおさめてはくれぬか?」青龍が龍に語りかけた。
(ならぬ! 数千年間の我が眠りをやぶった報いを受けるがよい。奴らも力を試したくてウズウズしているようじゃ)
「ちょうどいい。龍相手にレインボー・スクラッチを試せるなんてめったにない」チャックが銀狼のままで言うが早いか、崖を駆け上がった。
 次の瞬間、七色の虹と化したチャックは、するどい爪で龍に襲いかかった。
 最初の一撃が、レッド・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、傷跡が切り裂かれる。
 第二撃が、オレンジ・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、傷跡が閉じなくなる。
 第三撃が、イエロー・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、全身がマヒする。
 第四撃が、グリーン・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、動けなくなる。
 第五撃が、ブルー・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、血潮が沸き上がる。
 第六撃が、インディゴ・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、出血が止まらなくなる。
 最後の一撃が、パープル・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、血糊が吹き出す。

 七つの連続攻撃を受けた相手は全身の血を失って、シリウスの勝ちどきを薄れ行く意識の中で聞くことになる。だが、さすがのレインボー・スクラッチも龍の固い鱗にはじかれて傷一つつけられない。
 最後の一撃は、最悪の結果をもたらした。
 パープル・スクラッチが、「龍の逆鱗」に触れたのであった。
 中国の伝説では、龍は81枚の鱗を持つが(81は多くの数の象徴にすぎず)、実際には数千枚の鱗を持つ。龍はあごの下に逆向きの鱗が一枚だけ生えており、触れられると激怒すると言われている。
 数百の獣が同時に叫んだかのような声が上がった。
 充血した龍眼が銀狼を睨んだ瞬間、家さえ浮かべるF4レベルの竜巻に包まれて数十メートル上空に吸い上げられた。
     
     


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