財部剣人の館「マーメイド クロニクルズ 第三部」配信中!「第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中「第二部 完結」

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−7 ナオミの復活(再編集版)

2017-02-28 00:00:04 | 私が作家・芸術家・芸人
 めちゃくちゃに走ったのかと思われたが、いつの間にか五芒星形の傷跡が残っている。追われた振りをして、マンモス魔神を星の中央におびき寄せる。
 ハッ! 
 飛び上がると、ヒビが入りかけた氷に乗ったマンモス魔神の上に飛び乗る。ミシミシと氷が裂けて、重みでマンモス魔神が雄叫びを上げながら沈んでいく。多勢に無勢の時の鉄則2「相手の欠点を利用せよ」。
 だが、ナオミも勢いあまってマンモス魔神と共に水中に沈んでいく。
 メギリヌが、再びオーケストラの指揮者のように手を動かして強大な氷柱を引き寄せると、ナオミが沈んだ部分にたたき込んだ。続いて、別の氷柱をたたきこんだ氷柱に組み合わせると強大な十字架が完成した。それはまるでナオミの墓碑銘のように、たたずんでいた。
「口ほどにもない。まるで歯ごたえがないではないか」メギリヌがうそぶく。「氷の下で一生を終えるがよいわ」

 ふとマクミラが気づくと、足下のキル、カル、ルルがうなりをあげている。
 そうか、闘いたいんだね。いい、ジュニベロスに変身してから行くんだよ。考えが通じたように、まるで冥界の父ケルベロスに届けとばかりに一声大きく吠えると、それまで三匹だった子犬たちが三首の魔犬ジュニベロスに変身した。極寒のせいなのか、いつもと違ってシベリアンハスキーのような見事な体毛を備えている。
 やるじゃないか。油断するんじゃないよ。マクミラがつぶやく間もなく、父親を傷つけたサディストめがけてジュニベロスが飛び出した。
 だが、立ちはだかったのはジャガー魔神だった。
 このまま行けば、真っ正面からぶつかりあうと思われた時。ジュニベロスが、口から炎の息を吐き出した。ジャガー魔神が、ひるんだ隙に喉元に食らいつく。あっけなくジャガーの首がくびれて、原型をとどめなくなる。
 ジュニベロスが、そのままメギリヌに向かっていこうとした時だった。
 厚いはずの氷をやぶって、ナオミが飛び出してきた。
 油断していたまさかり魔神は、真下からの攻撃を受けてまっぷたつに割れた。それぞれを左右のアイス・アックスに引っかけると、数回転させて勢いをつけるとロケット魔神に向かって投げつける。ナオミのアイス・アックスボンバーを受けて、ロケット魔神も粉々に崩れしてしまう。
 多勢に無勢の時の鉄則3「一対一の状況に持って行け」。
「お待たせ。私はマーメイドだから、どんなに冷たくても水に入ると元気を取り戻す。水中に入ったおかげで、真下からの攻撃も可能になった。礼を言うわ」
「フフ、小手試しは終わり。お前の戦闘能力など、取るに足らぬと分かったわ。マニフェスト・ディザスターの真の力を見せてくれる」
 メギリヌの16枚の羽が羽ばたきを開始した。
 それまでとは比較にならないほどの冷気が、回りに吹き荒れる。しだいに、それは雪嵐となり視界ゼロになる。同時に、いままでせいぜい厚さ数十センチだった氷が一気に数メートルにもなった。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−6 ペンタグラム(再編集版)

2017-02-27 00:00:03 | 私が作家・芸術家・芸人
 メギリヌが、オーケストラを指揮するように両手を高くかかげると、次に人差し指を左右に向けた。同時に、美しい16枚の羽が左右に広がった。
 マニフェスト・ディザスター!
 メギリヌが叫ぶと、氷がバキバキと音を立てて盛り上がり形を取っていく。
 気がつけば、ナオミは数体の氷魔神に囲まれていた。ざっと氷魔神たちの姿を確認すると、7体。
 フッ、アンラッキー・セブンか? いや、前回は7体のゾンビー・ソルジャーたちに勝利を収めているから、またラッキーセブンか。

 一匹目の魔神は、達磨のようにまん丸。
 二匹目の魔神は、ダイスのようにまっ四角。
 三匹目の魔神は、イカのようにとがった姿。
 四匹目の魔神は、ジャガーのように精悍な姿。
 五匹目の魔神は、まさかりそのもの。
 六匹目の魔神は、マンモスのような牙を持っていた。
 最後の魔神は、ロケット砲のような姿。

 その時、闘いをながめていたケネスが声をかけた。「ナオミ、アウトナンバード戦略を思い出せ!」
 日本語では、圧倒的に相手の数が多いときを何と言うんだっけ? そうだ、多勢に無勢だ。そんな戦い方も、私は学んでる。

 いきなり達磨魔神が転がってきた。かわしざまにケリを入れるが、攻撃力は低いわりに、防御力は強い。けった足がすべっただけで、ダメージは与えられない。次に、ダイス魔神がゆっくりせまってきた。かわしたつもりが、突然、長い両腕が飛び出してナオミを抱きかかえた。
 しまった、と思った瞬間、イカ魔神がとがった頭を向けて飛び込んできた。ギリギリまで待ってナオミが上方にジャンプすると、イカがダイスに突き刺ささる。氷魔神同士が相打ちになって、かき氷になった。
 多勢に無勢の時の鉄則1「同士討ちを誘う」。
 だが、直前まで抱え込まれていたため、襲いかかってきたジャガー魔神の爪をよけきれない。真珠の鎧の全面に、深々と爪痕が残る。さらに、まさかり魔神が猛スピードで飛んでくる。
 あやうくかわすが、もう少しで首を飛ばされるところ。
 ナオミがバランスを崩したところに、ドスドスと音を立ててマンモス魔神が走り込んでくる。スピードこそないが、2本の鋭い牙に貫かれたらどうなるかわからない。
 殺気を感じて、振り返るとロケット砲魔神が照準を合わせていた。
 ビビッてる場合じゃない。ナオミは、気合いを入れると巨大ピッケルをイメージした。大気中の水分を集めたアイス・アックスが、両腕に現れた。足下の氷を傷つけながら、ひっかくように走り出す。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−5 最初の部屋(再編集版)

2017-02-26 00:00:42 | 私が作家・芸術家・芸人
「俺の身体の奥底から、声が聞こえるんだ。ナオミ、『いたぶるもの』をなめてかかるのではない」。一瞬、なぜかシンガパウムのオーラを感じてナオミは何も言えなくなった。
「さあ、氷天使が待ちくたびれているぜ。最初のドアを開けてもらおう」

 部屋に入ってから、気づくと全員が空中に浮かんでいた。
 目の前に広がるのは、不思議な風景だった。
 ふつう水は高きところから、低きに流れる。
 だが、ここでは渦巻く水は低きから高きに流れるかと思えば、途中で横に流れを変えたりした。水は、あるところでは灰銀色の輝きを見せるかとおもえば、別のところでは青いしぶきをあげていた。
 ナオミとケネス、メギリヌが水面に下りたが沈まない。
 部屋の中は、信じられないほどの広さを持っていた。
 ナオミは、初めての精神世界に緊張していたが、あちこちの十数メートルも幅のある水流を見ている内、落ちついて来た。
 後ろから、ケネスの声が聞こえた。「いいか。最初は、お前一人で闘うんだ。くやしいが、どうも俺になんとかなりそうな相手じゃない。それに、内なる声が聞こえるんだ。時が来る。必ず、お前が俺の助けを必要とする時が来ると」
「わかった。ケネス、見ててね」
「マーメイド姿のお前の闘いを初めて見るんだ。目に焼き付けておくさ」

 メギリヌが言った。「水が渦巻く部屋と安心しているようだが、アポロノミカンの予言を覚えておるか? 『すべてを燃やし尽くす蒼き炎が、すべてを覆い尽くす氷に変わり』とあったではないか。人間界から精神世界で移動する時に、すべてを燃やし尽くす蒼き炎は見せてもらった。次の予言をかなえるとするか」
 メギリヌが、ゆっくりと身体の前で両手を交差させた。
 次の瞬間、手にしたのか切っ先鋭い黄金職のステッキを足下に突き刺した。冷気が一気に轟音を立てて吹き出すと、半径百メートルの水が凍り付いた。
 続いて、渦巻いていた水さえ凍り付いて巨大な数本の氷柱となる。
「さあ、これでも落ち着いていられるかい、マーメイド?」
「私の名は、ナオミ!」言うが早いか、駆け出す。真珠の鎧が七色の輝きを見せている。途中から、スピードがのろくなる。足下の氷がナオミを踏み出す度に一瞬、張り付いてきたからだった。足を踏み出す度に、最初は足裏が、次に足首まで、だんだんと膝下まで凍り付く。
 メギリヌは、腕組みしてナオミが近づくのを余裕で待っている。
 なんとかメギリヌにたどりついたナオミが、マーメイド・ソードを取り出すと下方から切り上げる。狙いは、メギリヌ自身ではなく足下の氷だった。氷が割れると、一筋の水が噴き出してメギリヌの顔に傷をつける。
「完全には凍りついていなかったみたいね」
「かすり傷をつけて、よろこんでいるとはおめでたい」
 スッと、メギリヌの傷が新たな氷におおわれて消えた。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−4 メギリヌ対ナオミと・・・・・・(再編集版)

2017-02-25 01:56:27 | 私が作家・芸術家・芸人
 皆の視線が、アストロラーベに集まった。
 アストロラーベがつぶやいた。リギスめ、知っておったか・・・・・・
 その時、ずっと黙っていたミスティラが、口を開いた。
「かまいませぬ。もとより裁かれて刑を受ける運命だった我が命。それにマクミラ様がお兄様たちの助太刀を受けている以上、魔女たちなどに負ける道理がございません」
「うるわしき姉妹愛よな」ドルガが言う。「だが、後悔することになっても知らぬぞ。よかろう、第一の闘いにはメギリヌを送ろう。そちらからはマーメイドの小娘が出るのじゃな?」
 アストロラーベが確認する。「ナオミよ。どうじゃ、闘うか?」
「水が渦巻く部屋と聞いて、引っ込めるはずがないでしょ。この真珠で出来た戦闘服を着て、水中の闘いで私が誰かに遅れを取るとでも?」
「その意気やよし」
 部屋に入ろうとするナオミに、マクミラが声をかけた。
「ちょっと待って」
「何?」
「人のことは言えないけど、あなたはまだ目覚めきってない」
「いまさら・・・・・・」
「たしかに、いまさらね。だけど、わたしは少なくとも冥界の記憶だけは完全に持っている。海神界出身のあなたは、精神世界での闘いは苦手なはず」
「だから何なの?」
「闘いの秘訣を教えておくわ」
「ふ〜ん、今日はやけに親切ね。いったい何?」
「何があってもおそれないこと。必ず勝つという強い意志を持つこと」
「それだけ?(Just like that?)」ナオミは、拍子抜けした。
「それだけよ(Just like that.)」マクミラが、あっさり念を押した。
「ちょっと待った!」皆が顔を向けると、声の主はケネスだった。「俺も参加させてもらう。アストロラーベとやら、お前は言ったな。もしも我らと前世よりのなんらかの縁あるならば、共に精神世界へ赴きアポロノミカンに予言された闘いに加わらんことを願う。もしもその呪文が正しいのなら、俺にも闘いに参加する権利と義務があるはずだ」
「お主に権利と義務があると申すのか?」
「20年前ネプチュヌスからナオミを預かった時、あいつは俺が死に場所を探しているといいやがった。ナオミと出会って、俺はようやく守るものができた。ここでナオミを守ることができなければ、何のために俺はこれまで生きてきた。もしもナオミを守って死ねるなら、ここは最高の死に場所になるはずだ」
「ケネス、ダメだよ。ここは人間がどうこうできる場所じゃないんだから」


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−3 軍師アストロラーベの策略(再編集版)

2017-02-24 00:00:45 | 私が作家・芸術家・芸人
「そうだ、アポロノミカン! 私たちの最後の希望よ」
 ドルガが、怒りをあらわにする「最後の希望か。どこまでおろかなのだ。人間どもを救うことが出来るなど、どこをどう見れば、あやつらが生き残る材料があるというのだ? 天は汚れ、海は穢れ、地中は汚染され、宇宙空間にさえ争いを持ち込もうとする者どもに。自然界の動植物の怨嗟の声が、聞こえぬか? 自らは数限りない獣と同胞さえ殺しておきながら、自分たちに対して危害を加えることはいっさい許さぬ。そんな都合のよい理屈が通ると思っているのか? 最後の希望だと? この闘いで、お主たちの希望など根こそぎ奪ってくれるわ」
「悪魔姫、それでこそお主らしい」アストロラーベが、誘いをかける。「だが、誇り高いお主のことだ。せっかく用意した決戦の舞台ミラージュで最高のカーニヴァルを始めようではないか」
「望むところじゃが、カーニヴァルとはどういうことじゃ?」

 人間界に来て以来、調子の出ていなかったアストロラーベが、軍師としての真骨頂をだんだん発揮しているように見えた。だが、実は本人は必死だった。アストロラーベは話し出した。
「ここの回廊には四つのドアが用意されている。それぞれは水が渦巻く部屋、虹が流れる部屋、土煙があふれる部屋、嵐が吹き荒れる部屋へつながっておる。我らが陣営とそちらの陣営からの代表戦と行こうではないか。こちらからは、水が渦巻く部屋には、ナオミを送らせてもらおう。虹が流れる部屋には、スカルラーベ将軍を送らせてもらう。土煙があふれる部屋には、このアストロラーベ自身を送らせてもらう。嵐が吹きあれる部屋にはダニエルを送らせてもらう。お主たちも、代表を送り込むがよい。マクミラを代表にしないには理由がある。それぞれの部屋でお主たちの代表が勝利したならば、望むものは何でも貢ぎ物として捧げよう。マクミラも、その貢ぎ物の一つだ。その代わりに、もしもお主たちが敗者となったならば、我らが軍門に下るというのはどうだ? 代表者以外の者も、立会人として各部屋に入れるだけでなく、一度だけなら闘いに助太刀として入れることとする。だから、マクミラも助太刀には入る」
 ドルガが、リギスに尋ねる。「どうじゃ、お主の意見は?」
「いったん決闘を持ちかけられては、たとえ堕天使であっても我々神の血筋を引くものには拒むことは、かなわぬことでありんす。我らの実力なら、精神世界の闘いで後れを取るとは考えらないでありんす。それに、相手が四つの勝負に我らが望むものを捧げるというのなら、願ってもないでありんす」
「リギスよ。それで、我らは何を望む?」
「はい、第一の闘いに勝利したならば、アポロノミカンを所望するでありんす。次の闘いに、勝利したならば、ミスティラを所望するでありんす。第三の闘いに勝利したならば、マクミラの命を所望するでありんす。最後の闘いに勝利したならば、我らに自由を所望するというのはいかがでありんすか?」
「第一と第三、最後の闘いの勝利の暁の貢ぎ物は、それでよいであろう。だが、第二の闘いの勝利の見返りがミスティラとはどういう意味じゃ? 役立たずの妹などよりも、アストロラーベを我が陣営に取り込んではどうなのじゃ?」
「その答えは、冥界の貴公子の顔をご覧になるでありんす」


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−2 人類は善か、悪か?(再編集版)

2017-02-23 00:00:05 | 私が作家・芸術家・芸人
「たしかに。マクミラとの闘いも、これが最後となろう。誤解されたまま死なれては目覚めが悪い。お主たちは勝手に思い込んでいるようだが、マクミラへ復讐などは、序の口。我らが次なる目的は、闘いの巨大なエネルギーを起こして魔人スネール様を目覚めさせること。そして、我らの究極の目的は、スネール様と共に新たなるルールを作って人間界を支配することじゃ。太古の蛇と呼ばれたスネール様は、すでにマクミラとの闘いの後、長い時を人間界で過ごして復活の準備をすませておいでた。この惑星から人間共を取り除き、我ら神と堕天使の血を引くものたちが支配する楽園を作るのじゃ。よいか、我らの考えでは人類こそ悪。それは性根が悪いといった次元ではなく、地球という生命体、世界というシステム自体にとって、人間こそ最大の脅威と言ってもよい。だからこそ、人類絶滅を目指す我らこそが善なのじゃ!」
 マクミラが答える。「今頃、人類が悪だとかに気づいたか。だからと言って、お主たちが善の存在になれるわけではない。神界にも人間界にも居場所のないお主たちなどまた捕らえて、今度こそ抜け出せない地獄に閉じ込めてくれる」
「貴様と再び闘える喜びに身が震えるわ。だが、じゃまな人間共は、ライムの力で石の彫刻にするか、メギリヌの力で氷の彫刻にでもしてやろうと考えていたが、人間界から精神世界に闘いのために移動するとは、冥界中に畏れられた神官がやさしくなったものだな」
「勘違いするな。肉を持つ身で出せる能力など、たかが知れている。互いに本来の力を出し合ってこそ、お主の恨みもはらせるのではないのか?」マクミラが声をかける。「しかし、魔女たちよ、最後の闘いからどれだけの時が経ったことか。だが、お前たちの目的は、わたしへの恨みを晴らすことであろう? マッドのなれの果ての道化の口車に乗ってまで、ずいぶんと大がかりなことよ」
 うらみをはらすという言葉を聞いて、トミーの足下にいたキル、カル、ルルの目が熱くメギリヌに注がれる。三匹は、タンタロス空間を脱出するときに、父ケルベロスの第三の首の右目をステッキでつぶした敵についに出会ったことで興奮していた。
 ナオミが、怒りだす。「ちょっと待って。人類を十羽ひとからげにすることこそ、間違いだわ。人類一人一人の中には善の心は存在するし、悪の方向に向かう者に対して善の方向に向かう者も多いわ。一人一人の善を促進し、全体を善に向かわせることこそ、私たちがすべきことじゃない!」
「おもしろいことを言うでありんす」リギスが、議論に加わる。「では、いかにして死にかけた、このガイアが合体した星を救うというのでありんすか?」
 ナオミは沈黙した。
 マクミラが助け舟を出す。「アポロノミカンよ」


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第10章−1 魔女たちの目的(再編集版)

2017-02-22 00:00:41 | 私が作家・芸術家・芸人
「ねえ、クリストフのことを忘れてるわ。彼は、本当にクリストフなの?」
 皆がダニエルの方を見ると、墮天使は苦しそうなうめき声を上げていた。
「ウッ、ウッ、ウッ、オレはいったい誰なんだ、クリストフ? そんな名の時も、あったような気がする」
「覚えてないの? チャック、シャナハン、それに孔明のことも? ケイティはすぐにあなたがわかったわよ」
「ケイティ……。俺を慕っていたケイティ。それじゃ君は……ナ、ナオミ?」
「じゃあ、本物! 生きてたのね。でも、あのお調子者でプレーボーイだったクリストフの雰囲気が変わっちゃった。まるで……」
「まるで堕天使のようにか」マクミラが答える。
「なぜ、クリストフが堕天使になってるの?」
 アストロラーベが答える。「お前が人間として知っているクリストフは元々が、天使長ペルセリアスだったのだ。人間界に来て、マクミラの血の契りの儀式によって堕天使ダニエルに生まれ変わった。今は、精神世界にきたばかりで、3つの人格がまざりあって混乱しているのだろう。カンザスの闘いでは、死にかけていたのが、命をなんとかとりとめたのだから恨む筋合いではあるまい」
「いいの。生きていてくれさえすれば、どんなに変わっていても」一瞬、瞳が潤んだが、マーメイドはやたらに泣くもんじゃないという祖母の教えを思い出した。そのため、ナオミは泣き笑いの表情になった。
「何がおかしい?」マクミラが、尋ねる。
「私は愛する相手にはめぐまれない。だけど、どこに行っても導くものと助けてくれるものには不自由しない。そうは知ってたけど、まさかマクミラ、あなたにまで助けてもらうとは」
「勘違いしないで。クリストフを助けたのは、彼を味方にすればあなたの側の勢力をそいだ上に、わたしの側の戦力を強化できる。一石二鳥だったからだわ。それに今回は、手助けするのはあなたでわたしじゃない」
「それを言うなら、トラブルに引き寄せられるのが私の運命。礼にはおよばない。そして、あなたがクリストフを救ったように、私も夏海を救ってみせる」
 ドルガが言う。「夏海とかいう娘は、我とすでに一体化しておる。救われるかどうかという話なら、気高い我と合体したおかげで人間としてはもう生きずにすむのだ。これ以上の救いはあるまい」
「なんてことを! マクミラへの怨みだけでそんなことを」
 参謀役のリギスが議論に加わる。「ドルガ様、我らが目的はマクミラへの恨みをはらすこと以上だったはず?」


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マーメイド クロニクルズ 第二部再編集版 前半・中盤(序章〜第9章)バックナンバー

2017-02-21 03:16:56 | 私が作家・芸術家・芸人
「第一部 神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ

「第二部 序章」

「第二部 第1章−1 ビックアップルの都市伝説」
「第二部 第1章−2 深夜のドライブ」
「第二部 第1章−3 子ども扱い」
「第二部 第1章−4 堕天使ダニエル」
「第二部 第1章−5 マクミラの仲間たち」
「第二部 第1章−6 ケネスからの電話」
「第二部 第1章−7 襲撃の目的」
「第二部 第1章−8 MIA」
「第二部 第1章−9 オン・ザ・ジョブ・トレーニング」

「第二部 第2章−1 神々の議論、再び!」
「第二部 第2章−2 四人の魔女たち」
「第二部 第2章−3 プル−トゥの提案」
「第二部 第2章−4 タンタロス・リデンプション」
「第二部 第2章−5 さらばタンタロス」
「第二部 第2章−6 アストロラーベの回想」
「第二部 第2章−7 裁かれるミスティラ」
「第二部 第2章−8 愛とは何か?」

「第二部 第3章−1 スカルラーベの回想」
「第二部 第3章−2 ローラの告白」
「第二部 第3章−3 閻魔帳」
「第二部 第3章−4 異母兄弟姉妹」
「第二部 第3章−5 ルールは変わる」
「第二部 第3章−6 トラブル・シューター」
「第二部 第3章−7 天界の議論」
「第二部 第3章−8 魔神スネール」
「第二部 第3章−9 金色の鷲」

「第二部 第4章−1 ミシガン山中」
「第二部 第4章−2 ポシー・コミタータス」
「第二部 第4章−3 不条理という条理」
「第二部 第4章−4 引き抜き」
「第二部 第4章−5 血の契りの儀式」
「第二部 第4章−6 神導書アポロノミカン」
「第二部 第4章−7 走れマクミラ」
「第二部 第4章−8 堕天使ダニエル生誕」
「第二部 第4章−9 四人の魔女、人間界へ」

「第二部 第5章−1 ナオミの憂鬱」
「第二部 第5章−2 全米ディベート選手権」
「第二部 第5章−3 トーミ」
「第二部 第5章−4 アイ・ディド・ナッシング」
「第二部 第5章−5 保守派とリベラル派の前提条件」
「第二部 第5章−6 保守派の言い分」
「第二部 第5章−7 データのマジック」
「第二部 第5章−8 何が善と悪を決めるのか」
「第二部 第5章−9 ユートピアとエデンの園」

「第二部 第6章−1 魔女軍団、ゾンビ−ランド襲来!」
「第二部 第6章−2 ミリタリー・アーティフィシャル・インテリジェンス(MAI)」
「第二部 第6章−3 リギスの唄」
「第二部 第6章−4 トリックスターのさかさまジョージ」
「第二部 第6章−5 マクミラ不眠不休で学習する」
「第二部 第6章−6 ジェフの語るパフォーマンス研究」
「第二部 第6章−7 支配する側とされる側」
「第二部 第6章−8 プルートゥ、再降臨」
「第二部 第6章−9 アストロラーベ、スカルラーベ、ミスティラ」
「第二部 第6章ー10 さかさまジョージからのファックス」

「第二部 第7章ー1 イヤー・オブ・ブリザード」
「第二部 第7章ー2 3年目のシーズン」
「第二部 第7章ー3 決勝ラウンド」
「第二部 第7章ー4 再会」
「第二部 第7章ー5 もうひとつの再会」
「第二部 第7章ー6 夏海と魔神スネール」
「第二部 第7章ー7 夏海の願い」
「第二部 第7章ー8 夏海とケネス」
「第二部 第7章ー9 男と女の勘違い」

「第二部 第8章ー1 魔女たちの二十四時」
「第二部 第8章ー2 レッスン会場の魔女たち」
「第二部 第8章ー3 ベリーダンスの歴史」
「第二部 第8章ー4 トミー、託児所を抜け出す」
「第二部 第8章ー5 ドルガとトミー」
「第二部 第8章ー6 キャストたち」
「第二部 第8章ー7 絡み合う運命」
「第二部 第8章ー8 格差社会−−上位1%とその他99%」
「第二部 第8章ー9 政治とは何か?」
「第二部 第8章ー10 民主主義という悲劇」

「第二部 第9章ー1 パフォーマンス開演迫る」
「第二部 第9章ー2 パフォーマンス・フェスティバル開幕!」
「第二部 第9章ー3 太陽神と月の女神登場!」
「第二部 第9章ー4 奇妙な剣舞」
「第二部 第9章ー5 何かが変だ?」
「第二部 第9章ー6 回り舞台」
「第二部 第9章ー7 魔女たちの正体」
「第二部 第9章ー8 マクミラたちの作戦」
「第二部 第9章ー9 健忘症の堕天使」


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−9 健忘症の堕天使(再編集版)

2017-02-21 00:02:03 | 私が作家・芸術家・芸人
 精神力の弱いものは弱いなりに、精神力の強いものは強いなりに、精神世界では、すべてのものが自分のイメージする姿を取ることができる。
 精神世界の中央広場には、真紅のマントに身をつつんだマクミラがいた。マントの中には二本の真っ赤な鞭を隠し持っている。すぐ脇に、白銀のマントに身をつつむミスティラがいた。右には、漆黒のマントと軍服に身をつつんだアストロラーベがいた。貫き通せぬものはないと噂される半透明の槍を抱えている。左には、一振りで千の魔物の首をはねとばす大鎌を背中に背負ったスカルラーベが、はげ頭に筋骨隆々とした体躯をドクロでできた鎧につつんでいた。
 ナオミも、カンザスの闘い以来、海神界時代の真珠の戦闘服に身を包んでいる。
 ケネスは、上半身の服がはだけてメーライオンのタトゥーがむき出しになっているが、自分が変化したイメージを持っていないために人間の姿のママになっている。ジェフも、マクミラから血の洗練を受けていたせいで精神世界に来る資格を得たようだった。
 だが、場違いと思われる人間が二人人まざっていた。
 サソリの仮面をかぶったままで逆立ちしたさかさまジョージは、小脇にアポロノミカンを抱えていた。
「何だい、みんな、その目つきは? こんないかれた世界はボクにこそふさわしい。自分たちがふさわしくて、他人がふさわしくないなんて、いったい誰がいつどこで決めたのさ?」
 ケケケケ、と高笑いを上げる。
 あろうことか、会場に来ていた夏海の息子トミーまで来ており、何が起こったのか理解できずにがたがた震えている。ドルガが、母親の愛情あふれる夏海の声で語りかける。
「坊や、これは夢の中の出来事なのよ。すべて終われば、あなたはベッドの中で目覚めているわ」
 トミーは、気丈にうなずいた。ドルガの精神にも、夏海の肉体が影響をおよぼしているのかもしれなかった。
 マクミラが、そっと目配せするとキル、カル、ルルがトミーのそばで慰めるようにクンクンと鳴きだした。ついに、これで役者が揃った。
 今度はドルガが、迫力にあふれた地声でアストロラーベに話しかける。
「冥界の貴公子、久し振りじゃ。さすが古今東西の魔術に通じているだけのことはある。だが、わざわざ人間界までやってくるとはなんとも妹思いなことよ」
「悪魔姫、お主こそ大丈夫なのか? いつもなら見目麗しい姿が、その様子では人間界に来てからだいぶ長く人間に取り憑かずにいたらしい。羽や爪の先が、だいぶ崩れているぞ。お主は、これまで闘った中で最高の敵だった。よもや私をがっかりさせるようなことはあるまいな?」
「心配無用。我らが実力はいささかも衰えてはおらぬ」
 状況がまったくわからずにいらだったナオミが、話に割り込む。
「ちょっと、私を仲間はずれにして。いったい何が起こっているの? 夏海がまるで全く別人になっちゃったのはどういうわけ」
「我が名はドルガ」
「いったい、何!?」
 マクミラが答える。「あなたは、海神界の完全な記憶を持っているわけじゃなかったわね。まずはご挨拶からね。お久しぶり。ちょっとは成長した?」
「大きなお世話よ! 挨拶なんてしてる場合じゃないわ」
 アストロラーベが言う。「ナオミよ。お前の姉アフロンディーヌのいいなずけだったアストロラーベだ。覚えているか?」
「そんな人がいたような気がするけど・・・・・・」
「とんだ挨拶だな。まあ、よかろう。わかりやすく説明する。冥界最高位の神官マクミラが、人間界に来て以来、冥界の結界がゆるんでしまい極寒地獄コキュートスから捕らえられた魔女四人が脱獄したのだ。そこにいるのが、『爆破するもの』で悪魔姫ドルガ、『いたぶるもの』で氷天使メギリヌ、『酔わすもの』で蛇姫ライム、『悩ますもの』で唄姫リギス。四人は、マクミラに復讐を誓っている。妹を救うために、兄である我々アストロラーベとスカルラーベ、妹のミスティラが冥主様によって送り込まれたのだ。お主と父上殿も、アポロノミカンによってさだめられた運命の一部。すでにゲームのルールを変えることが、最高神会議によって決定しているのだ」


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−8 マクミラたちの作戦(再編集版)

2017-02-20 00:00:48 | 私が作家・芸術家・芸人
 会場にいたすべての人間が、ストップモーションになったかのように動きを止めた。
 次の瞬間、ケネス、ナオミはグニャリとゆがんでいく時空の裂け目に、冥界所縁のものたちと一緒に吸い込まれていった。

     

 これこそがマクミラとダニエルが、何ヶ月もかけて練った作戦だった。アポロノミカンの予言を分析した結果、魔女たちがクリスマス・フェスティバルを狙って来ること、キャストの四人のベリーダンサーに取り憑くこと、それをふせぐことは不可能であることまでは予測がついた。
 作戦を進展させたのは、アストロラーベだった。
 今回のゲームに人間を巻きこむことは許されない、冥界、海神界、天界だけで片をつけるべき筋合いである、そして、それが魔女たちに対して勝機を最大限化すると主張した。もとよりマクミラとダニエル、アストロラーベに反対意見があるはずもなかった。
 しかし、アストロラーベが、冥界三大魔術の一つ時空変容ミラージュによって闘いの場を精神世界に移すと言ったときには、マクミラは強く反対した。
 この儀式は、冥界にも現在では使えるものがほとんどいなかった。巨大なエネルギーを無理矢理に止めるため、これまで数々の魔法使いの命を奪って来た危険な技であったからである。
 しかし、マクミラが押し切られたのには、二つの理由があった。
 ひとつには、アストロラーベの冷徹な戦力分析のせいだった。
 人間界に来て20年、マクミラがようやく取り戻した力だけで魔女と闘えば、赤子の手をひねるようにやられてしまう。仲間と共に、精神世界に移動して全員が本来の実力を出して初めてなんとか闘いになると予想された。
 第二に、マクミラがミシガン山中に立てた第3の建物ナイトメアランドでおこなってきた研究成果だった。アストロラーベが異次元空間同士とつなげても、666分間ならなんとか大きな危険は冒さずにすむという見通しがあったからだった。
 いったん入り込んでみると精神世界は、サルバドール・ダリの溶けた時計で有名な絵画以上の不条理さだった。
 地は溶けて流れ、天は渦巻き、海には噴火する山脈から流れ出る溶岩が絶え間なく流れ込んでいた。つい先ほどまで青かった背景は、瞬時にして黄色く変わったかと思えば、次の瞬間には真っ赤に変わった。しかし、アストロラーベの魔力によって、溶けた背景が形を取り始めると、中央には宇宙ロケットのような高い塔がそびえ立ち、中央のスペースには神々の銅像が彫り込まれた回廊が出現した。


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