財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−5 何かが変だ?(再編集版)

2021-02-01 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 舞台は、第三幕「波しぶきに輝く白色の海は、天かける最高神ユピテルの輝きの刻」に進んでいく。
 ダニエルが、再び歌い出す。

   おお、白い海の波しぶきを見るがよい
   最高神ユピテルの輝きの刻が来た
   愛こそ、この喜びのときにふさわしい
   愛こそ、この世でもっとも貴きもの
   だが、愛こそ、この世でもっとも不可思議なもの
   試みずには、知ることはけっしてできぬもの
   愛は、論理や倫理にはけっして当てはまらぬ
   愛は、喜怒哀楽のどれにも似て、どれとも非なる
   だが、すばらしきがゆえに破滅にみちびく
   愛は、すべてを奪うものが、奪うことでなにかを与える
   愛は、苦しめるものが、苦しめることで歓喜を与える
   愛は、この世でもっとも貴きもの
   だが、貴きがゆえにはかなくうつろいやすい。
   愛は、愛し合うものがいるときは誰もその価値を知らず
   失って初めて、どれほど大事であったかを知る

 次に、魔女たちと太陽の化身が最高神ユピテルに捧げる剣舞に進んだ。彼らの住む都が、海と太陽の恵みを受けて繁栄するための祈りの剣舞であった。「アナ・ウェル・レイリ」(“Ana Wel Leil”)が始まると、いきなリギスが、イシスウィングをコロナ役ダニエルの方に羽ばたかせる。扇状の翼には、切っ先鋭い十数枚のナイフが仕込んであり、とっさにかわす。そのままの位置にいたならば、身体が上下生き別れになるところである。だが、コロナはこの程度か、といわんばかりに微笑んでいる。
 ライムが、シミターを太陽神役のアストロラーベにいきなり振りかざす。本来イミテーションの湾曲した剣だが、触れればただではすまない切れ味である。だが、アストロラーベもさるもの、腰の剣を抜いて何食わぬ顔で受け止める。
 メギリヌが真鍮入りで3キロもあるアサヤを、スカルラーベの頭上にかざした。冥界の将軍だけあってスカルラーベも、腰の剣で難なく受け止めて、表情一つ変えない。

          

 ダニエルとアストロラーベ、スカルラーベの三人が、目配せをする。
 ここまでは折り込み済みと、楽しんでいる雰囲気さえただよわせている。
 ほとんどの観客は、何も知らずに迫力満点の演出だとよろこんでいる。
 観客の中で、何かがおかしいとナオミとケネスだけが気づいた。
「おい」小声でケネスが、話しかける。「今の雰囲気はただごとじゃない。殺気にあふれていたぞ」
「重さを感じさせないけど、剣もスティックも尋常じゃない感じ」
「お前も気づいたか。さすがは俺の娘だ。大部分の観客は何もわかっちゃない。もう少し様子を見るが、気を抜くな」
「わかったわ」


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