紫陽花の咲いていた大谷戸橋を過ぎてしばらくすると、いつもの所にシラサギがいた。
立ち止まってしばらく見ていると、なにかを見つけたらしく、頭を水の中に突っこんで捕らえたようである。
このシラサギは、体も大きく、コサギではなさそうで、ダイサギかチュウサギであるが、どちらであるのかよくわからない。
チュウサギはくびもあしも長いが、くちばしが短いとの説明があり、このシラサギはくちばしが長いので、この点でチュウサギとはいえないのかもしれない。
以前の記事でチュウサギとしたものもダイサギかもしれない。両者の違いをもっと調べる必要がありそうである。
今回遭遇したシラサギは、なぜか、わたしと同じ方向に移動し、計3箇所で見かけることになる。
始めの2箇所は環八通りの手前であるが、次は環八通り・中央線を越えたところである。
環八通りを越えてしばらく歩き、中央線のガード下をすぎるとすぐに置田橋があるが、ここを右折すると、薬罐(やかん)坂の上りとなる。
薬罐坂は「豊多摩郡誌」に次のように書かれている(石川悌二「江戸東京坂道辞典」)。
「薬罐坂 大字荻窪字本村に俗称薬罐坂と呼べる傾斜路あり。昔雨の夜毎に坂の中程に薬罐の転がり居れる奇怪事ありてこの名を得たるよし。雨の夜など今も時として薬罐の出づるなど云ふものあり」
少しうねりながら緩やかに上っている。
中央線にほぼ沿っているが、上の方で左に大きく曲がっており、そこから先は、ほぼ平坦で、上荻本町通りの商店街となっている。この通りは環八通りの四面道の交差点近くまで続いているようである。
石川の著書には、杉並区上荻二丁目の真言宗光明院の西方15番と16番の間あたりから南に善福寺川流域に下る坂とあり、15番と16番の間に上記の商店街があるので、ここが坂上と思われる。
同名の坂は、都内に他に三箇所あるようである。
①文京区小日向一丁目10番、生西寺の北わきの坂
②文京区目白台二丁目6番と三丁目18番の間を不忍通りから南に上る坂
③新宿区若葉一丁目のあたり(いまはない)
石川には、野狐のことを野かん(豸+干)といったので、それが薬罐の字に転じ、野狐が出没して人をたぶらかすようなもの寂しい坂が薬罐坂と呼ばれたという説が紹介されている。
善福寺川に戻り進むと、先ほどのシラサギにふたたび遭遇する。
しばらくながめてから、さらに歩くと、原寺分橋手前の湧水箇所に至るが、今回はかなり湧き出ており、前回よりも湧水量が多いように感じた。
(続く)
参考文献
吉野俊幸「ヤマケイポケットガイド⑦野鳥」(山と渓谷社)
横関英一「江戸の坂 東京の坂」(中公文庫)