goo blog サービス終了のお知らせ 

あお!ひー

叫べ!いななけ!そして泣け!雑多なことを書いてみる。

フランソワ・ポンポン展(名古屋市美術館)

2021-10-10 09:40:53 | アート系

名古屋市美術館で開催されている「フランソワ・ポンポン展」に行ってきました。

ちょうど所用があって名古屋に行っていたのでした。

時間もあるし、ポンポンの日本初となる回顧展ならばこれは見なくてはと!

正直、ポンポンは有名なシロクマ以外にはどんな作品があるか知りませんでした。

動物絵画となればいろんな作品が頭にすぐに浮かんできます。

若冲しかり、応挙しかり。

動物彫刻となると三沢 厚彦さんのアニマルズが思い浮かびます。

そんなこともあってポンポンのシロクマの他の動物たちがどんなふうなのか気になっていたのです。

入口を入るとすぐに大きなシロクマがでーんと待ち構えてました。

しかも背後に展覧会のロゴがあり、ここは撮影オッケーになっていてもちろん撮ってきました。


白、一色。しかも滑らかな面で最小限の起伏のみでの構成。エッセンスを抜き取りつつも柔らかく柔和に感じられる表情への落とし込みの非凡に見えない非凡さったら。

さて、後ろに撮影を待ってるひともいるのでサクッと撮って会場の中へ。

やはり、動物はたのしいなあ。

お子さんが静かに、でもとても楽しそうに回ってるのが印象的。

ちいさい子らに負けないよう、こちらも低い視線からも彫刻をじんわりと眺めます。



シロクマ
ポンポンで知ってる作品といえばやはりコレですよね。
何点もバリエーションとサイズの異なるものがあるのですがプロポーションの落とし込みがどれも素晴らしい。
掌と顔のサイズのバランスの妙、耳のデフォルメの仕方など実物と明らかに違うのだけれどエッセンスの抽出、再構成の上手さに唸るばかり。

ペリカン
顔を表現が最低限の削りこんだ線で構成されていて必要十分。
やりすぎないところで留めることでその存在を確固たるものとしている。

冠鶴
身体にくっつけてしまわれてほとんど見えなくなった片足の先っぽが鉤爪のように飛び出てる。
この全体のフォルムの気持ちよさ。

大黒豹
流線形なんですよね、フォルムが
そして、この表情がなんともおかしくてずっとにらめっこしてしまう。
尻尾はカーブしてギリギリ床面に接さないところでまた上昇していく。
どの角度から見ても飽きない。
今回、見た中でたぶん一番すきな作品。
顔の正面についたギョロリとした目と長い胴体が少しだけ機関車トーマスに近いなあと。

カラス
鳥だとどうしても羽のバサバサ感を出した彫刻が多いのだけれども、このカラスの表面はつるんとしている。
アタマのてっぺんからつま先まで眼を除いて面のみで作られている。
カラスの厄介者的な感じではなく、孤高の存在としての気高さを表現しているなあと。

そして出口近くにもうひとつ撮影オッケーなシロクマ。

こちらはかなり小さいサイズ。もちろん、何枚も角度を変えて撮りました。


あと、面白かったのは他の作家によるポンポンの彫刻。

髪型と髭のフォルムが面白く、彼の作品の可愛らしい印象にもつながっていました。

出口をでると、グッズコーナーがありました。

あっ、小さいシロクマくんが!

ということで連れて帰ってきました。大きさは鼻先から伸ばした後脚まで15センチくらい。

とここまででポンポンは終わりのはずでした。

ところが、一階にある美術館のショップへ行ってみたところ、とても悩ましい光景が!!

なんと、ポンポン展とはまた別にポンポン作品のフィギュアが販売されていました。

シロクマも大きさと色違いがあったり、他の動物たちも何種類もありました。

確か訪れたこの時1週間前の時点ではヒグマとカバが売切れになっていました。

ひときわ目を引いたボリューミーなものもありました。

今回の展示には出ていなかったウサギです。

前脚と後脚をいっぱいに伸ばした飛びポーズ。しかも長さが30センチくらいとでかい!

実は展示に出ていたイノシシが同じようなポーズで、でもよりシンプルな造形に落とし込んだウサギのほうがよいなあと。

店員さんにショーケースから出してもらい睨めっこすること10分。

連れて帰ることにしました。


いまはリビングのテーブルを眺めて楽しんでおります。ああ、これはほんと買ってよかった!

名古屋市美術館でのフランソワ・ポンポン展は11/14まで。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

桑久保 徹 A Calendar for Painters without Time Sense. 12/12(茅ヶ崎市美術館)

2020-12-20 21:00:00 | アート系
土曜日から茅ヶ崎市美術館でスタートした、桑久保 徹 A Calendar for Painters without Time Sense. 12/12 に行って来ました。

桑久保さん初となる公立美術館での個展、どんな構成になるのだろうと期待して会場へ。

今回はカレンダーシリーズなる作品群とのこと。

以下は茅ヶ崎市美術館のサイトに掲載の文章から。


桑久保が近年取り組んでいるのは、美術史に輝く巨匠をオマージュした「カレンダーシリーズ」。ムンク、ゴッホ、モディリアーニなど桑久保により選ばれた巨匠が12か月に当てはめられ、カレンダーの「月」に見立てられます。画面には巨匠たちの息遣いが漂い、鮮やかな色彩と描かれた様々なモティーフが溶け合うことで、時空を超えた共鳴が生まれます。


絵画を見ていれば見ている分、楽しめそうです。

期待しつつ、一階の展示室に足を踏み入れるとそこには6点の大型絵画が鎮座していました。

1月 パブロ・ピカソのスタジオ
2月 エドヴァルド・ムンクのスタジオ
3月 ヨハネス・フェルメールのスタジオ
4月  ジェイムズ・アンソールのスタジオ
5月  ポール・セザンヌのスタジオ
6月 ピエール・ボナールのスタジオ

まず、意外だったのはピカソのモノトーン。
ゲルニカが描かれているのを見つけて納得なのですが青の時代からなんとなくブルーだという想像でいたのです。
画面の中には数十点ものピカソ作品が散りばめられており画面は水平線を境にその上下に切り分けた構成になっています。この構成はカレンダーシリーズの作品の大半に共通しているのですがこの基本ともいうべき形から逸脱してくのが面白くなりました。

ムンクはこの冒頭のビジュアルのグリーンが印象的な一枚です。
ムンク作品に漂う密やかで暗がりを帯びたそれでいて神秘的なイメージを見事に昇華させています。見てて気持ちいいんですよね。

フェルメールはまあ、知名度も高いし知ってる作品も多いなあというところでしょうか。もとの作品の空気感や緻密さは出すのが難しいなあと。

ジェイムズ・アンソール、、、ええと、申し訳ないのですが全然知りませんでした。というか、過去に見てるかもしれないけれどこの名前でパッと浮かんでこないのですよ。

そういう作家の作品をこの並びにぶっ込んでくるチョイスはちょっとすごいなあと。

調べてみるとベルギーの画家で19世紀後半から20世紀前半にかけて活動していたとのこと。

わざわざアンソールを選んできたのだからどうしても描きたかったのでしょう。

画面にいくつも登場するドクロと全体のトーンが印象に残りました。

セザンヌはとてもわかりやすくシンプル。

上方にはサント・ヴィクトワール山が描かれており、画面下部に散りばめられた中には静物画のフルーツなども。

ボナールはもっと暗いトーンになるのかと思っていたら明るい色合いだったのが自分としては意外に感じたり。

さて、会場は地下へと続きます。

7月 ジョルジュ・スーラのスタジオ [スライドショー]
8月 フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホのスタジオ
9月 デイビット・ホックニーのスタジオ
10月 ルネ・マグリットのスタジオ
11月 アメデオ・クレメンテ・モディリアーニのスタジオ
12月 アンリ・マティスのスタジオ

まず、ゴッホ。
ピカソが青でなかったのはゴッホで青を描きたかったカラーなのかなと。
ブルーの空の豪胆な筆致と絵の具の生々しいテカりがたまりません。
そしてオレンジの夜の光と。

そして、まさかのデイビット・ホックニー。
ずるい。二重にずるい。
この12人でホックニーを入れてくるとは思いもよらず。アンソールは年代的に入るのはわかるのですが、そしたらホックニーですよ。
しかも、この絵だけほかと構成がまるでことなります。
基調となる水平線がないどころか、風景を組み立てる構成が入れ子のようで、あっ、これは横尾忠則さんに近いなあと。え、ここでまさかの西村画廊繋がり!
この構成だととにかく視線移動が楽しいです。

スーラの作品はスライドショーでモニター越しに拝むしかありません。
海外の個人コレクターの所蔵とのことでまあこれは仕方ないノかな。
いつか実物を見たいなと思わせる作品。
こちらも構成がちょっと面白く、うまく画面を設計して組み立てたなあという印象。

マグリット、不穏なトーン薄曇りな感じが「らしい」なと。

モディリアーニはちょっと面白く異色。
ほかの作品は画面の中のトーンは統一感があるのだけれどもさにあらず。
画中の絵画作品よりもひときわ目立つのが彫刻作品の描写。
ここだけ写実的でその違和感というか、意図的に浮かせた感じが独特なリズムを刻む。

マティスは色合いが好きかな。印象は残っているのだけれども画面構成はすっかり忘れてしまっている。やはり、こういう感想はすぐに書かねばですね。


そして、地下にはもうひとつの展示室が。

こちらはもうひとつのカレンダーシリーズが12点。

木炭や水彩で描かれた作品プラスLPレコード。ちゃんと作曲家に依頼して作成した音源のよう。

さて、ここでもまた楽しいイレギュラー。

デイヴィッド・ホックニーだけ、メディアが違う。
こういうオマージュはじんと来る。
ポラロイドを連続させて作る画面。ホックニーがやってた手法をここに持ってくるとは。
しかも、ホックニーに宛てたと思われる手紙。見えるのは宛名の書かれた封筒のみ。
この中の手紙を読みたいなと思いました。

展示室の中央にプレーヤーがあってこのLPと思しき音源が流れていました。

なかなかに充実の内容でした。

2021年2月7日(日)まで。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ディック・ブルーナ ポスター展 ブラック・ベアは本が大好き(ノエビア銀座ギャラリー)

2017-11-16 07:40:10 | アート系

「ディック・ブルーナ ポスター展 ブラック・ベアは本が大好き」に行ってきました。

場所はノエビア銀座ギャラリー。

実は初めて訪れました。

というのも妻がこの情報を探して是非見たいとのことで知りました。

わたしもブルーナさんの作品は大好き。

ノエビアの本社ビルの一階のスペース。

こじんまりとしてて警備員と思しき方が1人いらっしゃいました。

展示されてたのはいずれもブラック・ベアのポスター。

大きなサイズのが9点。このサイズの長辺の半分のサイズの小さいのが6点。

トータルで15点。

会場内では写真撮影不可なのですが、警備員の方の話では外から撮る分には問題ないとのこと。

というわけでこちらが外観。



なんとなく雰囲気が伝わりますかね?

今回見てて改めて発見したこと。

ブラック・ベアって身体のアウトラインが実に多彩だなあと。

ハサミで切ったかのようなライン(冒頭のDMの画像)があるかと思うと、かたやかなり複雑なビリビリとしたのもあり。

さかざきちはるさんの描くSuicaペンギンの身体の線もビリビリとしてるのですがこちらは柔らかなモコモコした感じ。

それとはまるで対局のエッヂが立っててランダムなフォルム。

もうこういうことに気付いてしまうと見とれちゃうのですよ。

さらに作品によってこの線の感じが大人しかったり激しかったり。よくよく見てみるとその差異がわかります。

特に印象に残ったのは雪の中で本を読むブラック・ベア。

雪のフォルムが現実のそれと違ってて、黒い身体の上に重なっているのがなんとも虚構なんだけど独特の風情を感じます。

もし銀座に来られたら足を運んでみてください。

2018年1月5日まで。
午前10時〜午後6時OPEN
(土・日・祝日は午後5時まで)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

奈良美智「for better or worse」(豊田市美術館)

2017-07-22 20:39:18 | アート系

奈良美智「for better or worse」に行ってきました。

豊田市美術館は今回が初めて。

奈良さんは愛知県立芸術大学に通っていた縁もあって名古屋での展示というのはしっくりきました。

巡回なしなので今回絶対に行かねばと会期始まって早々に行ってきたのです。

最近はブログを更新する機会も減ってしまって上手く書けてるかどうか怪しいところですが、これは書きたい書かねばという衝動でキーを叩いております。

毎度ですが気になったところのみ独断で書いてみようと思います。


まず、会場に足を踏み入れると音楽が流れてる。

左手に奈良さんの部屋に飾られているんであろうお気に入りの書籍とフィギュアなどのグッズ、間には奈良さん自作の陶器も。

右手には巨大なパネル、、、ではなくおびただしい数のレコードジャケット。なんと300枚以上もある。

奈良さんの感性に影響を与えてきたであろう環境に踏み込んで圧倒される。

点数が多くて全て追いきれない。知ってるのもあるけれど知らないもののほうが多くて頭がついていけなくなる。でも不思議と流れてる音楽が心を静かな気持ちに落ち着けてくれて、心の熱は一定の温度でどくどくと脈うっている。

さあ、準備万端だ。

部屋の奥に至ってようやく作品が現れた。2003年のドローイング小品11枚組。そして、もう一点、1987年の作品「Untitled (after overpainting)」。

ちょうど30年前。奈良さんが愛知を離れる年に描かれた作品。

今の作風からは何段階か違ってて一見すると別の作家みたいに見えてしまうかもしれない。

でも丁寧に順を追って見ていくとだんだんと変化して現在へ至るのがよくわかる。

さてもとに戻って次の部屋へ。

こちらには4点。

1988年〜1990年の作品だからかなり初期のものだ。


「花をあげよう」

人魚かつ天使がおんなのこに花を差し出してる。おんなのこはナイフをむける。人魚かつ天使は引きつった表情。

見ててすごくしんどくなる。色や絵のトーンがまるで深刻ではないからなおのこと辛い。

だからしっかりと心に焼き付いてたり。


「Walk on 1」

図版だけで実物を見たかった作品。

1993年。一番馴染みのある作風への萌芽。

植物の葉っぱ?つる?ラッパみたいなフォルムを傘みたくして持ってる。体型と目のフォルムが同じ部屋の他の作品とまるで違ってる。


そして、次の部屋へ。

いたー!!!



「Sleepless Night (Sitting)」

一番会いたかった絵。

シンプルの到達点。

でも腰掛けてる椅子はちゃんと描かれてたり。

黒の背景のバランスもすごく好き。

しゃがんで低い位置でじっくりと味わってきました。



「The Girl with the Knife in Her Hand」

この表情に釘付け。悪気のない素の子供の感じ。

背景の不安定な塗りの紫の不穏。

あと見上げたのを上からっていう構図は少ないかなあと。

この部屋には東京国立近代美術館所属の「Harmless Kitty」も。

5年前の個展「きみやぼくにちょっとにている」で登場したラグが展示室の中央にあって座ってゆっくり眺めてきました。

そして、また次の部屋へ。


うわー!

壁が施工途中みたいな状態。この部屋の中のある部分はタイトルと制作年が奈良さんの手書きの書きなぐり。

いいなあ、もうこういうの好きだわ。

リストの番号25〜71までと結構なボリューム。

大きなサイズのドローイングが7点あってこれはどれも見応えあり。

5年前の横浜美術館で見たのが多かったけど、2点は初めて見るものでどちらもよかったです。

鉛筆のみの描きこみだけども線が多くかなり込み入った描写。

奈良さんて少ない線の印象があるのだけどもこういうドローイングの生っぽい描写も激しくてよいです。ただただ目で追いかける楽しさよ。


「Do Not Disturb!」

わー!このポスターは部屋に飾ってるので原画を見られて感無量!

↓こちらが我が家の壁のポスターです。


わんこが勉強してるのがかわいい。

今はなき代々木八幡のラムフロムで買ったもの。一番最初に入手した奈良さんのポスターなのです。


「Daydreamer」

部屋の中央にもうひとつ区切られた部屋があってこの作品1点のみがかかってました。

サイズがでかく額装されていることでガラスに反射して全体を一度に見ることができない。

近づいたり遠ざかったり何度となくアプローチを変えてみました。

すごくうっとりとした満足気な表情が安らぎます。



そして次へ。

いたー!


「ハートに火をつけて」

昨年の村上隆コレクション展で見ていたもののこんな短いスパンでまた見られるとは。

展示室の暗がりにライトがあたって浮かびあがっているその姿。

よくもこんなにでっかい木彫を作られたなあと。

しかも絵画のイメージとちゃんと地続きになっている。

頭の髪の部分は木肌のざくざく感をあえて残してる。服は絵画でおなじみの綿布を貼り付けてある。

差し出した右手の先に灯る火は初期作品の頃からのモチーフを踏襲してる。

瞼の表情が絶妙。この瞳はどこを見てるんだろうとじっくり考えつつ愉しむ。

リストをみると個人蔵となっててそういうところ、好きなんですよ村上さん!


「M.I.A」

2016年の作品。

近作で多くみられる正面からの女性の肖像。

目がしっかりと描かれているのに対して身体のラインがぼんやりと描かれているのが気になりました。

今回、展示されている他の近作と比較したのですがそういう描きかただなあと感じたのはこれだけでした。



ここまでが1階の展示。

さあ階段を上がって2階へ。

入り口でチケットを見せて中へ。

でっかいお月さま、お久しぶり。


「Voyage of the Moon (Resting Moon) / Voyage of the Moon」
奈良美智+graf

11年前、金沢の21世紀美術館で見て以来。

人の入れる小屋でその上にでっかい月のかお。

注意事項を読んで、荷物と帽子を台に置いて中へ入りました。

混雑していると整理券を発行するようですが平日でこの日は少し並んで中に入れました。

小屋の入り口はしゃがんで入るのだけど奥が広くなるような作りで外から見ると屋根がカーブしてる。

中にはもちろん音楽が流れててなんだか懐かしい感じがする。

奈良さんのドローイングとお気に入りなのであろう小物たちと。あと、床に飲み終えたビールの缶を潰したのと。

あと気になったのが今年2017年の作品2点。

「HOME」と「FROM THE BOMB SHELTER」。

モノトーンに近くて線画みたいなペインティング。

「HOME」は女の子が猫を抱いてるのだけど、奈良さんの描くおんなのこのイメージとはずいぶんと違う。これはとてもびっくりした。ゆるいのだけどちゃんも必要最小の表現にとどめててずっと見ていたくなる。なんだろう、この安堵感は?

暗がりの中、ちょっと照明がきつくて、これは別のところでもう一度みたいなと思いました。

今度は階段を上がって3階へ。

ちょうど、Voyage of the Moonが上から見えるのでみんな階段で立ち止まって見ていました。

そして、次の部屋には。


「Fountain of Life」

瞬間、涙が出そうになる。

連なる子供の頭部。目から涙が流れてく。

止まらない。ずっと我慢しないで、ずっと流れてく。

涙は実際の水を汲み上げて流してる。

部屋の壁はスカイブルー。

天井は自然光が差し込んでて天候によっては照明も使うよう。

ここに来て、見れて、本当によかった。

さて、部屋を出て少し通路を歩きます。


「Missing in Action」

これもずっと実物を見たかった絵のひとつ。

昇華したスタイル。

顔、目、身体、手と足の独特のフォルムとバランス。

だんだんこの表情と向き合っててふと写楽の大首絵を思い出した。

なるほどだからずっとこのスタイルで描き続けることは出来ないのだなあとひとり妙に納得。


「Hula Hula Dancing」

初見。

手がすんごく気になって何度も何度も眺めてしまった。

タイトルのとおりふらふらと腕を泳がせてるのだけどなんかもう手の先がデフォルメしたタコの足みたいでなんか異様なのですよ。

さて、この作品、どこが持ってるんだろうとリストをみるとなんと角川文化振興財団の所蔵。

ということはまた見せて頂ける機会があるとよいなあと。

そして、次の部屋へ。

あっ!

部屋の手前、右手に星型の窓が。

Voyage of the Moonの展示室から見えてたのはここでした。

窓の下にはベンチが。うーん、ここはすわるところだしな、なんて思ってたら美術館のスタッフが声をかけてくれました。

土足で上がって見てよいとのこと。

というわけで上がって、Voyage of the Moonを見下ろしてみました。こういう見物はいくつになっても楽しいものですね。

ここからは比較的新しい作品たち。

横浜美術館の「春少女」も来てました。

ガツーン。やられました。


「No Means No」

ついに見ることができました。

絵の下にはbloodthirsty butchersのステッカーの貼られたギターケース。

絵の中のひとは歯を食いしばってくやしそう。

その目は髪に隠れてしまって見えないけれどきっと涙で濡れてるのだろう。

紫で描かれた髪の描写に驚く。筆をうねうねとくねらせている。

奈良さんがこういう描き方したのはあまり記憶にない。

解決のない、行き場のない想い。そんな感じがしたのです。

bloodthirsty butchersの吉村秀樹さんが急逝されたのは2013年のこと。

奈良さんがbloodthirsty butchersが好きで2005年のAtoZの記念ライブで初めてその演奏を聴いた。

その後もアルバムを買ったり幸いライブも一回だけだったが行くことが出来た。

でも、もう生で聴くことが叶わない。自分くらいの距離感ですらかなりショックだったからもっと長くもっと近いひとであればその気持ちは測れない。

そんなことをふと思った。



「Miss Margaret」

2016年の作品。

目の描写に注目しました。

以前にもスペイシーな目の描きこみはあったものの描き方がまた変わってきている。

なんとなく色の重なりやなんかにモネの睡蓮がふと浮かんだ。

なんていうんだろう?ちょっと超越してしまった感じである種の凄みを感じた。

同じスペースにあった「Midnight Truth」も同じ質の格を見たような気がしました



ととてもざっくりですが、自分の気になったポイントだけで書いてみました。

過去の作品は個人蔵のものも多くてそうするとなかなかに借りてくるのが難しくなるということもあり、100点もの作品が集う機会はそうそうないことかと。

実際、この豊田市美術館のみで巡回なしということもあるので奈良ファンは必見です!

9/24まで。



<奈良美智 関連記事>
奈良美智「君や 僕に ちょっと似ている」(青森県立美術館)
奈良美智「青い森の ちいさな ちいさな おうち」(十和田市現代美術館)
奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている(横浜美術館)
奈良美智版画展(8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery)
2012年度第二期MOTコレクション 奈良美智 寄託作品(東京都現代美術館)
「奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている」まであと二ヶ月!
まさかのところで奈良さんポスター
CAFE in Mito 2011 かかわりの色いろ(水戸芸術館現代美術ギャラリー)
Nara STAMPシリーズ 登場!
荒吐×奈良美智 Tシャツ
禅居庵×FOIL「明日はわからへん。」奈良美智スライドショー
[東日本大震災被災地復興支援]奈良美智チャリティー大判カードセット
あれれ?版画な奈良美智ポスター
奈良さんのチャリティーフリーマーケットに行ってきました!
高橋コレクション日の出 オープニング展覧会 「リクエストトップ30 ― 過去10年間の歩み」
限定!グミガールクッキー
奈良美智「PRINT WORKS」(ROPPONGI HILLS A/D Gallery)
横浜美術館コレクション展【特集展示】ヨココレにある奈良美智作品
奈良美智 NOBODY'S FOOL ポスター その2
届いた!奈良美智 NOBODY'S FOOL ポスター
奈良美智24歳×瑛九24歳 画家の出発(ときの忘れもの)
2011奈良美智カレンダー
[奈良美智] Ceramic Worksを買いました!
イノセンス-いのちに向き合うアート(栃木県立美術館)
奈良美智 展「セラミック・ワークス」(小山登美夫ギャラリー)
ネオテニー・ジャパン その1 奈良美智(上野の森美術館)
奈良美智×村上隆「ニューポップ宣言」DVDポスターを入手しました!
特集:「奈良美智 1991-2001」(愛知県美術館)
奈良美智グッズ、バルチック関連のが続々登場!
特製ケース入り! 奈良美智+grafのポストカードセット
エモーショナル・ドローイング(国立近代美術館)
奈良美智ポスター COSMIC GIRLがやって来た!
最近の奈良美智さんのドローイングが良さげです!
久々の奈良美智グッズー缶バッジ「colette(コレット)」ー
DVD「NARA:奈良美智との旅の記録」本日発売!
DVD「NARA:奈良美智との旅の記録」を予約してきました
再び、あおもり犬
harappaにて~AtoZの新商品~
AtoZ Memoral Dogお誕生会
再び、弘前へ~AtoZから1年~
NARA:奈良美智との旅の記録
「NARA:奈良美智との旅の記録」特別鑑賞券(絵はがき付き!)
AtoZ作品集「YOSHITOMO NARA + graf AtoZ」が届きました!!
ビッグイシュー56号に奈良美智+graf「AtoZ」が掲載されています!
AtoZグリーティングカード
東京からAtoZへの道のり~私の場合~
かわいい!AtoZなお菓子その2 開運堂のAtoZ薄合せ
かわいい!AtoZなお菓子その1 パリ亭のチーズケーキ
奈良美智+graf AtoZに行ってきた~詳細版~(ネタ、バレバレっす)
弘前の街で見かけるAtoZ
AtoZwalkingMapに出てたお店「洋風食堂なずな亭」
AtoZ関連イベント「A-nightで行こう!」に行ってきた
AtoZ弘前限定!みどりのパップ
奈良美智+graf AtoZに行ってきた~速報版、これから行かれる方へ~
なかなかいいです!美術手帖8月号
奈良美智+graf AtoZのフライヤー

君や 僕に ちょっと似ている
奈良美智
フォイル
NARA LIFE / ナラ・ライフ 奈良美智の日々
奈良美智
フォイル
奈良美智 全作品集 1984-2010 Yoshitomo Nara: The Complete Works
奈良美智
美術出版社
NARA 48 GIRLS
奈良 美智
筑摩書房
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

荒木愛展 [I SPY Ⅱ] (画廊くにまつ青山)

2016-11-24 07:54:33 | アート系

画廊くにまつ青山で開催中の荒木愛さんの個展を見てきました。

去年の個展には伺えておらず、わたしが以前に個展を拝見したのはもう4年前のこと。


会場に入ってまず気になったのがDMになっていた「破られた約束」(写真の左)

黒鳥と蝶とこのタイトル。

そしてその画面の実物に見入ってしまった。

日本画の岩絵具の表現は以前からの見慣れたトーンなのだけど背景にこれまでになかった表現を見つけました。

滲みというか、水彩で見かける水を落とした箇所に現れる微かな線。

画面を見ててこの線を追うことでどれだけ視線移動の広がりを感じたことか。

そして中央に鎮座する不敵な表情の黒鳥の存在感。

あと、ほかに今回新しいなと思ったのはカラフルな色使いの小品2点。

もともと作品の色使いはばっちり決まってましたがひとつ画面であまりたくさんの色彩を入れ込むよりも、シンプルな色の対比で表現されていた作品が多かったように思います。

ほかに「火の玉」なる作品も気になりました。

一見、丸い太陽のように見えるのですがその実際はあるものが多数集まって形作られています。気づいてはっとなる、シンプルで力強い表現でした。

会場全ての作品を見終えると鳥モチーフが多いものの昆虫モチーフ、歯、ドリンクなどこういう連なりは荒木さんならではだなあと。

じっと見ていて飽きのこない素敵な空間でした。

11月27日(日)まで。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鈴木其一|江戸琳派の旗手(サントリー美術館)

2016-10-30 00:49:41 | アート系

鈴木其一|江戸琳派の旗手 に行ってきました。

会期終了を明日に控え、ぎりぎりで行ってこれました。いや、これはやはり行かねばの内容でしたよ。

気になった作品について書いてみました。冒頭の番号はリストのNoとなります。


34「抱一上人像」
円窓に抱一。表装に描かれたすすきといいセンスがよい。

23「蓮に蛙図」
たらしこみの色合いと蛙のグリーンの対比が素敵。

31「吉原大門図」
まず色使いがキレイ。バラエティに富んだ人物たちの描写が楽しい。
酔っぱらい、花魁、禿、盲目の杖のひと。

42「夏秋渓流図屏風」
エネルギーに満ち満ちた画面。川のブルーの塗りに金色のラインが鮮烈。緑の葉の縁の金も品のある使い方でよい。
背景が金なのはまあよくあるのでけど、地面が金というのはあまり見ないような気がします。川にぶつかる地面が切れたところの断面は茶色!なんとここからが岩になるとは! 左隻に描かれた赤く色づいた葉が上から3つ。コマ割りされたアニメーションかのよう。揺れて水に落ちる様を連続で見ているよう。

44「風神雷神図襖」
宗達、光琳の描いたのに比べるとかなり横長の構成。襖だからこうなったのだろう。
薄墨で描かれた雲に妙な気配が宿っており画面に奥行きが付加されている。風神雷神のキャラが強いところにこういう仕掛けを施すとは!

46「松島図小襖」
その名のとおり小さな襖なのだけども絵としての密度が高いこと。
波頭の生き物のようなうねり、怪しげな雰囲気をたたえた波の渦。中央に描かれた緑のは島というよりもなにか別のオブジェクトに見えてしまう。
目を襖の位置に落として近付いて凝視しました。ああ、眼福なり。

45「松に波濤図屏風」
これ最初見て、いまひとつだと思ってみてたら印象がどんどん変わってきた。波頭のヒョロヒョロしたラインが力なくダブって2重に見えてると思ってたのが動きのブレを意図して描いたんじゃないかと思えた途端にすごい絵に見えてきました。

185「月に秋草図」
左下から伸びて画面に入る。描表装が進入してくる。こういう構成ってあまりないのでは?

128「桜図扇」松本交山
たらしこみ、金、水色、桜のピンク。色彩の映えること。

127「楓図扇」松本交山
ブルーにグリーン。こういう配色、日本画で見たことがない。鮮烈、素敵!

126「向日葵図扇」松本交山
向日葵のバックはなんと赤!夏の暑さが頭に浮かびます。

130「十二ヶ月図扇」
12枚、花鳥でいくかと思ってたらもっと面白い構成ににやり。鐘馗と鬼が出て来てびっくり。
モノトーンの千鳥が雪の中飛んでくシーンの趣きのあることよ。

134「笠子に河豚図扇面」
ひっくり返って膨れたお腹をむけるふぐのかわいいこと。其一ってこういう笑いをとりにいくような画題は少ないので驚きました。

175「鐘馗・神功皇后・武内宿禰」
三幅対なのだけども中央の鐘馗のみ縦の長さが短くなっているという珍しい構成。
神功皇后・武内宿禰はそれぞれ背後に波が描かれており、離れているがつながっているかのよう。

87「白椿に楽茶碗花鋏図」
黒の楽茶碗、白椿、それに鉄の鋏。
どれも地味だけどシンプルで必要十分な感じ。鋏の持ち手の終端の先っぽがシュッと窄まった様にしびれます。

86「雪中檜図」
雪がまっすぐに下に落下するのが直線で描かれていて面白い。
その他に雪の塊が落下するのも描かれていて胡粉の白が散らされている。

67「朝顔図屏風」
まずその大きさに圧倒されます。くらくらする。どれだけ見続けても解決に至らない感がずっと持続してる。なんだろうこれは?
目が釘付けとなって位置を変えて何度も見直す。どうしても光琳の燕子花を頭に思いうかべるのだけどまるで構造は異なる。燕子花は平面の並びで見れるが朝顔がこれにねじれが加わるような感じ。じっくりと時間をかけて堪能しました。

95「大江山酒呑童子図」
画面がきらびやか。でも実はある部分に釘付け。酒呑童子の下に敷かれている虎の毛皮。しっぽもかわいいのだが閉じたお目目がかわいい♡

109「山並図小襖」
波のフォルムだけど山の色で描かれたのが意外にもすんなりとはまって気持ちいい画面。
こういうのが展示のラストにくる構成もよいなあと。上品なデザートみたい。


とまあ取り留めもなく思うところ個別に書いてみました。

内容は満足なのですが会期によっての展示替えの多さはやっぱりいつもながらでリストが見にくいなあと。

4階の第2章での展示ケースの中に並んだ小さな冊子などのコーナーは混んでたが頑張ってじっくりと見たが甲斐がありました。其一直筆の書状が何点かあったのだけどその文中に図とデザインみたいなのがあるのは面白いなあと。

導線で気になったのは3階入ってすぐの巻物。右から行きたいのだけども入口から近いのは左なので逆から見てく人がほとんど。

あと、ファインバーグ・コレクション所蔵は特によいなあと。松島図小襖、大江山酒呑童子図、山並図小襖。どれも上質で次いつ見られるかと思うとせつないですね。

朝顔もまあメトロポリンタンがなわけで。というわけでじっくり眼に焼き付けてきました。

明日10/31まで。

鈴木其一―琳派を超えた異才 (ToBi selection)
クリエーター情報なし
東京美術

江戸琳派の美: 抱一・其一とその系脈 (別冊太陽 日本のこころ 244)
クリエーター情報なし
平凡社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヒュー・スコット=ダグラス展(栃木県立美術館)

2016-05-02 22:17:21 | アート系

栃木県立美術館で開催中のヒュー・スコット=ダグラス展に行ってきました。

村上隆さんのカイカイキキギャラリーで個展を行っていた作家さんだったので気になっていたのです。

というわけで栃木に訪れたついでに行ってきました。


久々の栃木県立美術館。

ミラーに映る青空を見てのとおりの気持ちいいお天気でした。


チケットを購入するとリストの他にこのような冊子を頂けます。

なんと16ページ。

中にはヒュー・スコットによるステイトメントも。

ただし、この文章の最後に下記のとおり書かれてました。

[編者註:このステイトメントは2016年1月末時点のもの]

そして、紙ペラ1枚のリストの裏面にはステイトメント2が掲載されています。

ただし、こちらにも以下の注意が記載されている。

[編者註:このテキストは4月初めに届いたものであり、実際の展示状況とはズレがある。よって[ ]内は編者による補足である]。

どうしてこういうことを書いたかというとブルーの冊子のステイトメントをちゃんと読んで作品と向き合うと実際の展示作品とうまく合わない説明があるのです。

どちらかというとステイトメント2のほうが実際に近いと思いました。

さて、前書きが長くなりましたが本編です。

今回は、展覧会場内でのスナップ写真撮が許可されており、撮影した画像をSNSなどで公開することが出来るとのこと。
(※ストロボ、三脚の使用は禁止。また動画の撮影もNG)


会場に脚を踏み入れるとプリント作品と何やら袋が連なるオブジェ。

全12点からなるプリントは「ボケ」というタイトル。

アルミニウムにマウントしたクロモジェニック・プリント。


近くに寄るとこんなふう。

ドット状の連続を撮影したもののよう。

ステイトメント2にその答えは書かれてて写真撮影用の照明パネルとのこと。

ぼかすことでこのドットが溶けて別のフォルムに変容する。そのシンプルな形のバリエーションが面白い。

袋はというと梱包材で使われる紙製のエアバッグ[ダネージバッグ]。

さらにその中に空気を入れる際に粉末にした油性顔料を加えたとのこと。


近付いた時に見えるこの汚れがそうではないかと思うのですが。。

これは中を開封して実際に顔料がどう広がってるかということがものすごく気になりました。

キャンバスの上に絵具を塗る絵画の裏返しにしたかのようなイメージ。


そしてスライドの作品。

このスライドプロジェクターの存在感がいい。

ガシャッと音がして画像が切り替わる。

物理的な装置がリアルタイムで生成する音はやっぱり気持いい。


投影されるスライドは映画の予告編のフィルムをコラージュしたもの。

パーフォレーションはもちろん、音声の波形データも入ってて妙な強度があるんですよね。


追加されたであろうこの矩形や市松模様などのラインが力強く迫力がありました。

声や音楽、台詞のない画像を連続して見る事でこちらの内側にあるイメージを呼び覚まされるよう。

全体を通して感じたのはシンプルな力強さ。

こういった現代美術の先端の作家の個展を開催しちゃう栃木県立美術館の思い切り、素敵です。

6/19まで。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生誕300年記念 若冲展(東京都美術館)

2016-04-27 22:57:23 | アート系

若冲とあらばどこまでも!

それくらいの気持ちになってしまいます。

ちょうど10年前、お正月の東京国立博物館で水墨で描かれたタマゴ型の鶴に出会ってからというものあっという間でした。

その後、三の丸尚蔵館での「動植綵絵」を皮切りに、プライスコレクションでの「鳥獣花木図屛風」、MIHOミュージアムでの「象と鯨図屏風」と追いかけてきました。

そして、今回の生誕300年記念 若冲展。

2007年に相国寺承天閣美術館で見てから9年。

「釈迦三尊像」3幅と「動植綵絵」30幅が一堂に会します。

こんなに嬉しいことはありません。

というわけで昨日、休暇を取得して参戦してきました。

会場に到着したのは12時20分頃。

すでに門のところまで行列が出来ていました。

入場までの時間が記載されたプレートには非情にも80分の待ち時間が。

というのも日曜の夜にNHKで今回の若冲展に絡んだ内容の番組を放映したばかり。

翌日4/25は休館となっていたのです。

まあ、あれを見ちゃうと多くの方が来場されるのも納得です。

なんとか日差しと暑さを乗り越えて会場になだれ込みました。

まあ、中もすごいひと。さーて、どうしよう。

と考えてるうちに同行していた奥さんを見失ってしまいました。人が多すぎてどこにいるかわかりません。一応、後で待ち合わせはしたので大丈夫かなあと割り切って鑑賞スタート。

今回は地下1階、1階、2階と3フロアを使った構成。

まずは見られるところをがんがん行ったほうがいいだろう。乗興舟はものすごく混んでてパス。

地下は鹿苑寺の襖絵をザっと見てあとは遠目にし1階へ上がります。

うーわー!!

「釈迦三尊像」を正面に据えてその左右を15幅ずつの「動植綵絵」が円形に並びます。

会場にはリストの図面にも描かれているように3本の柱が中央に聳えていて、中に入ると真ん中の柱が邪魔してお釈迦さまが見えません。

最初はこの構成がよろしくないなあと思って見てたのですが、奥に踏み入って初めてその姿を拝めるというのはこれはこれで有り難みがあるなあと思うようになりました。

それにしても圧巻でした、このフロア。

以前にも「動植綵絵」は3回見ていますがここまで近くで見たのは初めてかと。

ガラスからの距離が15~20センチ程度でしょうか?「動植綵絵」に限らず他の作品もそうですがほんとに近くてどれほど細密に描かれているのかがよくわかります。

「動植綵絵」については柵みたいなガードがあるもののそれでもかなり近くてくらくらしちゃいました。

さて、お次は2階へ。

菜蟲譜がものすごいひとだかりでせっかく全編を一度に見られる機会だけどもまずはスルー。

「池蓮図」の寂しい画面が印象的、ラストはプライスさん所蔵のコーナー。

とまあ、最初一時間はこんな感じでした。

若冲についてはこれまでに何度もみてるので個別の作品の感想はかなり偏ってしまうかもしれませんが書いてみたいと思います。


5.糸瓜群虫図

植物と虫たちがなんともいい!

世界の調和をとてもシンプルに描いてる。やはり仏教のひとなのだなあと。虫たちへの目線のなんと優しいことか。


11.旭日鳳凰図

どれもすごいのだけどもこの豪華さはちょっと抜きん出てる。動植綵絵は一揃えだから別として。

単一の作品としての盛り込み具合はちょっと異様。

鳳凰だけでもくらくらしちゃうのにあの独特の波頭のフォルムがたまりませんね。


18.達磨図

今回見た中で数少ない初見。

パッと見だと口のフォルムが独特で面白いものだと思ってみたらさにあらず。

近付いて見てみるととても怖い荘厳な表情。距離でこうも印象が違うとは。


21.竹虎図

▲で描かれた竹が圧巻!

もう抽象でしょ。勢いでもってってる。かなりの力技。

こういうあさってのところから不意打ちくらう感じ、たまりませんね~。


続いて1階へ。


2-2.動植綵絵 老松白鳳図

このレースみたいな白には目が釘付けになりますね。

裏彩色、輪郭線なしで得られるこののトーン。


2-14.動植綵絵 牡丹小禽図

牡丹がなんとも艶かしい。

こちらに迫ってくるかのよう。色香ただよう。


2-14.動植綵絵 紫陽花双鶏図

鶏のつがいのそれぞれのポーズと表情がお見事。

描写は細密で一見、リアリズムっぽいのだけども実際の鶏は出さない表情がここにある。


2-20.動植綵絵 雪中錦鶏図

雪の白と、歯の虫食いのようなフォルム。

錦鶏の赤が艶やかで美しい。じっくりと見入りました。


2-27.動植綵絵 蓮池遊魚図

動植綵絵の中で個人的に一番好きな作品。

美しい絵なのだけどよおく見てくとその構成がとてもおかしいことに気付いてしまう。

このお魚たちはどういう状況なんだろう。

蓮のお花が回りを囲んでいる。これはどういう視点??

若冲って位相と空間がおかしくなるようなのをいくつか描いてて、見てやられた~って気になる。


2-30.動植綵絵 桃花小禽図

以前に見た時にそこまで印象に残らなかったのだけどもすごく気に入ってしまいました。

桃色と白の花。白と青の鳥。

控えめそうに見えて画面全体が調和を保ったままこちらに向かってくる静かな迫力。シンプルだけども面に力を感じました。


動植綵絵には迷いなき強い信心を感じました。

自分の帰依する仏教のためにやろうと。

それでこの33幅なし得る持続力、構成力。それが今もそろいで残ってる。応挙も狩野派の絵師もこういうボリュームとクオリティで作品を生み出して現存しているというのは無いと思うんですよね。

さて、最後は2階へ。


7.雪梅雄鶏図

雪のところの稜線がグレーなんですよ。

これは若冲の他の作品には見られないように思います。


37.三十六歌仙図屛風

岡田美術館、いいの持ってるなあと。

人物の生き生きした感じとやってることの可笑しさにふいちゃいます。

売茶翁像みたくちゃんとした肖像も描くのにコミカルなものもちゃんと味わい深かったり。

ほんと引き出し多いです。


46.虎図

かわいい~。

なのにものすごく細かく描かれた毛。

虎の上の木は水墨でこっちはまるで違ったトーン。


とけっこうざっくりですがこんな感じでしょうか。

GW前の平日でこの混雑です。

会場内はひとでごった返してて巻物の「乗興舟」と「菜蟲譜」は全部見られませんでした。

予め公式ホームページに掲載されたリストで気になるものを見ると決めて行くのもよいかもしれませんね。

5/24まで。

<おまけ>

今回の図録です。鶴がいいでしょ。

ショップもかなり混雑してるのでもし図録だけであれば中庭の臨時売店で購入可能なのでそちらがよいでしょう。こちらはすぐに購入出来ました。

あとクリアファイルなども若干、在庫していました。


<若冲関連記事>
若冲と蕪村(サントリー美術館)
京都細見美術館展Part2 琳派・若冲と雅の世界(そごう美術館)
若冲水墨画の世界(相国寺承天閣美術館)
伊藤若冲アナザーワールド-前期展示-(千葉市美術館)
伊藤若冲アナザーワールド(静岡県立美術館)
若冲ワンダーランド(MIHOミュージアム)
若冲、若冲、若冲!(特別展「皇室の名宝―日本美の華」での動植綵絵)
「日本の美と出会う」(日本橋高島屋)での若冲作品
山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年(府中市美術館)
小特集「若冲を愉しむ」(京都国立博物館)
「金刀比羅宮 書院の美 ~ 応挙・若冲・岸岱から田窪まで」(金刀比羅宮)
若冲とその時代(千葉市美術館)
金刀比羅宮 書院の美― 応挙・若冲・岸岱 ―(東京藝大美術館)
若冲展(相国寺承天閣美術館)
花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第1期(宮内庁三の丸尚蔵館)
花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第2期(宮内庁三の丸尚蔵館)
花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第3期(宮内庁三の丸尚蔵館)
花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第4期(宮内庁三の丸尚蔵館)
花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第5期(宮内庁三の丸尚蔵館)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想-後期展示-(府中市美術館)

2016-04-17 12:14:39 | アート系

(府中市美術館)ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想-後期展示-


毎年、春となると府中市美術館は素敵な展示をやってくれてました。今回から「春の訪れ江戸絵画まつり」と銘打つこととなりました。これからも毎年春にやってくれるとお墨付きを頂けたみたいで嬉しいですね。


さて、今回も気になった作品について書いてみたいと思います。冒頭のナンバーはリストの番号となります。



3.柴田是真「三日月図」

漆でなくって水墨なのだけども雲の部分がとてもよい。フォルムといい濃淡といい美しい。




14.円山応挙「雲峰図」

シンプルなフォルムだけで描く雲。

この時代によくもこういうアプローチをやってのける。

もくもくと立ちあがるフォルムが玉堂のファロスタワーにもつながってるかなあと。


33.岡本秋暉「日々歓喜図」

このタイトル、メモを見返してしまった。作品と繋がらない。

波の上を群舞する蝶たち。

波の線が黒で描かれていて手前はくっきり、奥にいくにつれてだんだん薄くなっていってる。

蝶は白で描かれていて波の描写とうまく合っている。


71.鳥居清長「金太郎」

クマがかわいいのはもちろんなんだけど、手前のカラス天狗がかわいい。


73.魚屋北渓「山姥金時図」

山姥の乳を飲む金太郎。

目を奪われたのはその背景。

山の断崖絶壁の線がエッジが立っててキレッキレの描写。


79.鳥文斎栄之「孟宗図」

竹の葉の凛とした佇まいに惹かれる。

光の差し込む部分の斜線が白で飛んでてそこに竹は描かれていない。


93.田公実「竜・虎・鷹・鯉図」

中でも虎と鷹の目ヂカラが半端ない。

絵としては虎図が一番よく描けてる。なによりもその細かい毛並み。一本一本細密に描いていて目が釘付けになる。のだけど、お手手はなんともかわいらしくてギャップがおかしい。


107.高井鴻山「妖怪図」

線が安定してしていない。ブレてるというかビリビリしている。

さかざきちはるさんのSuicaペンギンに見られるビビり線の周波を変えたというような感じ?
絵の見た目の印象からいったらまったく繋がらないのだけども。

異様なキャラのオンパレードがこの筆使いで描かれていることで妙な存在感を放つ不思議。


91.伊藤若冲「亀図」

亀自体は薄い墨で甲羅が筋目書きで描かれてる。なんともかわいらしい。のだけど、そこはやっぱり若冲。

後ろに伸びる毛の豪快な筆さばき!勢いがありまるで違うテイスト。こういう両極を一枚に収めてしまう。流石です!


121.東東洋「煙霞山水図」

三幅対なのだけど真ん中に描かれている馬上の人物に強く惹かれた。後ろ向きで笠と着物のみ。

顔どころか首さへもない。本当にこの人は存在してるのだろうか?そんな風に思ってじーっと見つめてました。
実は今回、一番好きな作品でした。


153.長沢蘆雪「蓬莱山図」

いびつ!なんだろう?この安定を放棄したかのような非日常感。

やはり蓬莱山という神秘の領域を表すにはこうするしかないと思ったのか?


109.「柳橋水車図屏風」

同じモチーフの屏風は以前にも見てるけどカラーリングがよいなあと。

基本、橋や水車、雲は金なのだけど、水が茶色というのがなんとも意外。

柳の枝のカーブが木をまあるく見せてて面白い。


111.土佐光貞「吉野・竜田図」

画面の下半分を描いていない。

真ん中に紅葉と桜を、上方に書をもってくるバランスがなんとも粋である。


124.伊藤若冲「乗興船」

大典による文章がところどころはいる。

拓版による黒みの多い画面が記憶の向こうの景色という印象。

小さく描かれた人がのフォルムがなんともよい。


125.長沢蘆雪「朧月図」

墨だけで描いた月。画面上方に雪がちらついてる。

なんともかわいらしい。


149.葛飾北斎「富士越竜図」

富士山の稜線がけっしてシャープではないのだけども角度とカーブが絶妙。すっごくかっこいい。



とまあ全部は書けませんがけっこう気に入った作品が多かったなあと。


会場にはリストの他に画家解説のプリント(なんと8ページ、ホッチキスどめ)と、「ファンタスティックたんけんたい」なるお子さん向けのカラーのも。


「ファンタスティックたんけんたい」はちゃんとやっておけばよかった。大人でも気づかないところがあるので要チェックですよ。


あとこんなのもありました。月が予め印刷されているハガキに用意されているハンコを自由に押すのです。

お一人様一枚限り。うさぎさんを押してみました。こういうのはやっぱり嬉しいですね。

さて、毎回のことなのですが、この江戸絵画まつりにくると思うのですよ。

見終えてなんと満足度の高い展示だったなあと。

また来年も行きたいですね。

5/8まで。

<江戸絵画まつり関連記事>
2013年「かわいい江戸絵画 後期展示(府中市美術館)
2012年「三都画家くらべ-京、大坂をみて江戸を知る
2009年「山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年
2007年「動物絵画の100年 1751-1850
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ボストン美術館所蔵「俺たちの国芳 わたしの国貞」(Bunkamuraザ・ミュージアム)

2016-03-27 01:01:04 | アート系


Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中のボストン美術館所蔵「俺たちの国芳 わたしの国貞」に行ってきました。

ボストン美術館所蔵とくればもうこれは!いい印象しかありません。

2008年 ボストン美術館浮世絵名品展(福岡市美術館)

2011年 ボストン美術館 浮世絵名品展(山種美術館)

と過去2回、ボストン美術館の所蔵品の展覧会を見ています。

特に経年劣化しやすい紫がキレイに残っていた状態のよさはよく覚えています。

しかも国芳ときたらもう間違いなくキャッチーでよさげな感じ。

ということでわたしとしては珍しく会期スタートして早々に行ってこれました。

各ブロックの見出しがとてもよい展示となっていました。

この後、登場していきますがキャッチフレーズがとてもわかりやすく入って行きやすいのです。

では気になった作品を順番にとりあげてみたいと思います。No.はリストに記載されている番号になります。

なお、キャプションには国芳と国貞の作品それぞれが一目でわかるように、国芳は緑の○で芳、国貞はピンクの○で貞と表示されています。これも親切でわかりやすいです。


一幕目の一
スカル&タトゥー・クールガイ
髑髏彫物伊達男


もうこの見出しがイカすでしょ?

文中にも「背徳」って書いてパンクとふってあったりよい感じ。

7.歌川国芳「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」

冒頭のチケット画像のメインビジュアル。

単にスカルだけでかっこいいと思ってたら、着物の柄の髑髏がにゃんこが集まってて実はかわいいという仕掛け。

シャレてますよね。ほんと粋だと思います。

下駄の髑髏もかっこいいです。


一幕目の二
モンスターハンター&ヒーロー
物怪退治英雄譚


14.歌川国芳「清盛入道布引滝遊覧悪源太義平霊討難波次郎

オレンジのグギグギした直線が印象的。

黒とインディゴとのコントラストもよい。

画面構成でもう引きつけられっぱなし。

マーク・グロッチャンを横に並べてみたいなあと思ってしまいましたよ。


20.歌川国貞「天竺徳兵衛実ハ義仲一子大日丸」

縦2枚続き。下にはでっかい蝦蟇。

上はカエルの上に立つ大日丸。

このカエルの表情がなんか好きなんですよ。かわいいわけでもかっこいいわけでもないのですけど。何を考えてるんだろうって。


一幕目の三
ホラー・オブ・ウォーター
畏怖大海原


22.歌川国芳「大物之浦海底之図」

画面左のカニが奥へどんどん続いてく様が異様。

そして、何故か海底でちょんまげのサムライが挑んでいるという姿がシュール。


一幕目の四
ゴースト&ファントム
異世界魑魅魍魎


30.歌川国芳「木曾街道六十九次之内 細久手 堀越大領」

背後に浮かぶ磔モチーフの人形が本気で怖い。大根のようでヤバイ表情を見せている。

袖口から細い手がにょろーと伸びてるのも怖い。

全体の風景がきちんと描かれた中でこの部分だけ出来の悪いイラストをコピペしたかのような居心地の悪さ。


一幕目の五
サムライウォーリアー
天下無双武者絵


一瞬、トルーパーとか空目したのは気のせいってことでw

37.歌川国芳「和田合戦 義秀惣門押破」

怪力で門の閂(かんぬき)をぶっ壊している光景。ダイナミックな壊れっぷりが気持ちいい。

構図における画面上のパーツの配置がハマっています。



二幕目の一
トライアングル・オブ・ラブ
三角関係世話物


45.歌川国貞
筆魁曽我福贔屓
「近江の小ふじ 坂東しうか」、
「八幡屋お三 尾上菊次郎」、
「曽我十郎祐成 市むら羽左衛門」

縦3枚続き。

上2枚、石階段の上で刃を合わせる女性2人。解説によると仇討ちのよう。

見てハッと息を飲む。拮抗する様が上下で緊張感が走る。


二幕目の二
カブキスター・コレクション
千両役者揃続絵


48.歌川国貞「大当狂言ノ内 八百屋お七」
五代目岩井半四郎

目千両と言われたほどの目力っていったいどんなものだったのでしょう。

妙味のある表情でチカラ強さよりもむしろいたずらでかわいらしい雰囲気も少し感じられる。


二幕目の三
オフステージ
楽屋裏素顔夢想


歌舞伎役者が準備してたりくつろいでたり。

建物の中のいろんな場所でいろんなおとやってるのを見るとどことなく山口晃さんの絵を思い浮かべてしまったり。


二幕目の四
ザッツ・エンターテイメント
痛快機知娯楽絵


85.歌川国芳「開運出世合躰七福神」

七福神のいいとこ全部どり。

っていうか、なんか超合金の合体ロボな感じ。

日本的ですよね~、こういうの。


二幕目の五
ファニー・ピープル
滑稽面白相


91.歌川国芳「子供遊土蔵之上棟」

梁や柱がどうなってるのかついつい目をこらしてしまう。

実はエッシャー的に見えてしまって意外や意外。


二幕目の六
エドガールズ・コレクション
今様江戸女子姿


129.歌川国貞「春夕美女の湯かゑり」

画面左の女性の持つ提灯からの明かりがプロジェクター投影みたい。

注目すべきは背景の人物がシルエットで描写されていること。

これが今回、絵画的(まあ、版画ではあるけども)には一番ぐっときましたね。


二幕目の七
フォーシーズン・レジャーガイド
四季行楽案内図

151.歌川国芳「四季遊観 納涼のほたる」

なんでもない草が風にそよいでいるラインがとても自然で見ほれましたね。


二幕目の八
アデモード・スタイル
当世艶姿考


なんとこのコーナーは4/18まで期間限定で写真撮影が可能なのです。

※三脚、フラッシュ、セルカ棒は使用不可等々の注意事項あり。専用のペーパーがリストの隣に置かれていますのでご一読を。

少しでも写真が手元に残ると嬉しいですね~。


158.歌川国貞「花鳥風月 風」

というわけで会場で撮影した画像です。

この障子の部分のシルエットも素敵なのですが、実はこの障子の枠の線がエンボスになってて手間がかかっています。

平面であるけどもこういう奥行きを出す表現が使えるというのがやはりよいなあと。


というわけでかなり満足のいく内容でしたよ。おすすめです。

6/5まで。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2015展覧会ベスト5

2015-12-31 21:47:12 | アート系
ということで今年も今日でおしまい。

昨年は見た点数が少なくベストを特に決めてませんでした。

今年はそこそこ見られたのでベスト10は難しいまでもベスト5ならなんとかなるかなあと。

独断と偏見と個人的な趣味でのランキングです。


1.鴻池朋子「根源的暴力」(神奈川県民ホールギャラリー)

いま、この日本で、現存する作家がこの表現をやっている。

これがどれほど値打ちのあることか!

生理的にいやだなあと思う表現も含めてこれをしっかりと見ねばと思いました。

ちょっとこういう感覚になる展示は他にありません。


2.モネ展(東京都美術館)

睡蓮はかなり数をみていると思ってたのですが、やられました。

なんでこうも同じモチーフで表現を変容させることが出来るのか?

カラフルながらもワイルドな筆致で書き殴られた睡蓮はタイトルと作者がなければ抽象として成り立ってしまう。

知っているつもりの作家のこういう想定外にぶち当たることが事故みたいで嬉しい。



3.春画展(永青文庫)

もうこれは開催されたことだけですごいこと。

そもそも春画はこれまでにほとんど見たことがない。

それがこれでもかとすごいのが出てくること。

機知を活かし表現に肉薄する様が尋常でないなあと。

こういうものをみんなで楽しんでた。

ひとのありようなんてそうかわらない。素晴らしいこと。



4.パウル・クレー「だれにもないしょ」(宇都宮美術館)

クレーは特別であの画面のもつ寓意が保ててるのがすごいなあと。

極めてくとどうしても作為が勝りそうになるのだけどちゃんとキープ出来てる。

かと思うと違うテイストのものも放り込んでくる。



5.蔡國強:帰去来(横浜美術館)

スケール感のあるものに最近は惹かれるように思います。

火薬で爆破して描かれた線の存在は匂いもふくめて強烈な印象を残しました。

あとあのオオカミ99体も圧巻でした。



というわけで今年のベスト5、ギリギリすべりこみでなんとか書けました。

来年もまたよい展示をたくさん見られますように。

皆様、よいお年を!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鴻池朋子「根源的暴力」(神奈川県民ホールギャラリー)

2015-11-26 00:23:54 | アート系

鴻池朋子「根源的暴力」に行ってきました。

実は神奈川県民ギャラリーに入るのはこれが初めて。だから会場がどのくらいの規模なのかがまるでつかめない。

今回、そのことが幸いだったようです。

階段を降りて会場へ。

ステイトメントの文章と巨大ななめくじ、そしてこの古びた建物の空調の音がシャッターを響かせて起こる軋み。

これで泣きそうになりました。

震災後の状況。自分たちの築き上げてきたものが壊れて、その虚が無限に足下に広がってて、自由を奪われる感覚。

4年忘れてた感情がふと浮かび上がってきたのです。

人間と人間の作り上げた文明は蹂躙されてわけのわからない自然にやられてしまう。そう咄嗟に感じたのです。

現代美術の展示でここまで気持ちを揺さぶられたことはありません。

これまでに鴻池さんの作品はたくさん見てきました。でも、今回の震災後の作品は随分と変化してしまっています。

まずひとつは革を使った作品。

白くて直角のあるキャンバスの対極。

その形はマントや着物のようなフォルムになっていて、継いであるのはちゃんと革紐で結ばれてます。

その上に描かれる動物たちは自在で色彩が実に生き生きとしていました。

そしてもうひとつは陶。

手捻りで作られた小さいのがたくさん並んでたのは気持悪かったです。色彩もついててなんだかウミウシやヒトデやヒルみたい。

原初の生命のよう。あと何よりも感じたのは言葉以前の感覚なんだなあと。

瞬発力と感情とがスパークして直感でくみ上げてる感じ。

生に近い皮膚感覚を覚えます。

ドローイングもありました。額装されたのは以前からのに近いタッチでしたが、展示ケースに収まったドローイングはいつもよりも線がワイルドで濃くエネルギーに満ち満ちているような感じがしました。

進んで行くと部屋には展示ケースが24個。横3列×縦8列。

中には顔や手になり損ねた陶。

整然と暗がりに並んだケースは美しいのだけども、中を覗くと行き場のない澱みたいのがでも朽ちるのでもないような陶の白のテカテカで待ち受けてる。

こちらの気持ちが宙吊りにされるかのよう。


ラスト第5室はこの巨大作品。圧巻です。

この第5室に限り、フラッシュを使わなければ写真撮影がOKです。

写真の中央下の黒い部分がちょうどひとが通れる大きさ。前の展示室の出口から続いています。


裏はこんな風。

光のドットが成す線が銀河鉄道みたいと妄想しちゃいました。


これはおとぎ話のことが書かれてた部屋に貼られてた木版画。

実は映像のコーナーの壁にもさりげに貼ってあったり。

たぶんこういう木版もこれまでにはなかった表現方法では?


会場にはこの革のマントが何体も。

ちょうと子供くらいの大きさ。所属不明な民といった感じがしました。


階段を上がっていった上にはまた陶がありました。

このフォルム、白と質感。なんだか骸骨のようで不安な気持になりますね。


こちらはネタバレになっちゃいますが小屋の屋根。

なんとこんなテキストが!

シンプルでわかりやすいのですが作品に載せるテキストは手描きにして欲しかったなあと。キャプションはフォント使ったので構わないので。

明後日11/28土曜日まで。

根源的暴力
鴻池 朋子
羽鳥書店
インタートラベラー 死者と遊ぶ人
鴻池 朋子
羽鳥書店
焚書 World of Wonder
鴻池 朋子
羽鳥書店
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高橋大輔 ア (HARMAS GALLERY)

2015-10-26 21:38:13 | アート系


久しぶりに訪れたHARMAS GALLERY。

高橋大輔さんは最初見た時のインパクトがものすごく残ってる。
高橋大輔「絵画の田舎」(アルマスギャラリー)

気持ちいいくらいの絵の具の特盛!

見ると気前がいいなっていう気持ちになるんですよね。

あれからもう何年も経っている。

さてどんな風に変化してるだろう。

そんな期待をして作品と対峙してきました。

おおおお。

まず気づいたのは支持体が多様化したところ。

以前は絵の具がもりもりと全面に出ていたのが、今回は支持体をあえて出すような作りのものも。


パネルをだしてたり、はたまた麻布だったり。

あと額縁を模したように周囲を囲むのもまた絵の具だったり。

そして、1番やられたなと思ったのはリミックス。

なんと過去の作品の部分を削ぎ落として貼り付けてる。

切り取られたエッヂの直線の生々しさがたまりません。

絵画であるのに厚みのある絵の具は物質としての重厚感と存在感を放つからこそ効果のある手法。

構造がとても楽しい展示でした。

12/5まで。

金土日のみオープン。12:00~19:00


<関連記事>
高橋大輔「絵画の田舎」(アルマスギャラリー)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冨岡奈津江展 「陶のいきもの ~Time files~」(ガルリアッシュ)

2015-10-26 00:01:07 | アート系


久しぶりにガルリアッシュへ。

冨岡奈津江展 「陶のいきもの ~Time files~」が本日からスタートしていました。

会場に足を踏み入れると、なんと白い砂利が。

そこにいきなりカブトガニがいるこの光景。まずお目にかかることはないであろうお題です。

しかも、奥にひっくりかえった脚だけが。

ぱっと見、リアルだなあと思ってたのですが、よくみると違う。

面の張り出し方が違うのだけど、牡蠣の殻のようなディテールがなんとなくそれっぽい感じに見せている。

逆にひっくりかえった脚はテカテカとしてリアル。昆虫の脚のようでこれはちと怖い。

さて奥にはボリュームのあるのがもう一体、鎮座しておりました。


キリンなのだけども首を後ろに向けている。このポーズがじんわりと非凡だなあと響いてくるんですよね。

あと、目の表情の柔らかい感じもよいです。

こういう大きさのものを焼き物でやれるというのがすごいなあと思って在廊されていた冨岡さんに聞いてみたところ、分割されているとのこと。

これはぱっと見ではわかりませんでした。

表面の◎の凸凹した処理が気になって尋ねてみたところ、釉薬の出方を考えてこうしているのだそう。

壁に掛かっていた陶板が半立体で動物の顔になっているのが3点あったのですが、この凸凹がどことなくデジタルなドット的にも見えて若冲の升目書きがふと頭をよぎりました。

13点見応えのある内容でした。

冨岡さんの作品を初めて見たのはこの7月に開催されたペコちゃん展でのこと。


陶のペコちゃんなのだけどちゃんとキャラクターにのまれることなく冨岡さん自身の作品として成立してるなあと深く記憶してたのです。

髪のギザギザしたように造形した解釈が面白いなあと。

そして今回、ようやく冨岡さん本来の作品を鑑賞出来てよかったです。

11/14まで。

<会期>
2015.10.25(Sun)~11.14(Sat)

<開廊時間>
12:00~19:00
最終日は17:00まで
<休廊日>
月曜日(休日の場合は翌日)10.26(Mon) 11.2(Mon) 11.9(Mon)

http://galerie-h.jp/blog/3798.html
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生誕150年記念 竹内栖鳳展(小杉放庵記念日光美術館)

2015-08-11 23:17:32 | アート系

小杉放庵記念日光美術館で開催中の「生誕150年記念 竹内栖鳳展」に行ってきました。

目録を見て気づいたのです。

あれ?

山種美術館の所蔵作品がまるでない!

というか、殆どが海の見える杜美術館所蔵。

ということは自分がこれまでに見たことのない栖鳳の作品にお目にかかれるということ。

前期後期入れ替えの後期展示がちょうど今日から始まったところ。

今回の展示は「作品保存と会場規模の制約により」60点余が日光会場では出品されないとのこと。

これは少し残念。

とはいうものの、小さな会場に溢れる珠玉の数々。

堪能いたしました。

気になった作品について書いてみたいと思います。
(番号はリストのものです)


⭐️09. 薫風遊鹿図

この鹿の表情の気高さ。

奥の景色は水墨のモノトーン。

手前の草はカラーでしっかりと描かれています。

彼岸と此岸に見立てた間に佇む、神の使いってとこなんでしようかね。


⭐️11. 猛虎図

こんな虎見たことない!

墨で描かれたヒョロヒョロとした細い毛の描写。

ちょっと他にない感じで見入ってしまいました。

若冲のこれでもかと細密に描いてたのとはまるで違うアプローチです。


⭐️12. 獅子図

これ、かなりおかしな絵でした。

目はかなり横を向いているというのに、口はほぼ正面を向いている。

しかも口のあたりの描写はかなりざっくり。

ふと山口晃さんの「ヘンな日本美術史」に登場した慧可断臂図に描かれた達磨を思い出しました。

「目は正面から、耳は後ろから見た形で組み合わされており」という構成は近しいものを感じました。


⭐️15. 小春

これぞ栖鳳の猫。

白い毛並みの立体感が素晴らしい。

ほんとにふわふわしてる感じがしますね。


⭐️17. 白猿

金地に墨。なのだけど、猿は白く描かれている。

どことなく人間みたいな表情。


⭐️20. 猿乗駒

馬に乗る猿!

もうシチュエーションだけでいい絵になるところを稜線の墨の使い方の上手さったら。

猿はほぼ墨線をメインで描いている。

馬はほぼ稜線を用いているがお腹の部分だけ稜線はない。

でも、見ててしっくり来るんですよね。


⭐️21. 家兎

ぼかした墨が毛並みのフカフカした感じを上手く出せています。

あと、意思のある眼差しがたまりません。

野に生きるものの野生を覗かせています。


⭐️22. 春宵

蕪とネズミ。

蕪の稜線がよく見るとグレー。

これ、結構難しいと思うのです。

あと、ネズミがかわいくない。

手の感じだとかはちょっと怖いなあと。


⭐️27. 二龍争珠

二匹の龍。

ぱっと見、位置関係がわからなくなる。

銀泊に描いてるのは大正解。

龍の墨と合ってばっちりきまっています。


⭐️32. 鵜飼図

金地に墨で描かれた六曲一双。

墨で描かれているが鵜はベタ塗りではなくパーツをちゃんと描いています。

大きく翼を両に広げた鵜はどーだーって感じが面白い。

右隻の使い方が大胆。

一番左は金地のみ。

その隣には鵜の取ってきたお魚。

よく見ると一匹だけ箱から落ちている。

見開いた目がぬぼうとしてておかしい。

水の流れ、篝火から立ち上る煙。

この2つの線の淡い描写もよろし。


⭐️38. 蹴合

栖鳳お得意の軍鶏。

向かい合う二羽の軍鶏。

どちらも飛んだ瞬間で互いの脚を蹴り上げている。

気になったのはその表情。

なんて言うんだろう。

全てを超越した落ち着きのようなものを感じました。


⭐️42. 家鴨

以前に山種美術館で見た家鴨と別バージョン。

後ろに無造作に放り出された脚の感じがかわいらしくもあり、生々しいもあり。


⭐️43. 観花

これ、たぶん他の展示でキャプションがなかったらとても竹内栖鳳の作とは気付かないですね。

傾いでしなを作る骸骨!

その手には緑の扇。

タイトルにある花はすでに散り、はらはらと舞う花びらよ。

世は常ならず。そう、言われているかのよう。


⭐️45. 高士観瀑図

ハケのエッジのたった筆致が活きています。

崖の切り立ったシャープネスがお見事!


⭐️50. 瀑布

シンプル!

最小の手数で仕上げています。

画面における白い部分が多く、画力の高さを伺えます。


⭐️56. 風濤

べっとりとした白い波頭。

正面から捉えたアングルと相まって迫力があります。

波頭の下のブルーを抉ったかのような線が印象的。


⭐️73. スエズ運河

なんと栖鳳が描いた唯一の油彩。

当時、海外に行ってこういう絵を描かれてたとは。

いつもの日本画のトーンとはまるで異なります。


⭐️79. 百合花

稜線とその中の塗りがずれていて逆にその按配がよいバランス。ぷっくりとしたフォルムが可愛らしい。


⭐️S-2. 年表屏風

なんと昭和18年に高島屋で開催された竹内栖鳳回顧展の際に制作されたもの。

まさか年表もこんなに値打ちのある年代物を見られるとは!

筆で書かれた印刷ではない文字が新鮮でした。


かなり充実の展示でした。

現在は後期展示、8/30(日)まで。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする