あお!ひー

叫べ!いななけ!そして泣け!雑多なことを書いてみる。

生誕300年記念 若冲展(東京都美術館)

2016-04-27 22:57:23 | アート系

若冲とあらばどこまでも!

それくらいの気持ちになってしまいます。

ちょうど10年前、お正月の東京国立博物館で水墨で描かれたタマゴ型の鶴に出会ってからというものあっという間でした。

その後、三の丸尚蔵館での「動植綵絵」を皮切りに、プライスコレクションでの「鳥獣花木図屛風」、MIHOミュージアムでの「象と鯨図屏風」と追いかけてきました。

そして、今回の生誕300年記念 若冲展。

2007年に相国寺承天閣美術館で見てから9年。

「釈迦三尊像」3幅と「動植綵絵」30幅が一堂に会します。

こんなに嬉しいことはありません。

というわけで昨日、休暇を取得して参戦してきました。

会場に到着したのは12時20分頃。

すでに門のところまで行列が出来ていました。

入場までの時間が記載されたプレートには非情にも80分の待ち時間が。

というのも日曜の夜にNHKで今回の若冲展に絡んだ内容の番組を放映したばかり。

翌日4/25は休館となっていたのです。

まあ、あれを見ちゃうと多くの方が来場されるのも納得です。

なんとか日差しと暑さを乗り越えて会場になだれ込みました。

まあ、中もすごいひと。さーて、どうしよう。

と考えてるうちに同行していた奥さんを見失ってしまいました。人が多すぎてどこにいるかわかりません。一応、後で待ち合わせはしたので大丈夫かなあと割り切って鑑賞スタート。

今回は地下1階、1階、2階と3フロアを使った構成。

まずは見られるところをがんがん行ったほうがいいだろう。乗興舟はものすごく混んでてパス。

地下は鹿苑寺の襖絵をザっと見てあとは遠目にし1階へ上がります。

うーわー!!

「釈迦三尊像」を正面に据えてその左右を15幅ずつの「動植綵絵」が円形に並びます。

会場にはリストの図面にも描かれているように3本の柱が中央に聳えていて、中に入ると真ん中の柱が邪魔してお釈迦さまが見えません。

最初はこの構成がよろしくないなあと思って見てたのですが、奥に踏み入って初めてその姿を拝めるというのはこれはこれで有り難みがあるなあと思うようになりました。

それにしても圧巻でした、このフロア。

以前にも「動植綵絵」は3回見ていますがここまで近くで見たのは初めてかと。

ガラスからの距離が15~20センチ程度でしょうか?「動植綵絵」に限らず他の作品もそうですがほんとに近くてどれほど細密に描かれているのかがよくわかります。

「動植綵絵」については柵みたいなガードがあるもののそれでもかなり近くてくらくらしちゃいました。

さて、お次は2階へ。

菜蟲譜がものすごいひとだかりでせっかく全編を一度に見られる機会だけどもまずはスルー。

「池蓮図」の寂しい画面が印象的、ラストはプライスさん所蔵のコーナー。

とまあ、最初一時間はこんな感じでした。

若冲についてはこれまでに何度もみてるので個別の作品の感想はかなり偏ってしまうかもしれませんが書いてみたいと思います。


5.糸瓜群虫図

植物と虫たちがなんともいい!

世界の調和をとてもシンプルに描いてる。やはり仏教のひとなのだなあと。虫たちへの目線のなんと優しいことか。


11.旭日鳳凰図

どれもすごいのだけどもこの豪華さはちょっと抜きん出てる。動植綵絵は一揃えだから別として。

単一の作品としての盛り込み具合はちょっと異様。

鳳凰だけでもくらくらしちゃうのにあの独特の波頭のフォルムがたまりませんね。


18.達磨図

今回見た中で数少ない初見。

パッと見だと口のフォルムが独特で面白いものだと思ってみたらさにあらず。

近付いて見てみるととても怖い荘厳な表情。距離でこうも印象が違うとは。


21.竹虎図

▲で描かれた竹が圧巻!

もう抽象でしょ。勢いでもってってる。かなりの力技。

こういうあさってのところから不意打ちくらう感じ、たまりませんね~。


続いて1階へ。


2-2.動植綵絵 老松白鳳図

このレースみたいな白には目が釘付けになりますね。

裏彩色、輪郭線なしで得られるこののトーン。


2-14.動植綵絵 牡丹小禽図

牡丹がなんとも艶かしい。

こちらに迫ってくるかのよう。色香ただよう。


2-14.動植綵絵 紫陽花双鶏図

鶏のつがいのそれぞれのポーズと表情がお見事。

描写は細密で一見、リアリズムっぽいのだけども実際の鶏は出さない表情がここにある。


2-20.動植綵絵 雪中錦鶏図

雪の白と、歯の虫食いのようなフォルム。

錦鶏の赤が艶やかで美しい。じっくりと見入りました。


2-27.動植綵絵 蓮池遊魚図

動植綵絵の中で個人的に一番好きな作品。

美しい絵なのだけどよおく見てくとその構成がとてもおかしいことに気付いてしまう。

このお魚たちはどういう状況なんだろう。

蓮のお花が回りを囲んでいる。これはどういう視点??

若冲って位相と空間がおかしくなるようなのをいくつか描いてて、見てやられた~って気になる。


2-30.動植綵絵 桃花小禽図

以前に見た時にそこまで印象に残らなかったのだけどもすごく気に入ってしまいました。

桃色と白の花。白と青の鳥。

控えめそうに見えて画面全体が調和を保ったままこちらに向かってくる静かな迫力。シンプルだけども面に力を感じました。


動植綵絵には迷いなき強い信心を感じました。

自分の帰依する仏教のためにやろうと。

それでこの33幅なし得る持続力、構成力。それが今もそろいで残ってる。応挙も狩野派の絵師もこういうボリュームとクオリティで作品を生み出して現存しているというのは無いと思うんですよね。

さて、最後は2階へ。


7.雪梅雄鶏図

雪のところの稜線がグレーなんですよ。

これは若冲の他の作品には見られないように思います。


37.三十六歌仙図屛風

岡田美術館、いいの持ってるなあと。

人物の生き生きした感じとやってることの可笑しさにふいちゃいます。

売茶翁像みたくちゃんとした肖像も描くのにコミカルなものもちゃんと味わい深かったり。

ほんと引き出し多いです。


46.虎図

かわいい~。

なのにものすごく細かく描かれた毛。

虎の上の木は水墨でこっちはまるで違ったトーン。


とけっこうざっくりですがこんな感じでしょうか。

GW前の平日でこの混雑です。

会場内はひとでごった返してて巻物の「乗興舟」と「菜蟲譜」は全部見られませんでした。

予め公式ホームページに掲載されたリストで気になるものを見ると決めて行くのもよいかもしれませんね。

5/24まで。

<おまけ>

今回の図録です。鶴がいいでしょ。

ショップもかなり混雑してるのでもし図録だけであれば中庭の臨時売店で購入可能なのでそちらがよいでしょう。こちらはすぐに購入出来ました。

あとクリアファイルなども若干、在庫していました。


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ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想-後期展示-(府中市美術館)

2016-04-17 12:14:39 | アート系

(府中市美術館)ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想-後期展示-


毎年、春となると府中市美術館は素敵な展示をやってくれてました。今回から「春の訪れ江戸絵画まつり」と銘打つこととなりました。これからも毎年春にやってくれるとお墨付きを頂けたみたいで嬉しいですね。


さて、今回も気になった作品について書いてみたいと思います。冒頭のナンバーはリストの番号となります。



3.柴田是真「三日月図」

漆でなくって水墨なのだけども雲の部分がとてもよい。フォルムといい濃淡といい美しい。




14.円山応挙「雲峰図」

シンプルなフォルムだけで描く雲。

この時代によくもこういうアプローチをやってのける。

もくもくと立ちあがるフォルムが玉堂のファロスタワーにもつながってるかなあと。


33.岡本秋暉「日々歓喜図」

このタイトル、メモを見返してしまった。作品と繋がらない。

波の上を群舞する蝶たち。

波の線が黒で描かれていて手前はくっきり、奥にいくにつれてだんだん薄くなっていってる。

蝶は白で描かれていて波の描写とうまく合っている。


71.鳥居清長「金太郎」

クマがかわいいのはもちろんなんだけど、手前のカラス天狗がかわいい。


73.魚屋北渓「山姥金時図」

山姥の乳を飲む金太郎。

目を奪われたのはその背景。

山の断崖絶壁の線がエッジが立っててキレッキレの描写。


79.鳥文斎栄之「孟宗図」

竹の葉の凛とした佇まいに惹かれる。

光の差し込む部分の斜線が白で飛んでてそこに竹は描かれていない。


93.田公実「竜・虎・鷹・鯉図」

中でも虎と鷹の目ヂカラが半端ない。

絵としては虎図が一番よく描けてる。なによりもその細かい毛並み。一本一本細密に描いていて目が釘付けになる。のだけど、お手手はなんともかわいらしくてギャップがおかしい。


107.高井鴻山「妖怪図」

線が安定してしていない。ブレてるというかビリビリしている。

さかざきちはるさんのSuicaペンギンに見られるビビり線の周波を変えたというような感じ?
絵の見た目の印象からいったらまったく繋がらないのだけども。

異様なキャラのオンパレードがこの筆使いで描かれていることで妙な存在感を放つ不思議。


91.伊藤若冲「亀図」

亀自体は薄い墨で甲羅が筋目書きで描かれてる。なんともかわいらしい。のだけど、そこはやっぱり若冲。

後ろに伸びる毛の豪快な筆さばき!勢いがありまるで違うテイスト。こういう両極を一枚に収めてしまう。流石です!


121.東東洋「煙霞山水図」

三幅対なのだけど真ん中に描かれている馬上の人物に強く惹かれた。後ろ向きで笠と着物のみ。

顔どころか首さへもない。本当にこの人は存在してるのだろうか?そんな風に思ってじーっと見つめてました。
実は今回、一番好きな作品でした。


153.長沢蘆雪「蓬莱山図」

いびつ!なんだろう?この安定を放棄したかのような非日常感。

やはり蓬莱山という神秘の領域を表すにはこうするしかないと思ったのか?


109.「柳橋水車図屏風」

同じモチーフの屏風は以前にも見てるけどカラーリングがよいなあと。

基本、橋や水車、雲は金なのだけど、水が茶色というのがなんとも意外。

柳の枝のカーブが木をまあるく見せてて面白い。


111.土佐光貞「吉野・竜田図」

画面の下半分を描いていない。

真ん中に紅葉と桜を、上方に書をもってくるバランスがなんとも粋である。


124.伊藤若冲「乗興船」

大典による文章がところどころはいる。

拓版による黒みの多い画面が記憶の向こうの景色という印象。

小さく描かれた人がのフォルムがなんともよい。


125.長沢蘆雪「朧月図」

墨だけで描いた月。画面上方に雪がちらついてる。

なんともかわいらしい。


149.葛飾北斎「富士越竜図」

富士山の稜線がけっしてシャープではないのだけども角度とカーブが絶妙。すっごくかっこいい。



とまあ全部は書けませんがけっこう気に入った作品が多かったなあと。


会場にはリストの他に画家解説のプリント(なんと8ページ、ホッチキスどめ)と、「ファンタスティックたんけんたい」なるお子さん向けのカラーのも。


「ファンタスティックたんけんたい」はちゃんとやっておけばよかった。大人でも気づかないところがあるので要チェックですよ。


あとこんなのもありました。月が予め印刷されているハガキに用意されているハンコを自由に押すのです。

お一人様一枚限り。うさぎさんを押してみました。こういうのはやっぱり嬉しいですね。

さて、毎回のことなのですが、この江戸絵画まつりにくると思うのですよ。

見終えてなんと満足度の高い展示だったなあと。

また来年も行きたいですね。

5/8まで。

<江戸絵画まつり関連記事>
2013年「かわいい江戸絵画 後期展示(府中市美術館)
2012年「三都画家くらべ-京、大坂をみて江戸を知る
2009年「山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年
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