小杉放庵記念日光美術館で開催中の「生誕150年記念 竹内栖鳳展」に行ってきました。
目録を見て気づいたのです。
あれ?
山種美術館の所蔵作品がまるでない!
というか、殆どが海の見える杜美術館所蔵。
ということは自分がこれまでに見たことのない栖鳳の作品にお目にかかれるということ。
前期後期入れ替えの後期展示がちょうど今日から始まったところ。
今回の展示は「作品保存と会場規模の制約により」60点余が日光会場では出品されないとのこと。
これは少し残念。
とはいうものの、小さな会場に溢れる珠玉の数々。
堪能いたしました。
気になった作品について書いてみたいと思います。
(番号はリストのものです)
⭐️09. 薫風遊鹿図
この鹿の表情の気高さ。
奥の景色は水墨のモノトーン。
手前の草はカラーでしっかりと描かれています。
彼岸と此岸に見立てた間に佇む、神の使いってとこなんでしようかね。
⭐️11. 猛虎図
こんな虎見たことない!
墨で描かれたヒョロヒョロとした細い毛の描写。
ちょっと他にない感じで見入ってしまいました。
若冲のこれでもかと細密に描いてたのとはまるで違うアプローチです。
⭐️12. 獅子図
これ、かなりおかしな絵でした。
目はかなり横を向いているというのに、口はほぼ正面を向いている。
しかも口のあたりの描写はかなりざっくり。
ふと山口晃さんの「ヘンな日本美術史」に登場した慧可断臂図に描かれた達磨を思い出しました。
「目は正面から、耳は後ろから見た形で組み合わされており」という構成は近しいものを感じました。
⭐️15. 小春
これぞ栖鳳の猫。
白い毛並みの立体感が素晴らしい。
ほんとにふわふわしてる感じがしますね。
⭐️17. 白猿
金地に墨。なのだけど、猿は白く描かれている。
どことなく人間みたいな表情。
⭐️20. 猿乗駒
馬に乗る猿!
もうシチュエーションだけでいい絵になるところを稜線の墨の使い方の上手さったら。
猿はほぼ墨線をメインで描いている。
馬はほぼ稜線を用いているがお腹の部分だけ稜線はない。
でも、見ててしっくり来るんですよね。
⭐️21. 家兎
ぼかした墨が毛並みのフカフカした感じを上手く出せています。
あと、意思のある眼差しがたまりません。
野に生きるものの野生を覗かせています。
⭐️22. 春宵
蕪とネズミ。
蕪の稜線がよく見るとグレー。
これ、結構難しいと思うのです。
あと、ネズミがかわいくない。
手の感じだとかはちょっと怖いなあと。
⭐️27. 二龍争珠
二匹の龍。
ぱっと見、位置関係がわからなくなる。
銀泊に描いてるのは大正解。
龍の墨と合ってばっちりきまっています。
⭐️32. 鵜飼図
金地に墨で描かれた六曲一双。
墨で描かれているが鵜はベタ塗りではなくパーツをちゃんと描いています。
大きく翼を両に広げた鵜はどーだーって感じが面白い。
右隻の使い方が大胆。
一番左は金地のみ。
その隣には鵜の取ってきたお魚。
よく見ると一匹だけ箱から落ちている。
見開いた目がぬぼうとしてておかしい。
水の流れ、篝火から立ち上る煙。
この2つの線の淡い描写もよろし。
⭐️38. 蹴合
栖鳳お得意の軍鶏。
向かい合う二羽の軍鶏。
どちらも飛んだ瞬間で互いの脚を蹴り上げている。
気になったのはその表情。
なんて言うんだろう。
全てを超越した落ち着きのようなものを感じました。
⭐️42. 家鴨
以前に山種美術館で見た家鴨と別バージョン。
後ろに無造作に放り出された脚の感じがかわいらしくもあり、生々しいもあり。
⭐️43. 観花
これ、たぶん他の展示でキャプションがなかったらとても竹内栖鳳の作とは気付かないですね。
傾いでしなを作る骸骨!
その手には緑の扇。
タイトルにある花はすでに散り、はらはらと舞う花びらよ。
世は常ならず。そう、言われているかのよう。
⭐️45. 高士観瀑図
ハケのエッジのたった筆致が活きています。
崖の切り立ったシャープネスがお見事!
⭐️50. 瀑布
シンプル!
最小の手数で仕上げています。
画面における白い部分が多く、画力の高さを伺えます。
⭐️56. 風濤
べっとりとした白い波頭。
正面から捉えたアングルと相まって迫力があります。
波頭の下のブルーを抉ったかのような線が印象的。
⭐️73. スエズ運河
なんと栖鳳が描いた唯一の油彩。
当時、海外に行ってこういう絵を描かれてたとは。
いつもの日本画のトーンとはまるで異なります。
⭐️79. 百合花
稜線とその中の塗りがずれていて逆にその按配がよいバランス。ぷっくりとしたフォルムが可愛らしい。
⭐️S-2. 年表屏風
なんと昭和18年に高島屋で開催された竹内栖鳳回顧展の際に制作されたもの。
まさか年表もこんなに値打ちのある年代物を見られるとは!
筆で書かれた印刷ではない文字が新鮮でした。
かなり充実の展示でした。
現在は後期展示、8/30(日)まで。