4日前の日曜日、アート解放区DAIKANYAMAは2日間の会期を無事に終えることが出来ました。
多数、ご来場頂き誠に有難うございました。
というわけで恒例の作品解説です。
会場で少し留まってみて頂いた方はお引止めしてご説明差し上げましたが、パッと見で「❓」となった方はそのままこの作品がなんなのか分からなかったかもしれません。
今回は実はとても変則的な展示となっていました。
というのも2つの異なる作風を左と右で振り分けていました。
向かって左が一眼レフで撮影した解像の高いもの。
そして、向かって右はセンサーの小さいコンパクトデジカメで撮ったぼやけた作風のもの。
まずは左サイドから。
向かって左の縦の3枚連作は上から「陰陽1」「陰陽2」「陰陽3」。
この3点については今年4月〜5月にかけて東京藝大で開催された「東京インディペンデント2019」に出品した7枚組の上部になります。
「東京インディペンデント2019」はご覧頂いた方には分かると思うのですが会場全体がカオス空間でどこまでが誰の作品なのかすらまともに分からないという有様でした。
さらに拙作は壁の少し高い位置にあったため距離があり画面の詳細を見て頂くのは厳しい状況でした。
(自分としては長辺70センチ超のかなり大きなサイズにしたつもりでしたがそれでも会場で見ると決して大きいとは感じられないスケール感でした)
面白かったのはこの3点の種明かしをした後の感想。
解説を聴いて頂いた方のほとんどの方が「面白い!」とおっしゃってくださって嬉しかったです。
写る像面は電車のドアの窓に貼られたステッカー。
このステッカーは何故だか車両の外側に貼られていて、雨と風の影響を直に受けています。
さらに列車の運行するエネルギーもその画面の劣化を手伝っているのです。
ステッカーはひび割れて、その浸食は今日も刻々と進んでいるのです。
この3店は車両の中から撮影しています。
本当ならこの黒いバックはクリーム色でドアの開閉についての注意が書かれています。
撮っているのは文字のない箇所で大きさはわずか2㎝×1.5㎝ほどの小さな個所なのです。
バックが黒くなっているのは露出を落としているから。
こうすることで本来から削れてしまって何もないはずの箇所に背面から光が差し込むことで実体のないはずのところにあたかも線があるかのように見えてくるのです。
線の色が銀色なのはこの裏面が銀色で削れて浮かび上がってるから。
また「入」の形になっている太い線についてはこの銀色が裏から差し込む光に反射して、あたかもそこに実際に線があるかのようにみえるというわけなのです。
続いてはこちらの4点。
上段、左から「出現」「うわばみ」
下段、左から「叢雲」「断烈」
「出現」
川面に出現した人の頭みたいに見える何者か。
その正体は水鳥。潜っていた水鳥が水上に上がってきたところ。暗くて見えずらいですがこの黒い丸の上にこの鳥の頭が見えます。
つまりこの黒い丸は鳥の胴体だったのです。
「うわばみ」
こちらは昨年のニューヨークアートブックフェアと今年の8月に参加した台北オークションセンターでの Photo Salon Summer 2019に出品した作品です。
国内の展示に登場するのは今回が初。
こちらも川面。
周囲の看板などの風景が写り込んでこんな像面が撮れたりするのです。
「叢雲」
こちらも「うわばみ」と同様に川面。
ところがこちらは川面に見えない人が多かったです。
決して綺麗とは言えない川。そこに消費者金融やパチンコ店などの看板が映り込む。でもこうやって切り取ることで作品として良い案配に収まる不思議。
「断烈」
本当なら「断裂」となるべきところをあえて「断烈」としました。
自分としてはものすごく珍しくストレートに撮影した一枚。
台風で折られた木の断面。台風はたくさんの被害をもたらす忌むべき存在だけれども、この光景を見て思ったことは素直に「美しい」なと。
そして、自然の力というのはすごいものなのだなあという畏怖の念と。
この左側の作品はテーマがあって、「生成される風景」なのです。
それは通勤電車の窓の中にひっそりと醸成されてたり、普段通りすぎる川面の気づかない模様であったり、台風によって作られたエネルギーの彫刻だったりするのです。
続いて右側のほう。
左上段から「22:45」「candy」
続いて左下段から「夜ヲ泳グ」「SHYNESS 2」「鬼火」
右上段「figure」その下が「ガードマン」
「22:45」
うまいタイトルが思い浮かばず時刻ならよいかなあと。
カラーだけどモノクロに近いトーン。
写る人影に何を想うかは見る人次第。
「candy」
クレーンゲームの景品ってキラキラしてる。
その印象の鮮烈さを出せてたらなあと。
「夜ヲ泳グ」
普通、鯉のぼりは縦に伸びたポールに結ばれてて横に泳いでいます。
あとイメージとしては昼間の青空。
だからこの夜で縦に泳ぐ鯉のぼりにはどこかいつもとは違う感じがするのかもしれません。
「SHYNESS 2」
2011年に発表した「SHYNESS 」のパート2。
バラのピンクは恥ずかしがり屋さん。
「鬼火」
タイトルは火とつけてあるけれどもその実体は水。
光と水、本当は奥行きがあるのだけれども解像の低さがうまくウソついてフラットな画面に。
「figure」
電光の看板。びかびかと光って文字が流れてく。
一瞬、文字が変わる瞬間に文字ではないフォルムに変化したところ。
なにかの像に見えてしまってこのタイトルに。
「ガードマン」
かなりぼやけたトーンですが見立てではなく、本当に夜の街角で交通整理されてるガードマンの方。
期間はたった2日だったのですが両日とも終日在廊してかなり濃密な時間でした。
入口近く、大きな窓から自然光の降り注ぐ空間で展示出来たのはかなりの贅沢。
もっとボードを作品で埋め尽くすことも出来なくないのですがやはりちゃんと鑑賞出来る高さと大きさを考えるとこのくらいがよいのかなあと思う次第です。
今回は幸い2点が売約となりました。有難いことです。
この2点以外はまだ手元にありますので販売可能です。またエディションが2/5であればこの2点も制作可能です。
ご希望であればお問い合わせくださいませ。
さて、また次回もよりよい展示が出来るよう精進いたします。