ミヅマアートギャラリーで開催中の鴻池朋子展「隠れマウンテン&ザ・ロッジ」をみてきました。
このチラシのメインビジュアルの作品の実物がどうしても見たかったのです。
ビルに入ると階段のところから物語はスタートしていました。
<山の入口>なる一枚の紙が貼られてて、ここが自然と人間世界の境界であることが示されている。
さあ、階段をあがって2Fへ。
山よろしく「2合目」なるプレートもご愛嬌。
いつものミヅマの手前の部屋はこのチラシの作品だけがでっかくどーんと聳えたっていました。
山に顔。ヘタをするとすごくちゃちくなってしまいかねないところ。
しかし、印刷されたビジュアルですら伝わってくる気迫はオリジナルではそれ以上でした。
もっと横に広くなっていて、襖が4枚。実際に開くのだと思う(さすがに試してません。)。
顔が描かれてはいるもののそこのとを除けば、引きでとらえた山の風景です。
ところがくせ者なのが画面手間を横切る、草のような線。
ひらりと舞う姿は時に人のようにも見えて、なんだか岡本太郎ちっくだなあとも感じました。
さて、じっくりと眺め奥の部屋に行こうと向こう側へ足を進めてみたところ、またまたとんでもないのが控えていました。
なんとこの襖の裏側にも絵が描かれてたのです。
しかも、全然違うタイプ。
真っ暗な宇宙に浮かぶ、脳髄。
脳髄からスパークするように左右に放たれるクリスタルの如きもの。でも、それはキラキラとした水晶だけでなくって内蔵じみた器官と一体に形成されている。
チラシにあった下記の文章を思い起こす内容です。
「もしできることなら観客は誰でも作家のひたりを開いて、脳の中に入り込んで、その中の森を見てみたいものなんですよ。それができるならどんなに素晴らしいか。」
これは鴻池さんが何気なく観客から言われたひとことだそう。
まさにそのイメージですね。
今回、このふすま絵だけでお腹いっぱい。これだけで成立しちゃいますね。
でも、さらに作品はつづいていきます。
奥の部屋には細密なドローイングが4点。
「月 2008」「狐 2008」「筋男 2008」「翁 2008」
筋男が印象に残ったかな、この中だと。額の傷とじっと睨む目、ぱっつんな前髪。そして、外した能面。
あと、インクジェット出力の「ゆきんこ 2008」が展示されていました。
おんなのこの被ったフードが雪山になってます。よく見ると6本足のオオカミがいました。
さて、2階を後に山を、もとい階段を上っていきます。
「5合目」「7合目」のプレートを越えて、ついに5Fへ。
踊り場にはイントレで支えらた上に雪山での救急用の人体運搬そりが。
赤いロープでぐるぐる巻きにされた人体。
山頂はすぐそこ。でも、油断するなってこと?
5Fの展示は意外にも標本箱に一枚一枚収められた、絵本原画「World of Wonder」。
観客を誘導するように会場の奥へと物語がひっぱってくれます。
やはりこういう細かい描き込みが必要な作品は圧倒されますね。
描かれてる散文もイメージを広げてくれる。
5階の受付では「隠れ山登山マップ」なるものが頂けます。
右にふすま絵にあった山に顔が出てますが、これはスタンプなのです。自分で押すのって実感があっていいんですよね。
ちゃんと、隠れ山登頂記念と入ってます。
今回は横にある屋上スペースも展示として使っていました。
なんと、八木良太さんとの共同制作「リングワンデルング」。
リングワンデルングとは、だだっぴろい高原や雪原などで、ガス(濃霧)や吹雪に巻かれたときに、方向を見失って周回運動(元の場所に戻ってくること)をすること。
つまりこういう場合にはテントで緊急露営をするということで、屋上にテントがひとつ。
寝転がって見上げた先には映像が流れています。
星。真っ黒な空に浮かぶ白い点。画面が迫ってくると、なんとこの点がドット「.」やピリオド「,」になってるんです。
星空を彷徨う最中、画面には文字が。フランス語?同時に訳された日本語の字幕が下に。
「とげはいったいなんの役にたつの?」そういった問答のようなリリック。
その合間にナイフがくるくると宙を回転して画面を横切ってく。
無限のイメージ。果てしなくどこまでも続いてく。
でも、それは隠された山のように内側に向かってなのかもしれない。
見た後に納得したのはリリックが「星の王子様」の王子の質問のみを抜き取ったものだということ。
さて、ついに山頂です。
かなり低い位置にある襖をくぐるとそこに山頂がありました。
この入り方、身を屈めないと入れないあたりが茶室ちっく。
山の頂上だけの造形。そしてその上に雲と霧のイメージな白い布状のものが集まっている。
中央には繭のような物体があって、よく見ると足が。やはり、こちらも人体でした。
チラシにあった「一番いいたいことは山に隠してある」。
この言葉のとおりだったんですね。
観客としてはそれが知りたくて、また通ってしまうのです。
想像してた以上に見所が多くてよかったです。
5/17まで。