杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ローマ法王の休日

2013年02月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年7月21日公開 イタリア=フランス 104分

現ローマ法王の訃報に接し、新しい法王を選出するために各国からヴァチカンへ枢機卿たちが招集される。システィーナ礼拝堂で投票が行われるが、枢機卿たちは心の内では重責を担う法王に選ばれたくないと一様に思っていた。投票の結果、メルヴィル(ミシェル・ピッコリ)が選出される。すでに聖ペドロ広場には新しい法王の就任を祝いにきた人々で溢れかえっていた。就任の演説が控えていたが、メルヴィルは重圧から逃げ出してしまう。新法王が行方不明になったのを知った事務局広報は、そのことが公にならないよう画策し、街中を捜索する。一方ローマの街に逃げ込んだメルヴィルは、市井の人々と触れ合ううちに、人生における大切なものや信仰心、なぜ法王が必要なのかなどを見つめ直していく。(goo映画より)

もっと明るいコメディかと思ってました。予告もそんな風に作られていたと記憶してます。
でも・・違うのね意外に真面目に人生を考える作品でした。

コンクラーベで選出された新法王が、その責任の重さに怖気づいて、自分はその重責に相応しい人間ではないと逃げ出してしまいます。そもそも信仰心の篤い枢機卿クラスが多々集まる中で、いかに心理的駆け引きの谷間で生まれた法王とはいえ、それなりの覚悟を期待するのは買いかぶりなのかしら?それに枢機卿たちの誰もが法王に選出されませんようにと本音で思っているというのもなんだかなぁ。

もちろん、突然降ってわいた地位に恐れをなす気持ちはわからなくもないし、信仰心があるからこそ、その場でNO!と言えず(神から選ばれたに等しいのですから)一度は「シー=はい」と返事をしたのでしょう。けれど心は正直で、現実に押しつぶされる前に気持ちがブロックしてしまったという生身の人間故の葛藤ということでしょうか。

ローマの町に逃げ出したメルヴィルが、市井の人たちと交わることで自分の使命を自覚するのかと思って見ていたのですが、そういうありがちな展開にはならず、逆に残された枢機卿たちや法王の治療のために呼ばれたセラピスト(ナンニ・モレッティ監督自身が演じているのね)の様子に焦点が当てられます。枢機卿たちの世間知らずで時代遅れな感覚がちょっとコミカルに描かれています。(隔絶されているのだから当然ではあるけれど)世間の騒ぎをよそに、無邪気にバレーに打ち興じている枢機卿たちの笑顔につい和んでしまいました

一方苦境に立たされたのが広報官(イェジー・スツール )です。粛々と進む筈だったセレモニーが台無しにされたばかりか、よかれと思って町のセラピスト(最初に呼ばれたセラピストの元妻)に連れて行ったら逃げられてしまうのですから。どんなに腹が立っても相手は法王ですからあくまで穏やかに従いつつも次第に懇願の度を強くしていくの。衛兵を法王の部屋に置いて枢機卿たちを誤魔化す苦肉の策に出たり、メルヴィルを連れ戻すための最終手段の奇策を提案したり・・・客観的には笑えるエピソードですが、個人的には彼に激しく同情しちゃいますね。

連れ戻されたメルヴィルがいよいよ腹を決めたまでは良いのですが、それってやっぱりダメなんじゃな結末にちょっとあっけにとられてしまいました。
この映画はカトリック信者への冒涜と受け取られないかとか余計な心配をしちゃいます
だって、枢機卿たちが法王に選出されたがってなかったり、不眠を囲って薬に頼っていたり、果てはセラピストが聖書に書かれている事柄をうつ病の症例だと読み説いたりするんですものね。

身の程を知ることは大切。例えどんな大物でも凄い立場の人でも。ん?まてよ・・だからこそ出来ないことはできないと素直に認めることができるって素晴らしいと受け止めたらいいのかしらん?う~~ん・・

(追記)
本日(2013.2.12)現ローマ法王が今月をもって退位のニュースが
85歳という高齢で職務を果たすのが難しくなってきたことが理由とのこと。
存命中の退位は600年ぶりの出来事らしい。
この映画、あながち絵空事でもないのかも

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