杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

エリザベート 1878

2024年04月21日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年8月25日公開 オーストリア・ルクセンブルク・ドイツ・フランス  114分 PG12

ヨーロッパ宮廷一の美貌と謳われたオーストリア皇妃エリザベート(ビッキー・クリープス)。1877年のクリスマス・イヴに40歳の誕生日を迎えた彼女は、コルセットをきつく締め、世間のイメージを維持するために奮闘するも、厳格で形式的な公務にますます窮屈さを覚えていく。人生に対する情熱や知識への渇望、若き日々のような刺激を求めて、イングランドやバイエルンを旅し、かつての恋人や古い友人を訪ねる中、誇張された自身のイメージに反抗し、プライドを取り戻すために思いついたある計画とは——。(公式HPより)


ヨーロッパ宮廷一の美貌と称されたエリザベートの40歳の1年間にスポットを当て、若さや美しさという基準のみで存在価値を測られてきた彼女の知られざる素顔を大胆な解釈で描き出す。(映画.comより)

エリザベートはバイエルン王国ミュンヘンで、バイエルン公マクシミリアンと王女ルドヴィカの次女として生まれ、16歳でオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフに見初められ結婚しましたが、自由奔放な性格でウィーン宮廷の伝統と格式を重んじる生活と合わず息苦しさを感じていたようです。

映画はウエストを締め上げるシーンから始まりますが、体重の増減が新聞記事になるほど常に国民の関心を集めていたことがその理由だったわけね。

40歳を迎えたエリザベートは美貌の衰えを気にして苛立っています。夫のヨーゼフ(フロリアン・タイヒトマイスター )は、彼女に〝象徴〟としての美しさだけを求めています。政治に口を挟まず黙って従っていればよいという夫に彼女は不満を抱いています。それでも無意識に象徴としての美の衰えを気にするあたりは矛盾していますが、女性として共感もあります。

記念式典の大臣たちの挨拶にうんざりしたエリザベートは気絶した振りをして退出します。宮殿に戻った彼女が滞在中のいとこルードヴィヒ2世(マヌエル・ルバイ )にその様子を可笑し気に話している親密な雰囲気に夫のフランツはやきもきします。

誕生日直前に旅行に行きたいと言い出したエリザベートは侍女イーダ(ジャンヌ・ヴェルナー)にたしなめられます。部屋に入ってきた娘のヴァレリーにハンガリー語で話すよう命じ、体型維持に余念がない様子。
40歳の誕生祝賀晩餐会では、周囲に促され嫌々ケーキのろうそくを吹き消します。ここまでのエピソードはどれをとっても我儘にしか見えませんね😝 

彼女が唯一自ら続けているのは精神病院の慰問ですスミレの砂糖漬け菓子を患者たちに配り、院長に温浴療法を取り入れるよう勧めます。あれ?ただの我儘皇妃じゃなさそう😜 

と思ったら・・・寝付けない彼女は、娘を無理やり起こして服を着せ嫌がる娘を乗馬に連れ出します。案の定高熱を出してしまった娘を見て、フランツは身体の弱い子に気まぐれで無理をさせたと叱責します。彼らは当時2歳の長女ゾフィーを亡くしていました。父親としてはもっともな怒りだと思うなぁ。😔 
夕食は別にとり早く寝てしまった夫に怒ったエリザベートは息子ルドルフ(アーロン・フリース )と早めに旅行に出かけてしまいます。娘は置いていくよう言われた。これもまぁ仕方ない気がするけど😔 

エリザベート一行はイングランド・ノースハンプシャーのスペンサー家のマナーハウスに滞在し、妹で両シチリア王妃マリー(リリー・マリー・チェルトナー)からフランスの発明家のルイ・ル・プランス(フィネガン・オールドフィールド )を紹介され、動画撮影に応じて大いにはしゃぎます。
馬術家のベイ・ミドルトン(コリン・モーガン )と親し気に振る舞うエリザベートに、ルドルフが苦言を呈します。ベイが自分に夢中だと確認はしても受け容れることはしないのは自分の立場を一応は自覚しているということかしらん😧 
ひとりで遠乗りに出かけて落馬したエリザベートは愛馬の死(脚が折れた馬は苦しまないよう殺されます)に悲しみ憤り早々にオーストリアに戻ります。

落馬事故について気遣う夫と愛し合おうとしますが体を重ねるまでには至らず終わります。慰めを受けたくても感情がかみ合わない二人なのね。

シェーンブルン宮殿でイーダを無理矢理乗せて乗馬を楽しんでいる時、フランツが若い女性とふたりで歩いているのを目撃したエリザベートは、侍女フィニの服を借りてお忍びで市場へ出かけ、夫と歩いていた女性アンナと会話をします。

肖像画のポーズを取っていたエリザベーは、喫煙をフランツに見とがめられてしまいます。動画に興味のない画家と話しが合わず、若い頃の肖像画を模写するよう命じます。

公務のためウィーンを離れることになったルドルフは、父との考え方の違いに悩んでいて、自分は母親似だとエリザベートに打ち明けます。エリザベートも離れるのが寂しいと訴えます。
息子が母似なら娘は父似・・というか父を慕っている娘は母を批判的な目で見るようになっていきます。この構図、ある意味不変ですね😁 

フェンシングでフランツに手加減されて怒ったエリザベートは、ハンガリーについて意見をしてフランツを怒らせます。彼は彼女が政治に口を出さずにただ美しい皇后としていることにのみ価値を認めているのです。
感情の昂ぶったエリザベートは窓から身を投げますが、幸い足の怪我だけで済みました。しかしフランツは医者は呼びましたが見舞いにはきませんでした。喧嘩したとはいえどっちもどっちな対応だな。夫婦関係冷え切ってる?

怪我の療養でルードヴィヒ2世(バイエルン王)の別荘に滞在したエリザベートは、シュタルンベルク湖で船に乗ったり、夜はふたりでダンスや湖でシンクロのように踊って楽しい時間を過ごします。でも同性愛者の彼はエリザベートを受け容れることができませんでした。翌朝、彼は「湖で死ぬなよ、俺の湖だから」と声をかけます。気の合ういとこへの彼なりの気遣いの言葉ですね。😊 

バイエルンから戻る馬車の中で、侍女のマリー(カタリーナ・ローレンツ )が結婚を申し込まれていると話すとエリザベートは許可しないと答えます。長年仕え自分を理解してくれる者を手放すことができないわけですね。年増のマリーにとっては結婚の最後のチャンスだったのに😫 

ヴァレリーを連れて戦闘で負傷した兵士が入院する病院へ慰問にやってきたエリザベートはタバコが欲しいと訴えた兵士に自分のタバコを与え、自らも彼の隣に寝て喫いました。母の行動にヴァレリーは不快感を顕わにします。
病院を慰問したエリザベートを労うフランツでしたが、彼女の政治的発言に激昂し、テーブルを叩きます。彼女もテーブルを叩き返しました。

精神病院を訪れた彼女は、自分が提案した温浴療法が取り入れられているのを見学します。医師から医療行為としてヘロインを勧められ、(もう40歳だから)健康に気を遣うよう進言された彼女は舌を出します。この時代、ヘロインは「良薬」なわけですね。

ヘロイン注射とタバコの本数が増えていくエリザベートは、マリーを影武者に仕立てて行事に参加させます。食事を抜きコルセットで締め上げられベールで顔を覆って代わりを務めたマリーは戻るなり嘔吐し、エリザベートは急いでコルセットを緩めさせるのでした。エリザベートがそれほどに過激なダイエットと矯正をしていたという証拠でもあるのですね。

ある日、自慢の長い髪を自ら切ってしまったエリザベートに髪の手入れを専属でしていたフィニは号泣しますが、マリーは冷静に髪を拾い集め鬘を作るよう手配をします。エリザベートの姿に驚いたヴァレリーをバスタブで抱きしめ、寝室にやってきたフランツと愛し合うエリザベートでしたが、後日
アンナを呼び出した彼女は、皇帝の愛人になって自分の代わりに優しくしてほしいと穏やかに語ります。

マリーの影武者役は続き、エリザベートが左肩に錨のタトゥーを入れるとマリーにも同じものを入れさせます。

エリザベートは侍女のマリー、イーダ、フィニと大きな船で海に出ます。黒いドレスに小さなブーケを持ち甲板で海を見つめる4人はまるで葬儀のよう。ひとり舳先に向かって歩いていったエリザベートはそのまま海に身を投じるのでした。

オーストリア=ハンガリー二重帝国などの歴史&政治背景はよくわからないまま観てしまいましたが、自由な心を持ち先進的な考えのエリザベートにとって厳格な宮廷での暮らしはさぞかし窮屈だったろうとは想像できます。現代のように男女対等ではなく、皇帝&国民のお飾りとしての価値しか認められていないのですから尚更です。
でも映画で描かれる母としての姿はあまり褒められたものではないな😓 

映画のラストは史実とは大きく異なるようです。(暗殺されたらしい)
エリザベートがバスタブに浸かったり、湖で泳いだりといった水のシーンが度々登場するのは、彼女が水の中にいる時だけ本来の自分でいられたということのようです。海に還ることで彼女は自由になったのでしょうか。


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