杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ランチ酒

2024年05月19日 | 
原田ひ香(著) 祥伝社(発行)

へこたれてなんていられない。食べて、飲んで、生きていく!
犬森祥子の職業は「見守り屋」だ。営業時間は夜から朝まで。ワケありの客から依頼が入ると、人やペットなど、とにかく頼まれたものを寝ずの番で見守る。そんな祥子の唯一の贅沢は、仕事を終えた後の晩酌ならぬ「ランチ酒」。孤独を抱えて生きる客に思いを馳せ、離れて暮らす幼い娘の幸せを願いながら、つかの間、最高のランチと酒に癒される。すれ違いのステーキとサングリア、怒りのから揚げ丼とハイボール、懐かしのオムライスと日本酒、別れの予感のアジフライと生ビール……etc.今日も昼どき、最高のランチと至福の一杯! 疲れた心にじーんと沁みる珠玉の人間ドラマ×絶品グルメ小説集。(内容紹介より)


祥子は、元同級生の亀山太一の会社で『見守り』の仕事をしています。一人娘の明里を元夫のところに残して離婚した彼女は、娘との面会日が楽しみなのですが、再婚した夫から暫く娘とは会わないよう頼まれ、もやもやした気持ちを抱えています。
見守りは夜間の仕事が主なため、仕事終りの午前中にどこかの店に入って食事とお酒で一息つくのがささやかな楽しみの祥子の日常が美味しそうな料理とお酒を交えながら描かれます。

第一酒 表参道 焼き鳥丼
依頼主は外国暮らしの田端史江の娘・時江。前泊して高齢の史江の通院に付き添う仕事です。母が娘を想う気持ちは立場が違っても同じなのよね~。

第二酒 秋葉原 角煮丼
秋葉原のタワマンに住む新藤から再度の要請が入ります。(前回気まずく別れたらしい)この男、高収入でそこそこの容姿なのですが性格に難が大あり。女性蔑視傾向で俺様な奴。今回は契約結婚を提示されて唖然とする祥子でしたが、彼の条件に一瞬心が動いてしまったのは将来の展望もなく娘にも会えない焦りからでしょう。彼女の反応に冗談だと言った彼は彼なりに傷ついている様子。根は悪い奴じゃないんだろうなと。

第三酒 日暮里 スパゲッティーグラタン
中一の女の子の夜の見守りの依頼。シングルマザーだけどタワマン住まいということは夜のお仕事?全く手のかからない少女ですが、逆に張り詰めた糸の危うさを感じてしまう祥子。朝食を作ってあげたことでほんの少し心を開いてくれた少女に自分の娘を重ねてしまいます。

第四酒 御殿場 ハンバーグ
今回の仕事は荷物を届けることで三度目。依頼主の角谷から御殿場アウトレットでグッチの小銭入れをプレゼントされたり、有名ハンバーグ店(絶対「さわやか」だよな~~😍 )で食事したりとデートのような時間を過ごしますが、下の名前も知らないまま別れます。
次に依頼が来ても断わるよう言われて理由を尋ねた祥子に議員秘書をしている彼は何も知らない方が良いと答えます。後日彼が贈賄容疑で逮捕のニュースが・・・

第五酒 池袋・築地 寿司、焼き小籠包、水炊きそば、ミルクセーキ
高校三年生の男子の見守り(夜食を作り、模擬試験会場まで送る)の後に訪れたのは、末期がんで入院中の作家の樋田の病室。夜の見守りの依頼で、食通・グルメで売れた彼女は祥子が食べた池袋の店の料理やお酒の話に目を輝かせ、久々に安眠します。彼女から築地で食事をしてまた話して欲しいと言われ訪れた水炊きそばの店と市場の端の喫茶店の懐かしい味のミルクセーキ。築地を愛している作家に想いを巡らせる祥子です。

第六酒 神保町 サンドイッチ
ネットで誹謗中傷されたことがきっかけでエゴサーチをやめられない女子大生・実咲の見守りを頼まれた祥子ですが、一夜で彼女の心を開くことはできません。
編集者の小山内から連絡を受けて神保町の喫茶店で会った祥子は彼の母の元子の近況と樋口のその後の話を聞きます。樋口は小康状態になり自宅に戻っていると聞いて心から良かったと思う祥子でした。

第七酒 中目黒 焼肉
買物依存症の青年・蒼汰の見守りでまず頼まれたのは彼の腕を縛ること。変なプレイではなくネットで買い物をしないためです。祥子はIT大手に勤める彼に実咲の件をそれとなく相談します。すると警察に相談していると匂わせれば誹謗中傷していと一緒に駅に歩く途中で彼が教えてくれた有名焼肉店のランチを食べながら、元子や咲や角谷のことを考える祥子は、ある決心をします。

第八酒 中野 からあげ丼
亀山と腹を割って話すことした祥子は、角谷の件を問い質します。彼は薄々危なさに気付いていたけれど、ここまでの事件になるとは思っていなかったと詫びます。飯を驕ると言われて連れて行かれた店は、第一酒で彼女が行こうとして店がなくなっていたあの唐揚げ店でした。飲み食べする中で、亀山は祥子が頼んだ角谷の消息を調べることと実咲の件の解決に協力すると言いました。

第九酒 渋谷 豚骨ラーメン
実咲と母親を交えての話し合いの末にようやく解決の糸口が見えてきます。画像を流出させたのが疎遠になっている親友というのがいかにもな感。人間は輝いている相手に嫉妬と焦燥感を覚えるものなのよね。😞 
編集者の小山内から告げられた好意に対しては、娘を理由に婉曲に断ります。互いにはっきり示さないのが大人の対応ってことで。

第十酒 豊洲 寿司
再入院した樋田の依頼で豊洲市場の見学と食事に出かけた祥子。
水族館を覗き見るような見学コースには違和感を覚えるものの、仕事場と観光客を分けることについては納得するのね。
廻らない寿司屋でのおまかせコースはどれもとっても美味しそう。カウンター席に座った2組の女性客との連帯感の様なものも生まれます。
最後は、仮釈放される角谷から届いた手紙に心揺れながらも出かけて行く祥子。
小山内には断っておきながら、なんですが、恋心は杓子定規にはいかないものです。

娘と会いたい思いに悩む祥子は、見守りの相手からアドバイスを受けながら、元夫の再婚相手とも徐々に友好な関係を築いていきます。自分も誰かの役に立ちたいと思うようになった彼女の人間的な成長も描かれます。
何より、仕事終わりに入る店の美味しそうな料理の数々とそれに合うお酒の描写が素敵です。土地勘のある人なら「あぁ、あの店だ」とわかるよね😁 

人生まさに色々ですが、美味しい料理と美味しいお酒がご褒美なら頑張れそうと思える作品です。😀
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