杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ベネデッタ

2023年07月30日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年2月17日公開 フランス 131分 R18+

17世紀イタリア。幼い頃から聖母マリアと対話し奇蹟を起こす少女とされていたベネデッタは6歳で修道院に入る。純粋無垢なまま成人したベネデッタ(ヴィルジニー・エフィラ)は、ある日修道院に逃げ込んできた若い女性を助ける。様々な心情が絡み合い2人は秘密の関係を深めるが、同時期にベネデッタが聖痕を受け、イエスに娶られたとみなされ新しい修道院長に就任したことで周囲に波紋が広がる。民衆には聖女と崇められ権力を手にしたベネデッタだったが、彼女に疑惑と嫉妬の目を向けた修道女の身に耐えがたい悲劇が起こる。そして、ペスト流行にベネデッタを糾弾する教皇大使の来訪が重なり、町全体に更なる混乱と騒動が降りかかろうとしていた…。(公式HPより)


幼い頃からキリストのビジョンを見続け、聖痕や奇蹟を起こして民衆から崇められた一方、同性愛の罪で裁判にかけられた修道女ベネデッタ・カルリーニ。男性が支配する時代に権力を手にした彼女がおこした奇蹟は本物か、それとも狂言か。彼女に翻弄される人々を描いたセクシュアル・サスペンス(公式HPより)な本作の監督が「氷の微笑」のポール・バーホーベンと知って思っていた内容と違うのも妙に納得😓 

両親とペシアの町の修道院へ行く途中、聖母マリアに祈りを捧げている途中に傭兵崩れの盗賊たちに襲われた6歳のベネデッタは、奪われた母のネックレスを返さないと聖母が罰を与えると叫びます。次の瞬間、鳥の落とした糞が盗賊の1人の顔に命中。笑い出した男たちは少女の勇敢さに感心しネックレスを返して去って行きました。

テアティン修道院に到着し、修道院長のフェリシタ(シャーロット・ランプリング)と、イエスの花嫁となる娘の「持参金」を巡って交渉した父ですが、したたかな院長の前に彼女の望む額の寄進を約束します。
修道院って誰でも受け入れるんじゃないのね😮 しかも金次第って・・。

ベネデッタは粗末な衣服を与えられ、母から貰い大切にしていた木製のマリア像は引き出しに仕舞われてしまいます。深夜、寝床を抜け出し廊下にあるマリア像に祈りを捧げていたベネデッタに、突然マリア像が倒れかかってきます。下敷きになったベネデッタは思わずマリア像の胸にキスをします。物音を聞いて集まってきた修道女たちは、ベネデッタが怪我一つしていないのを奇蹟だと騒ぎましたが、院長は奇蹟は簡単に起きないと否定します。

18年後。美しく成長したベネデッタは、宗教劇を演じている中でイエスの姿を見ます。劇の後、両親ら賓客とフェリシタ院長、ペシアの主席司祭アルフォンソ(オリヴィエ・ラブルダン)や修道女たちと食事を共にする中で、最近ペストで亡くなったミラノ司教の話題が出ます。(これが後の騒動の伏線となっているんですね)院長と主席司祭の会話は高度な政治的駆け引きです。😕 聖職者の顔の裏には生々しい出世欲が隠れています。

宴の後、修道院に貧しい身なりのバルトロメア(ダフネ・パタキア)が逃げ込んで来ます。連れ戻そうとする父親に抵抗して修道女にして欲しいと懇願する彼女を院長は持参金を払えないからと冷たく拒否します。しかしバルトロメアを気の毒に思ったベネデッタへの贈り物として父親が持参金を払い、バルトロメアは修道院に引き取られ、指導係にベネデッタがなります。

バルトロメアに沐浴させたベネデッタは、バルトロメアの肉体に残る父からの虐待の痕に気付きます。深夜、トイレに案内し並んで用を足したベネデッタに身の上(亡くなった妻の代わりをさせられ体を求められ、兄たちにまで同様にされて耐えきれず逃げ出した)を語るバルトロメアに、ベネデッタは「美しさには税がかかるもの」と説きます。美しさの自覚の無いバルトロメアに、ベネデッタは自分の瞳に映る姿を見なさいと言い二人は顔を寄せ合いますが、気配に気づいた院長の娘のクリスティナ(ルイーズ・シュビヨット)が現れ慌てて身を離します。彼女が去った後、バルトロメアにキスされたベネデッタは神に祈りを捧げます。

この頃からベネデッタにはイエスが度々見えるようになりますが、これまでとは違い性と暴力を伴う光景になります。そのことを神父に告解した彼女にそれは神の啓示ではない、神の意志は痛みや苦しみから知るしかないと諭された彼女は、バルトロメアに厳しく接し、火傷を負わせてしまいます。院長はベネデッタを注意し、罰として、病に苦しむ老いた修道女の世話を命じます。痛みと罪の意識に苦しむ老女に触発されたのか、ベネデッタは高熱にうなされ「イエスを見て」暴れるようになります。バルトロメアは院長から世話を命じられ同室となった二人が親しく接するようになったある夜、ベネデッタの異変に気付いた修道女たちが目にしたのは両掌と足の甲から血を流す彼女の姿でした。「聖痕」だと騒ぐ修道女たちに、院長は「聖痕」なら茨の冠を被せられた額からも出血があるはずと冷静に指摘します。しかしその後マリア像の前で倒れたベネデッタの額から血が流れているのを見て、多くの修道女たちは間違いなく「聖痕」だと信じます。「聖女」の評判が流れれば巡礼者が押しかけて教会に富が集まり、自らの地位も高まると考えた主席司祭も真の「奇蹟」と認めます。彼にとって真偽より出世が大事なんですね。😔 

しかしベネデッタの傍らに、鋭利な陶器片がある事に気付いたクリスティナは疑いの目を向けます。「聖痕」は自傷行為だと母である院長に訴えますが、実際に目撃してはいない娘に自重を説きながらも院長も「奇蹟」には懐疑的でした。

主席司祭はベネデッタを新たな修道院長に任じ、フェリシタはこれを受け入れ修道女に降格させられます。しかしクリスティナには耐え難く、ベネデッタの「奇蹟」は偽りで皆を騙していると訴えますが、実際に自傷行為を目撃していないため逆に虚偽の告発をしていると追求され、衆人の前で自らの背を鞭打たされます。

ベネデッタには院長室が与えられ、広い個室の中、バルトロメアと親密で濃密な時間を過ごす2人。バルトロメアはベネデッタのマリア像に手を加えて作った性具で彼女を絶頂に導きます。それってかなりヤバイし神を冒涜してると思うんだけどな~~😱 その様子を秘密の覗き穴からフェリシタが見ていました。

修道院の上空に彗星が現れた夜、絶望したクリスティナが修道院の屋根から身を投げます。悲嘆にくれるフェリシタは、クリスティナの遺体に触れて魂を救おうとした(教義で自殺は地獄に堕ちるとされています)ベネデッタを拒絶し、修道院を抜け出してフィレンツェ(既にペストが蔓延しています)に向かい、教皇大使のジリオーリ(ランベール・ウィルソン)にベネデッタの行為を訴え出ます。彼は妻子持ちの世俗にまみれた人物でしたが、それゆえ(アルフォンソの出世欲を察したのかベネデッタを危険視したのか)真偽を確かめると約束します。

権力を手にし始めたベネデッタに、「聖痕」の真偽を尋ねたバルトロメアは「神が私を通じて意志を表明している」と言われ戸惑いを覚えます。

フェリシタの意図を察したベネデッタは、お告げだと言って町の封鎖を命じます。彗星は不吉の印ではなく神が町をペストから守ってくれる証だと演説した彼女は突然倒れます。彼女が死んだと知って動揺する人々は、町に到着したフェリシタと教皇大使を町に入れようとしませんでしたが、2人は強引に町に入ります。(首席司祭より教皇大使の方が上席だものね。)
大使が安置されたベネデッタと対面した途端、彼女は目を開け生き返り人々は復活の奇蹟が起きたと驚きます。天国で疫病と地獄の業火から人々を救えと地上に送り返されたと告げる彼女に教皇大使は疑いの目を向け審議が始まります。

フェリシタは、ベネデッタとバルトロメアの淫らな行為を目撃したと証言します。バルトロメアは怯えますがベネデッタは動じません。審議後に自ら大使の足を洗うと申し出たベネデッタをジリオーリは追求しますが、言葉巧みに否定しながら、彼女は大使の体の黒い斑点に気付きます。

捕らえられ拷問を受けたバルトロメアは苦痛に耐えきれずに罪を告白し隠していた性具を示します。逮捕されて地位と名誉を奪われ火刑が決まってなおベネデッタは罪を認めず、自分を貶めた者を批判し、ジリオーリには恐ろしい天罰が下ると予言します。

バルトロメアは、粗末な衣服を与えられ追放されます。その際、元売春婦だった修道女(「持参金」が出せたの?)は、「屈辱は傷跡を残さない」と言って耐え忍ぶよう諭しました。

フェリシタがペストを発症し、ジリオーリ自身もペストの兆候に気付きます。民衆の反応を恐れた彼は、ベネデッタの火刑を急がせます。
彼女を「聖女」と崇め抗議の声をあげる群衆の中には許しを乞うバルトロメアの姿もありました。騒然とする様子に恐れを抱いたジリオーリは、罪を認め告白すれば火刑より楽な絞首刑にすると持ち掛けます。ベネデッタは掌の出血を「聖痕」だと示しながら、ペシアの人々を救えなかったと神に詫び、神の意志を信じない教皇大使がペシアに疫病をもたらすと非難します。
それを聞いた群衆は騒ぎ始め、火刑台のベネデッタを救おうと押しかけます。そこへ症状が悪化したフェリシタが現れて、教皇大使が私を感染させた、ペシアに疫病をもたらしたのは大使だと非難します。ベネデッタは捕まる前にフェリシタと面会しているのですが、この時何やら耳元で囁いたのは取引だったのかしら?

彼女を救いに駆け寄ったバルトロメアは、傍らにあった陶器片(それが意味することは明白に思われます)で彼女を縛るロープを切ります。ベネデッタは群衆に襲われ瀕死の大使に最期の祝福を与えようとします。あくまで「聖女」を装うのね。😧 
「お前は死んでいた時にあの世を見たのか、私は天国と地獄のどちらに行くのか」と問うジリオーリに「あなたは天国に行きます」と告げたベネデッタに彼は「お前は最期まで嘘をつくのか」と言って息を引き取ります。

フェリシタは、火刑台で燃え盛る炎の中に身を投げ、群衆が騒然とする中をベネデッタとバルトロメアは姿を消します。

ペシアの町の郊外。一夜を過ごした2人は全裸です。服を着て修道院に戻ると言うベネデッタにバルトロメアは「戻れば火刑にされる、私たちは自由だ」と訴え「聖痕」は自傷だと認めろと迫りますが、彼女は認めずに町へ歩き出します。

ペシアの町は、ペストの災厄から逃れました。
修道女ベネデッタ・カルリーニは、火刑を免れますが生涯を修道院の牢獄で過ごします。ミサへの参加と、時折は修道女たちと食事を共にする事も許されましたが、その際には床に座らされたそうです。

神を否定する気はありませんが、それを利用する人間の浅ましさには閉口します。
映画ではベネデッタという女性の並外れた野心に焦点を当てていますが、彼女自身が「神がかり」になった精神状態は、最初のマリア像の胸のエピソードからバルトロメアの沐浴シーン、そして積極的なアプローチがきっかけとなって抑圧されていた欲望が解放された結果なのかもしれないと思いました。

元院長のフェリシタは、とても現実的な女性として描かれています。神に仕える身なのに本当の意味で神を信じていないから、奇跡や聖痕も素直に受け入れられないのよね。娘を救えなかったことが彼女に行動を起こさせますが、自身を滅ぼしてしまう結果になるのも悲劇的です。ベネデッタから死後は娘と一緒で天国に行くと言われるシーンは、結局最期は神に縋る弱さもとても人間らしいと感じました。
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