杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

黄金の烏

2021年07月05日 | 

阿部智里 (著)文春文庫

人間の代わりに「八咫烏」の一族が住まう世界「山内」で、仙人蓋と呼ばれる危険な薬の被害が報告された。その行方を追って旅に出た日嗣の御子たる若宮と、彼に仕える雪哉は、最北の地で村人たちを襲い、喰らい尽くした大猿を発見する。生存者は、小梅と名乗る少女ただ一人―。八咫烏シリーズの第三弾。(「BOOKデータベースより)

物語は世継ぎの若宮と、郷長のぼんくら(とされる)次男坊が、危険な薬〈仙人蓋〉の探索にでかけるところからはじまる。不穏な気配を漂わせた旅先で、何と彼らが出会ったのは、人を喰らう大猿だった! 壊滅した村の中でたったひとり残されたのは、謎の少女・小梅。――いったい僕らの故郷で、なにが起こっているのだろう?
山内の危機に際し、若き主従は自らの危険を顧みず、事件のヒントを持つと思われる暗黒街の支配者のもとに出向く。そこで雪哉に課されたのは、未知の隧道の先にある物を持ち運ぶことだった。深い暗闇の底での冒険の末、雪哉が見たものとは?

今回も冒頭からミスリードにまんまと引っかかってしまった そろそろ慣れてきたと思ってたのに、悔しい!そして終盤では更なるどんでん返しが待っていました。 ついつい雪哉の視点で見てしまって小梅ちゃん、ごめんよ~~

若宮・奈月彦が真の金烏である理由が明かされる意味でも興味深い三作目です。

前作で朝廷にも若宮の元にも戻らぬ覚悟で去った雪哉でしたが、早速の再会となります。

八咫烏が使用すると狂って人形に戻れなくなるという仙人蓋の出所を追って若宮が雪哉の元に現れるんですね~~。身分を隠してる若宮と共に探索に出かけることになるのですが、そこで二人は人喰い猿に遭遇し、大切な家族や郷の人々を守るために若宮に協力することになった雪哉は再び朝廷に戻ることに。

仙人蓋と猿の出現に関わりがあるのかを調べるため、暗黒街に出向いた雪哉は、未知の隧道の先にある「白い物」を取ってきたら教えてやろうとの条件を呑み、暗い隧道に入っていきます。(元々は若宮に出向くよう文が届いていたのですが、彼の身を案じる兄の長束が無理やり代理を買って出て雪哉を人質に差し出そうとするんですね こういう考え方自体が宮烏の貴族特有の傲慢さから来るもので、当然相手に拒絶と不快感を与えてしまいますが、雪哉の本音の訴えが功を奏するのでした。)地底湖で猿に遭遇した雪哉を救ったのは、追ってきた若宮です。躊躇いなく剣を振り下ろし小猿を殺す描写に思わず猿が哀れに思えたけれど、そうしなければ二人とも危なかったのですから仕方ない 若宮の冷徹さが出る場面でした。

雪哉が持ち帰った白い物は人間の骨でした。それこそが仙人蓋の原料だったのです。猿を手引きした者が、仲間である八咫烏を生贄にしてこの骨を得て売っていたと推理し、では誰が?という謎解きが後半で進められていきます。

犯人を追いつめた雪哉ですが、油断したところを襲われ、助けようとした若宮が瀕死の重傷を負ってしまいます。猿相手には冷徹に剣を振るっても、真の金烏である若宮は同じ八咫烏である犯人を殺すことが出来ないんですね。

今作では若宮の手足となって動く雪哉の活躍がクローズアップされています。まだ体力的にも若宮に庇われるところもありますが、未知の出来事に対処する度胸と勇気は格段に上がっている感じ それなのに、女の子の気持ちにはまるで鈍感なのが微笑ましい

雪哉は、若宮が金烏になろうとするのは、結局は権力や地位に固執しているからだと思い、若宮から去ったのですが、「真の金烏」の特性、すなわち八咫烏全ての父であり母である金烏は、例え自分を害する八咫烏でさえも、殺すことができないという弱点を知ります。また山内の結界を繕う姿をその目で見たことで、命を狙われてもなお山内の民のためにその力を捧げようとしている若宮のために、その身を捧げ守り抜くことを誓い、山内衆の養成学校である勁草院に入学することを決意するのでした。 

今のところ、若宮が信じられるのは兄の長束と山内衆の澄尾と妻の浜木綿、それに雪哉だけ。あ、あと若宮の従兄妹で浜木綿の女房となっている真赭の薄もですね う~~ん、少ない!でも信用できない者を傍近くに置いて寝首かかれるわけにはいかないものな~~。

さてさて、次作は雪哉の勁草院での出来事ですね。何だか若宮より雪哉が目立つようになってきたぞ

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