杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ビブリア古書堂の事件手帖IV ~扉子たちと継がれる道~

2024年07月05日 | 
三上延(著) メディアワークス文庫

三つの世代を超えて挑む、夏目漱石・名著の秘密。ビブリア新シリーズ第4弾
三つの時代をまたぎ紐解く、鎌倉文庫の謎
まだ梅雨の始まらない五月の終わりの鎌倉駅。よく似た顔立ちだが世代の異なる三人の女性が一堂に会した。戦中、鎌倉の文士達が立ち上げた貸本屋「鎌倉文庫」。千冊あったといわれる貸出本も発見されたのはわずか数冊。では残りはどこへ――夏目漱石の初版本も含まれているというその行方を捜す依頼は、昭和から始まり、平成、令和のビブリア古書堂の娘たちに受け継がれていく。十七歳の「本の虫」三者三様の古書に纏わる物語と、時を超えて紐解かれる人の想い。(内容紹介より)

・プロローグ
・第一話 令和編『鶉籠』
・第二話 昭和編『道草』
・第三話 平成編『吾輩ハ猫デアル』
・エピローグ

とある資産家のガーデンパーティーに招待された篠川家三代の女性たちから語られるのは、昭和~令和にかけてのそれぞれが関わった鎌倉文庫と呼ばれる千冊を超える貸本の行方の謎です。

第一話では扉子の後輩の少年・恭一郎が語り手になっています。
(彼は虚貝堂の店主の孫で~扉子と虚ろな夢~で登場しています。)
扉子が親友の戸山圭と仲違いした理由が鎌倉文庫を巡るものであったことが語られます。

昭和編では栞子と文香の母・智恵子と父・登の出会いが描かれています。
店番をしていた登が常連客の女子高生・智恵子にラーメンを作ってあげたことがきっかけで、彼女が昼食代を本の購入に充てていたことに気付いた大学生の登君は、同時に彼女の本の知識の深さに驚きます。
この時やってきた兼井の依頼を父親の代理で聞いたことで、智恵子と共に動くことになるのです。

第二話・第三話の語り手として登場するのは登です。
彼の智恵子への想いが語られていて、登が日々の出来事を備忘録代わりに書き留めていた手帖は、大輔が書き留めているのと同じ意味を持っています。まさにビブリア古書堂の事件手帖なわけです。篠川家の3人は本への飽くなき探求心・好奇心とその択一した知識力は似ていても、アプローチの仕方は少しずつ異なっています。他方、登や大輔はサポート役に徹し相手を疑う事なく受け入れている姿勢が共通しています。おそらくは扉子と恭一郎もそんな関係になっていくんじゃないかなと思わせます。

高校生の智恵子はやっぱりどこか危ない得体のしれない闇を感じさせます。目的のためなら手段を選ばない智恵子を油断ならないと思いながらも惹かれていく登と、警戒すべき相手と感じているのに自分の言葉を疑わない登に心を許していく智恵子の心の動きが伝わってきます。
(今作の彼女はミステリアスでありながらも、どこか人間味を感じさせてくれています。)

平成編で再び登場する兼井からの再びの依頼に応えるのは栞子です。自分が死んだら集めた蔵書を燃やすと言っていた兼井も病を得て年老いて心境にも変化が生じています。昭和編で彼の手に鎌倉文庫の本が渡るのを阻止した筈でしたが実は・・・という驚きの展開が待っていました。俗物に見えた彼の妻の花子の意外な一面は、むしろ好感が持てました。

エピローグでは、三代の女性たちの口からここに至るまでの物語が語られます。
ガーデンパーティは花子の生前葬という趣向でした。(夫は既に他界しています。)
花子に頼まれ持ち寄った智恵子の『道草』、栞子の『吾輩ハ猫デアル』戸山利平の『鶉籠』を加えた鎌倉文庫の蔵書を前に利平が「懐かしい」と呟きます。

鎌倉文庫は、鎌倉文士が経営していた貸本屋で、実在のものですが、散逸したとされる蔵書の行方についての物語はフィクションだそうです。
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