月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

恵比寿「写真集食堂・めぐたま」。一汁五菜のお料理とクレオパトラメロンを頂く

2018-07-03 23:42:52 | 東京遊覧日記

(北の大地へ) 「雲海を下ににみて空をいく、前へ」のつづき

JR恵比寿駅の西口から、駒沢通りを青山方面へひたすら上る。5分ほど歩くと駅界隈とは雰囲気が一変し、閑静な住宅街が広がる大人の街が続いた。(大阪の帝塚山みたいな)

「写真集食堂・めぐたま」。ここが今晩のお目当ての店だ。








真っ暗な夜の道に、外まで黄色の灯りがふんわりと迫り出している。
白木のカウンターの上には、おいしそうなものが入った大鉢がいくつか。

そして店の両壁は、床から天井まで隙間なく並ぶハードカバーの写真集の群。その数、5000冊以上もあるのだとか。






カウンターの中で忙しそうに食事を作り、いそいそと料理を運んだり、笑って常連さんのお相手をしているのは、いかにも料理好きそうな笑顔のきれいなマダム(店主)。ワンピースタイプのエプロンを翻してお給仕をする面々も。

この楽しくて仕方ないといった感じの接客に、まず、とても和んでしまった。

黒板メニューは魅力的なものばかり(手作り餃子とか)だったが、
我々は「季節の一汁五菜セット」をオーダーし、東京へ着いた初夜を祝ってビールと焼酎で乾杯した!
席からは、緑したたるガーデンが見え、白い小さな花がこぼれている。草や花の香りまで漂ってくるよう(昼はどんな表情なのだろう)。


お料理を待つ間、明日からの旅行の計画などを話しながらも、さっきから気になって仕方なかった写真集を2冊確保して(綺麗な南国の島のフルーツばかりを撮った本)。
黄色い灯りの店でのひとときを愉しんだ。

料理の品々のことを少しだけ、書いておこう。




黒米のごはんとお味噌汁。大山鶏のハーブ焼きとじゃがいの煮物、キュウリとお麩の辛子味噌あえ、メーンは豚しゃぶと青菜のサラダ、お漬物など。

皆。ビールはそこそこに、無言で東京の母がこしらえたあったかい味を堪能した。
東京でこんなにカラダによさそうな丁寧な家庭料理を食べられるとは、ちょっと拍子抜けしたが、わくわくした。

しかも、周りには写真集など読み物の宝庫。贅沢このうえない。

ふと視線をテラスに向けると、白×黒、小豆色のチェック柄の上品なワンピースを召した奥様と男性の中年カップルが目に入る。 ご夫婦なのだろうか、とても楽しそうに談笑が弾んでいる。そういえば、あちらも中年の二人組。良い店は、客筋をみるとたいていわかる、
そんなことをNと話していると、ふと。

「あちらのご夫婦から差し入れですの、よろしかったら」と
笑顔の店主が食後のデザートを各テーブルに運んでいらした。


そして私たちのテーブルにも。陽気な笑顔とともに、突然のデザートが届く。

鳥取県産の「クレオパトラメロン」だという。

ツルンと舌ざわりなめらかな白いメロンで、果汁の豊潤なまでのみずみずしさに、いっぺんに幸せが溢れた。

思わず、白×黒、小豆色のチェック柄の上品なワンピースを召した奥様に目でご挨拶して「おいしい!」と御礼をいうと、彼女はこんな風にいわれたと思う。

「仕事で鳥取の梨浜町へ行っておりましてそこで今朝、買ってきたのです。おいしいですね、あぁ、よく熟れていてよかった」。冷えていたら良かったのですけどね、と店のマダムも加わって、笑い合った。なんていい空間なのだ。「鳥取・梨浜町」という響きが、とても耳障りよく、まるで避暑地の小さな町みたいに聞こえた。


この店の先をもう少し歩くと、「山種美術館」があるという。
また足を運ぶことになりそうな良い店、良い時間だった。

こんな旅の途中のおいしい一幕——。(もしかしたら、この夏、梨浜町のクレオパトラメロンに会いに行くかも)。







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