月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

モンサンミッシェル修道院の中を順路に沿って歩く 後半(8)

2017-12-22 15:40:14 | 海外の旅 パリ編








モンサンミッシェルの内部は、外気より完全に冷たく、地下牢のような湿気があり、
暗くて濃密な廃墟のような石の搭だった。

ゴツゴツとした厚い石の階段を上る時、また下りる時。
ここが千年以上の歳月を経てなお、生き続けている修道院だということを、
踏みしめる石の階段の堅さと冷たさから、
わきあがってくるようだった。




英国との百年戦争の時も不落の強固さをみせたそうだが、
軍事建設物として英国の攻撃に持ちこたえた防壁、要塞にも。
やはり悲しみが宿っているように感じた。
ここは、フランス革命時に修道会が散会してからは、
長いこと監獄としても使用されていたという。



身廊の天井は、板張りヴォールトになっていて、
優雅にアールに曲げられた部屋の天井部や修道院付属教会の天窓も胸のすくような完成された設計だ。
彫刻に刻まれた装飾やマリア像。



そして、あたりからたちこめる、過去からの時間軸から流れる気配…。


そして突然と「回廊」へ出る。











ここは修道院の最上階部で、僧たちの祈りと瞑想の場だった。
モンサンミッシェルの見学コースで、唯一といっていいほど
開放感にあふれた中世の宮廷風の中庭と上部に掘られたレリーフのデザイン。

芝生は生えたばかりの優しい緑で、
空に近い光を浴びて、とても綺麗だ。
暗い歴史の迷路から、現実世界へ抜け出たような温かさを覚えた
美しい「回廊」なのだった。


続いて修道院の食堂があった。
正面には十字架。
両側には円柱の小窓があり、穏やかな光がそそがれる構造になっていた。

ロマネスク建築とゴシック様式の混在する建築美というもの。
それは美しく、質素で厳かな空間を飾っていた。


中階へ降りると、貴賓室、サントマドレーヌ礼拝堂。
アールを描いた巨柱の間。



聖マルタン礼拝堂は、修道院付属教会の交差廊より、後に建築された
比較的新しい設計で、10メートルほどの石組の天井。壁層はかなり厚いものだとか。



次には、19世紀の牢獄時代に納骨堂があった貨物昇降機(大軍輪)。
崩壊した医務室と修道僧の納骨堂の間にある死者のチャペル
(聖エティエンヌのチャペル)。
階段を通り、修道僧の遊歩場(散策の間)へとコースは進む。








そして。騎士の間(修道僧たちの仕事場)。




司祭の間を見て、
ラ・メルヴェイユの建物を後にする。


外気にふれると、ほっとした。
先ほど入場前と同じように観光客の群衆であふれている。写真撮影をするグループや、
同じバスに乗車していた初々しい男女のカップルたちも揃って
写真撮影をしていて、すっかり寛いだ様子だった。

モンサンミッシェルの栄華と悲哀を、一瞬にして見たような気もするのだが、

この広大な塩の干潟と日常の人の姿を目にしたら、

なんだか全て幻だったようにも思えるのだった。


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