月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

墨色に濡れたからすにご用心!

2019-04-27 23:13:42 | writer希望を胸に執筆日記


2019年4月27日(土)晴れ、寒い日

ゴールデンウィークだというのに、デロンギのダイナミックヒーターをつけている。
まるで冬休み、年末みたいだと思う。そしてわたしは、年末みたいに休み明けに提出する原稿を進めている。

昨日は、夕方6時半の散歩の折、とても面白いことがあった。
いつものコースを一周して、家々の庭からあふれる白い花や黄色い花々に目を奪われているわたしの前に、くちばしの尖った真っ黒な貴婦人がつんと横をむいて立ちはだかっておられた。羽はたっぷりの墨色に塗り固められて黒光していた。それはたいそう大きいカラスなのだった。


一瞬、たじろいだ。が、どう考えてもわたしのほうが相手より大きい。大股であるくと、パタパタと飛びさってくれるに違いないと思い直し、さつきまでの、のんびりとした闊歩ではなく、腕を45度の姿勢に曲げて前後に(ウォーキングの格好で)ぶんぶんと振って歩くが、大きなカラスはそしらぬ顔。
優雅にわたしの横を、ちょんちょんと歩いておられる。

まるで「ここは自分の歩道よ、あなたこそ、早く行ってちょうだいよ」といわんばかりの、
涼しげな表情なのだった。やっぱり貴婦人だ。

墨色のカラスの羽は本当に大きい。(何度でも言おう)からすとの距離は、わずか数センチというところまで来て。わたしの鼓動はずんずんと高鳴ったのだが、どちらも引き下がることなく、運良く、きれいに、スーッとすれ違えた。

ふわーーっ。緊張感のあるこの瞬間。わたしは、まるで絵本の中の一場面みたいと、ちょっとだけ楽しい気持ちで、この特別なウォーキングを迎え入れていたのだと思う。

そして、やり過ごせたことにほっとして、まっすぐ前をみて、さてどこへむかって歩こうかと思ったその瞬間。自分の左の眼球の端に、なにかがこちらをみているという気配がして、「なに?」とごく自然に隣の庭の植え込みに顔をむけると、なんと!!迫力ある威嚇で、墨をあたまからふりかけたような、さらに大きな太ったからすが。
重々しく枝にとまっていた。

うわーーーーー!ぎゃーーーー!びっくりした。今度は度肝をぬかれた。

不意打ちという、やつは、いとも簡単に相手をこっぱみじんにやっつけられるのであった。ものすごい威力で。
ここはどこだ。わたしは、どこにいるのだ。と恐怖でいっぱいのアタマをフリーズさせながら、そう思った。


それから、気を立て直して、まっすぐ一昨日にみた白い藤が咲く公園にむかって歩く。
白い藤は、あいかわらず真珠色の花弁をたらりとさげて、清らかなにおいを放っていた。良かった。薄暗い光のなかにみると、さらに素敵だ。


帰宅して仕事。いっこうに進まない原稿にあきれて、腹立たしい。せめても、おいしく、タケノコごはんを炊いた。
水から昆布をいれて、湯がぐらぐらしたら、かつおぶしをはらはらと散らす。
そして、タケノコと鶏の胸肉をいれ、だし、みりん、しょうゆ、酒、塩などをいれて5、6分煮る。

その煮汁だけ(たけのこと胸肉は別皿にうつす)と、昆布とかつおのだしでごはんを炊いて、たきあがったところで、たけのこ 胸肉をいれる。蒸らすこと15分で、出来上がり!!


真夜中。
仕事をしていると、娘のNから、ウィーンの写真が次々に届く。宮殿や、ホテルザッハで食べたという「ザッハトルテ」のおいしそうな写真。
ウィーンの町並みを歩く乗務員たちの姿やホテルからみえる公演など、ヨーロッパらしい風景。

深夜。ウィーンの空気感に飲み込まれそうになりながら、依頼されたマーケティング戦略の原稿を書いた。








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