月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

京都の取材を終え、香りのパンチが絶妙な「ブランカ」(夏日記つづき)

2019-09-14 00:30:29 | writer希望を胸に執筆日記


8月20日(火)晴 (後追い日記)

午前中、昨日の原稿をチェック。
午後から、京都駅のグランビアホテルで親子をテーマにした取材と撮影。

京都・西京極のほど近く。「父方のおじいちゃんが建ててくれはった」という築80年の家。

小さな改修を何度か経て、玄関先を車のガレージに。 片方が土間で貫かれた風と人の通り道〝ハシリ〟は母がお嫁に来た頃は井戸や竈、古い戸棚が添えられていたが、今は土間をあげて現代風のキッチンにされているという。

「苔のむす中庭、裏には樫の木がありました。表の格子戸越しには秋になるとそれは大きな真っ黄色のイチョウの木が素敵に見渡せた。おばあちゃんと父母、私と弟の5人で仲睦まじく暮らしていた頃が懐かしいです」と娘の久代さん。

50代の娘と75才の母の、話は続く。耳から、その言葉運びから。京らしいふんわりとした温かみがせり上がってきた。とてもよい時間だった。

私はその昔、(30代後半から40代半ば)
外国籍×日本人の夫婦の暮らしぶりを紹介する巻頭特集を取材・執筆してきたのだが。こういった「人」と「暮らし」、「そこに流れる特別な時間の流れ」みたいなものを感じとって書くことが、とても好きなんだなと気づいた。

当時、代理店の人は「取材記事というよりはまるでエッセイを読んでいる感じがしています。よいんでしょうか」とぽつりといったことがあった。私は、それは違う。これは完全に取材記事である、と興奮気味に反論した。
はて、今読めば、断じてそうだといいきれるんだろうか。

それでも、最旬のニュースをキャッチして、新聞記事風に、噛み砕いて自分なりの視点で伝える記事より、もしかしたら、そこにただ存在するものや人の息遣いを淡々と書くほうがもしかしたら、うまくいくのかもしれない。
〝説明するのではなく、みえない時間や空間。そこにフォーカスしつつ、匂いや移ろいを絵のように書いてみたい〟


さて取材終了。京都駅、伊勢丹の大階段のところで撮影中、Nがひょっこりと現れた。ディレクター氏とNが挨拶をかわし、そのまま四条烏丸駅まで。

京都の抹茶が食べたい、という希望を受け入れて、「茶寮翠泉高辻本店」。






Nは「翠泉パフェ」、わたしは「抹茶クリームわらび餅」を食べる。
品のある濃い抹茶の風味。天然のわらびのぬっとした味わい、しっとり感。


夜は、前から一度いってみたかった京都の「ブランカ」へ。
寺町通りから、京都市役所9番出口から徒歩3分。
犬矢来や格子戸を構えた感じのいい古民家だ。
店内はL字型カウンターと4人がけのテーブルがひとつ。

「よいしょ」とカウンターのハイチェアに腰掛けると、今日のおすすめ食材、ゴーヤや泉州なす、オクラ、とうもろこし、手作り胡麻豆腐などが見わたせて食欲をそそる。店主の器用闊達な手さばきも、気持ちいい。これは期待できるとすぐに分かる。

夏らしくすだちサワーと迷ったが「黒糖焼酎」を注文した。


●はもの塩レモン焼き
夏のはもを塩焼してレモンを絞ったはものあぶり焼き。




●いちじくと牛たたきとパクチーとヤム
さっぱりとした牛たたきに香草のパンチがきいて、混ぜるごとに酸っぱさ、甘み、さわやか、ナッツ感などが味わえる「アジアン風サラダ」。




●肝焼き
朝挽きの新鮮な鶏肝をおそらく炭火で焼いた、最高の肝。シナモンの香りが鼻孔をくすぐる。





●できたてゴマ豆腐、
むっちりとしたなめらか。白ゴマのやさしい味わい。





●しらすと香菜の卵焼き
ほのかな磯の風味。しらすの甘みと塩みがほどよい。




●シメの播麺
胡麻ダレ、ごま油にハーブが良い仕事をしていて、お腹いっぱいでもスルスルっと入る豪快な麺。




またひとつ、京都に贔屓の店が生まれた。








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