月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

旅立つ前の心境、お風呂の中で

2018-12-29 23:56:33 | 東南アジアへの旅(ベトナム編)







2018年12月15日(土)

旅立つ前の準備をしていると、キーンとした緊張感の中に自分がいるのがわかる。

荷づくりの中に、ふだんの私の一部分である着なれた服や化粧道具、少し上等なランジェリーに、
旅で読みたくなったら読む予定の本を2冊
(武田百合子さんの日々雑記、リチャードブローティガンのアメリカの鱒釣り)。
水素バスの入浴剤、薬、レストランへ行った時用のカジュアルドレス、サンダル、紅茶のティーバッグ、
リゾートっぽい雨傘などをスーツケースの中に入れる。


夕ごはんは、レンコンと人参をたっぷりといれた筑前煮に手羽先を加えたものをメーンにした。
じんわりと煮込つめると鶏のお出汁と冬の根菜の味があわさって、濃いうまみが体を温める。
ちゃんとした煮物を家の人のために作ることができて良かった。

母にも電話をかける。

いつもより少しだけ丁寧に掃除をして、終わると12時近い。
いつものことだ。きっと、今夜もすぐには寝つけないのだろう。
急いでお風呂に入って、久しぶりにポメラを開けた。


振り返ってみると、
11月は慌ただしくて、通年の3倍ほどの案件が入った。

1つの取材記事でいつもの数倍も時間のかかる原稿が出て、
取材対象者がサイボーグのように、知的すぎて心が読みにくい人でひとつの質問に対して延々に喋り続ける人で、業績が素晴らしいから
必死で書くがどうにもうまく人物像がつかめない。
一度原稿があがってから、3度、書き直し、
提出日も細かいところをなおしていたら、いろいろ気になってきたが、なんとか体裁をまとめて提出する。


それでも、どこか、スキッとした原稿ではなかった。
が、タイムリミット。後ろがあまりにも仕えていたので、そのまま次の案件へ。

長年組んでいるデザイナー女子ともちょっとしたことが原因で口論となる。
穏やかなさが信条の私がどこか変だ。

もうそう若くはない、詰め込み過ぎは脳にも体にも毒だ。
来年は自分のキャパとできること、やってみたいことを考えて働き方改革をしないと、
自分の時間は限りがある、ということを考えなくては。



12月は、半ばでようやく手持ち案件が片付き、今日一日を自由に使えばよし、という日が2日はあった。さぁ来年の自分の体勢を立て直すぞ、と意気揚々と元気になったと同時に、不意に娘から海外へ行きましょうと誘われたのである。

最初はドイツに1週間ばかり行く予定だった。
冬のヨーロッパは寒い!と最初は気乗りしなかったのに、調べ始めたらだんだんとその気になってきて、エクスペディアを中心にサイトで海外のホテルの口コミをはしごして、旅行の計画をたてることばかりに時間を費やした。

そのうち、もう行ったような気になり、架空の情報を妄想するのに頭がいっぱい。

それをまたクールダウンして、集中するのを繰り返し。
ホテルも飛行機も抑えたところで、羽田からミュンヘンは行けても帰りの便が満席で帰国できないという…事態に。
フランクフルト経由も危うく残席はあと数席。
ミュンヘンからパリ経由も無理、すべてはふりだしである。

4泊のうち、奮発した5つ星ホテルの2日分はキャンセルができず90%も支払わねばならなかった。

それでも、思い直すことができずついに、雪のヨーロッパから東南アジアへと舵を切り直し、再度同じことを繰り返せねばならなかった。

そうして明日は、いよいよ旅の空だ。
来年からの計画も、下準備も放置したまま。

帰国したらすぐ仕事が待って25日には提出しなくてはならない。

なんだかつまらない回想になってしまったなと…大いに反省だ。

湯船のなかで、ポメラを打つ、今、この時はそれでも明日からの未知の時間にワクワクが半分。不安な思いが半分…。




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