月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

2020年最後のさくらに

2020-04-27 23:40:08 | コロナ禍日記 2020

4月7日(火)  

 パパさんは、きょうは出張でいない。ひとりっきりの朝・昼・夕。なんて豊か!


 ゆっくりと紅茶をいれて、好きなだけ本を読み、iPhoneからポータブルワイヤレススピーカーで音楽をかけっぱなしにして食器を洗った。本をもってお風呂(柑橘類のなつみを食べた)。自分のために料理(ニンニクのオイルスパゲティとサラダ)をし、日中は仕事をして過ごす。

 どんなやり方だろうと自由なのに。惜しいことには、結果としてあまりはかどっていない。なぜ? 自由を謳歌しすぎたのだ。遊びすぎてしまったのだ。ふわふわと。原稿を横においてネットサーフィンなどもしてしまった。あれこれ思いを巡らせて、メモ!そしてメモ!が数行たまったくらいか。

 あ!玄関から続くクローゼットに本が入っておりごそごそみていたら、懐かしい作家の古い本に出会う。これも、これも。






 パラパラと懐かしみ、金井美恵子さんを読む。開高健。中学の頃に開いていたリルケ詩集、フランソワーズサガンもごっそり。

 滋賀県の「みのり苑」(白洲正子さんが好んで焚いた)のお香「沈香」を1本焚いて、落ち着くために瞑想をした。

  少しだけ、進んだ。

 いつものルートをとって近所を散歩。階段をおりて、森みたいな雑木林をぬけ、外周道路へ。白い空に、低い位置で、鏡みたいに光る大月がでていた。スーパームーン。月にむかって歩く、歩く、かけあがるように早足で。もうすぐ家。という時に再び、スーパームーン。さっきより高い位置に。住宅街にはいると、角をまがったところにハナミズキが咲いていた。花にみとれているうちに、スーパームーンが、普段のごく普通の月に移り変わっていたのだった。

 夕ご飯は、卓上コンロに伊賀焼土鍋ですき焼き。もずく。純米酒を合わせる。

 

 

4月8日(水)

 コロナ疲れか、それとも新しく買った空気清浄機(アクティブプラズマ)が効き過ぎるのか。体調がいまひとつだ。このところ、体温が低い。悪寒!と思い、熱をはかれば、35.2〜35.6分のあたりをうろうろ。知らぬまに新型コロナウイルス感染拡大に対するストレスが蓄積しているのだろうか。

 午後から、ピンクのぬくぬくガウンをすっぽりきて、布団の中で過ごす。

 夕方。散歩にでた。家からの外周道路には、ソメイヨシノや白山桜が、真綿か、春雪のように木々にふりつもり、半分くらいは散っていた。

 地には、小さなピンクの花びらが、ひらりひらりと落ちていた。かよわい、水をふくんだままの花びら。道路の端は、ピンクの色が色濃く、薔薇のイチゴクリームケーキみたい。

 きょうは、いつもより15分よけいに歩く。 今年の桜は、忘れられない。おそらく記憶の彼方までも降り積もる。京都の桜をみない年なんて、20年ぶりだ。それでも、ここ数年、朝に晩に一番多く、さくらを見た年になった。