月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

ウィーンのカフェ、一番目は「ハヴェルカ」で(4)

2019-12-14 17:02:39 | 羽田ーウィーンの旅

ウィーンの旅 つづき (1)(2)(3)

通りを出ると、雪まじりの雨が細く降っていた。折りたたみ傘をもっているが、傘をさす人は5%未満。それも観光客ばかりだ。通り雨が多い国なのだろう。


背中をまるめ、前から吹く風をよけて。お目当てのカフェ「ハヴェルカ」を探す。
Nは、ウィーン滞在が毎月あるので、地元の地理には、私たちよりはるかに詳しい。

シュテファン大聖堂から大通りを横切り、路地裏に。すぐ、「ハヴェルカ」を見つけだし、外観の写真をとるように促してくれた。それがこれ!





1936年創業の老舗カフェ。あの「ハヴェルカ」についにきた。
ザッハトルテで有名な「カフェ・ザッハ」同様、観光用のレターカードにも印刷される、かつて文化人が集った歴史のある店……。


扉をあけると、まだ電気が半分くらいしか、ついていない。奥の調理場からオレンジ色の温かい光がこぼれていた。こうして店の一日がはじまる。







店内はまだやや寒く、マフラーをまいている女性。うつむいて何か思案し、書いている。窓際には男女がおしゃべりにこうじる。地元の人のごく普通の朝の光景。

私たちは、窓際の入り口の席を選び、アンティーク風の木のポールハンガーにコートをかけた(感激!)。薄暗い店内の壁には、演劇やコンサートの褪せたポスターやチラシが貼られ、往事の面影。(神戸にもこんな空間があるなぁと)

「何を飲みますか」と注文をとりにきたウエイター。メニューをもたずに注文をとるのが店のスタイルだ。
周囲にあわせて、おなじみの朝食とメランジュをオーダーする。


私たちが次の行程を話していたら、2代目オーナー(ギュンター・ハベルカ氏)が、挨拶にきてくれた。写真でみるのと同じ、まるっぽい頬、歓迎ムードいっぱいにチャーミングに笑いかけてくれ、Nが英語で応対する。歴史などを少し聞いた。








ウィーンでよく見かけるのがこのパンだ。噛みごたえのあり、粘りをもち、粉特有のおいしさが感じられて何度もちぎって食べたくなる。信じられないほどたっぷりのバターをつけて。

甘み・塩気がちょうどよい。銀のトレイのうえには、お水といっしょに、ややぬるめのメランジュ。ミルクとエスプレッソを半々のウィーン風コーヒーだ。後口にほどよく苦み、唇のあたる部分はふわっとムース状。



「コーヒーは利尿作用があるので、一緒に水をたくさん飲むといい」のだそうだ。

1時間もいたら、照明がすべて付いて、店内が3倍ほど明るくなった。
常連客なのだろう、入口からむかって一番奥のソファーにつく中年の女性はおそらく出勤前か、さっきから新聞をよんでいる。
男性が、スタッフに笑いかける。

厨房ちかい奥の席のソファが毎日かよう人のための定席に違いない。