細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

インフラ、血管、高齢化

2014-01-22 17:23:28 | 教育のこと

講義や講演などで比喩を上手に使うことは大事なことです。アナロジーを適切に活用すると、本質を理解するための手助けにもなります。

以下は、すべてが上手な比喩、アナロジーというわけでは必ずしもありませんが、 今後少し考え続けてみたい視点なのでメモしておきます。

土木チャンネルでの藤井先生と太田国土交通大臣との土木談義で、人間の高齢化社会についてはこれだけマスコミも含めて国民がわーわー議論するのに、なぜインフラやものの高齢化についてはあまり重要視されないのか、が分からない、とのことでした。使い捨てする文化が蔓延してしまったことや、自分以外のことに適切な関心を持てない大衆化のなれの果てなのでしょうか。

もう一つ、インフラ(道路網、鉄道網、情報通信網、郵便ネットワーク等々)とは人間の体で言うところの血管のようなものです。これも誰かが言っているのは何度か聞いたことがあるように思いますが、今朝、シャワーを浴びていて改めて思いました。

人間の体が生きているということは奇跡に近いことだとときどき思います。無数の細胞が有機的に統合されており、しかも細胞は常に入れ替わっており、統合体は非常に高度な機能を発揮する。とても信じがたいレベルのマネジメントです。

この統合体が機能するために血管のネットワークが必要なのは当たり前で、頭だけで生きられるわけがないし、一つの細胞だけで生きられるわけもない。当たり前のことです。

血管ネットワークが劣化してくればメンテナンスも当然に必要。

徳山前東北地方整備局長は、東日本大震災のときに、日本国家にとっては左腕の大火傷、という表現をされました。国家から見ればまだ体のいろんな部分が健全であり、だから救援することができた。しかし、自治体レベルで見れば全焼に近く、とても自力で復活することは無理。

人間の体で大火傷を負えば、大至急治療するのが当たり前。

高齢化で人間の体の中には機能が低下してくる部分もあるとは思いますが、そのときに、機能が低下してきた部分を切り捨てたり、無視したりするでしょうか。むしろ、その部分の血流が良くなるように温めたり、マッサージしたりするのではないでしょうか。

過疎高齢化しているところにはインフラもいらないし、投資もいらない。そんなあまりに低レベルの意見がまかり通る世の中です。この国土の中で人間が自然に対して土木的に働きかけていないところなどごくわずかです。世界遺産級の限られたエリアのみ。働きかけをやめると国土は人間のとても住めないエリアに放置されてしまいます。壊死します。その状態で日本を営み続けていけると本心から思っているのでしょうか。おそらく何も考えていないに等しいのでしょうね。

ごくごく当たり前のことを、理解できない、理解しようとしない、見ようともしない大衆が多いのでしょうね。藤井先生も太田大臣もイデオロギーにとらわれた「思考停止」である、と指摘していました。

コンクリートを人間に例えたり、維持管理を医療行為に例えたり、ということはこれまでもよくやってきていますが、もう少し人間とのアナロジーを深く考えて、講義、講演等で活用してみようと思います。


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