ブラジルの政治危機の真相は
日本のマスコミの報道は「南米最大の経済大国ブラジルのルセフ政権が窮地に追い込まれている。汚職スキャンダルや深刻な経済不況で、政権支持率は10%前後に低迷。後ろ盾であるルラ前大統領の......
昨年、よく解らないままにルセフ大統領が弾劾され、テルメ副大統領が昇格した。旧勢力保守層の巻き返しでは無いかと推測した。国際労働財団の情報(メルマガ)によれば、新内閣においても閣僚や与党幹部の国営石油会社がらみのスキャンダルが相次ぎ、先月(4月)にはテルメ大統領自身に建設会社大手との間の疑惑が持ち上がり、支持率は大幅に低下している。ブラジルの経済情勢といえば、2016年のGDPはマイナス3.6%となり、2015年のマイナス3.8%に続いて、統計史上初めて、二年連続のマイナス成長を記録した(国家統計局発表)。昨年は、不況の続く建設業、製造業、サービス業などだけではなく、それまでは比較的好調であった農牧業、鉱業の分野もマイナスに転じており、過去1世紀で最悪の景気後退ともいわれている。
ブラジル政府の財政も急速に悪化し、地方などを含む政府の赤字は2014年から大きく拡大、2017年度には歳入不足が2千億ドルに達して政府機関の一部閉鎖も取り沙汰され、また、債務残高はGDP比も80%を超えると予想されている。テメル政権は、これに対し、年金、労働分野の改革のみならず、各種政府支出の削減や公共事業の縮小を含む大幅な緊縮政策を打ち出している。
4月28日、労働組合は、テメル政権の年金制度改革と労働規制の緩和などに強く反発、最大都市のサンパウロだけではなく、首都ブラジリア、リオデジャネイロをはじめ各地方都市でもストライキ、デモなど各種の行動が広がった。サンパウロでは、鉄道やバスなどの交通機関をはじめ幅広い産業でストが行われ、公立学校や銀行が閉鎖されたほか、デモ隊と治安部隊の衝突もみられた。21年ぶりとなる史上最大のゼネストとなった。