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万葉文化館 日本画展「万葉華模様」と併設展を観て

2013年05月15日 | 美術館を訪ねて

今年は天候不順でもう初夏というのに安定せず寒い日が続いていましたが、この日は初夏を思わせるさわやかな晴天。
気分よく出かけました。途中連休ゆえの混雑で渋滞が懸念されましたが、いつもと同じように1時間もかからず到着。駐車場の車も、幸か不幸かいつものように少な目でした。

今回の展示は館所蔵の日本画コレクションの中から、万葉歌に詠まれた花をテーマに選んだ「万葉華模様」と銘打っての絵画展と、写真家の荒木経惟操上和美の作品による併設展「うつせみの鏡 時空の舟 ―我・夢・影―」の二つの企画です。

期間は2013年4月3日(水)~6月9日(日)です。

でもこの絵画展、結論からいうと、館のコレクションの万葉日本画から25点の展示だけで、それに同じく館所蔵の大亦観風の『万葉集画撰』から小品が12点だけでいささかさびしいものがあります。
また、一口に万葉日本画のコレクションといっても玉石混交な感があり、加えて今回展示された大半の絵はこれまでも何度も見ているので新鮮味は感じられません。中には初めて目にしたものもありましたが、残念ながら余り感銘を受けなかったですね。

そんな中で、いいなと思ったのはこの作品↓でした。


絵は《春野》と題して、万葉集の巻頭歌で有名な雄略天皇の「こもよみこもち ふくしもよ」をテーマに描かれています。画家の名前は室井東志生です。上品で端正な絵で今回の展示では一番印象に残りました。
前にここで観たこの絵↓に一脈通じるものを感じます。


他の作品では、館のホームページで紹介されている↓の大野俊明の《清隅》とか


気品のある画風↓の箱崎睦昌の《藤波の花》が良かったです。


展示を見ていて気になったのは、額の横に掲示された花とか和歌の意味、作者の弁などを書いた解説の存在です。
うちのヨメさんもそうですが、かなりの人が、絵を観る前にその解説を読むのに時間を割いていて、肝心の絵のほうはチラ見程度で次の絵のほうに移動していました。他の絵画展でも同じような傾向が見られます。
絵というのはまず無心の状態で、絵に向かい合うことが大事だろうと思いますが、解説を読むほうに時間をかけるのでは本末転倒だと思いますね。絵の横の表示は、先入観なしに鑑賞するように、作品名と制作年程度で十分だと思います。

ところで、この記事を書くために少し調べていたらこんなサイトに行き当たりました。

運営されているのは明日香在住の方だそうですが、なんと万葉文化館創設時の奈良県知事!だそうです。
ホームページの下のほうの緊急報告・万葉文化館の改変問題というところを読んでいくと、これまで私が断片的に書いてきた万葉文化館を巡る出来事の背景にあるものが見えてきました。PDFファイルですが、中の青文字がリンクになっているのでページ間の移動ができて読みやすいです。

展覧会の開催回数削減だけのみならず、万葉文化館の施設自体の転用計画まで持ち上がっていたとはびっくりです。
施設転用計画は上記のホームページなど、関係者の努力で止めることができたそうですが、館に併設されていた万葉文化館研究所は廃止が決定。今は単なる係として事務職の係長と研究職員2名の体制になってしまったとのことです。

こういう話は今大阪をはじめ全国で起こっていますが、財政危機を理由に、真っ先に切り捨ての対象になるのが文化政策というのは本当に情けないですね。

さて展示の話に戻りますが、先に言った通り今回の展覧会はとにかく展示点数が少なすぎなのが残念でした。展示会場の終りのほうで大亦観風の『万葉集画撰』が展示されていますが、小品な上に書も画もあまりいいように見えず、いつも目にするたびに「これ、ヘタウマ?」などとヨメさんと罰当たりな感想を言い合っています。

続いて写真展ですが、観始めてすぐ、大阪国立国際美術館の近代美術の展示を連想してしまいました。


今となってはあざとい衒いだけが眼について、馴染めない作品ばかりで、テーマも繰り返しが多いです。
館のホームページにはインスタントフィルムの作品と書いていますが、これはポラロイドのことでしょうか?だとすれば発色やピントの甘さから納得ですが、その効果は余り感じ取れなかったですね。
とてもじゃないけど、テーマの「うつせみの鏡 時空の舟 ―我・夢・影―」の意味はくみ取れず、俗人な私たちを含め、居合わせた観客はみんな足早にこの写真コーナーを立ち去っていました。

で、観終わって、館内から周りの庭園を見ながら本館に戻ってカフェを覗いてみたら、なんとまた別の店に代わっていたのでびっくり。これで私たちが通うようになってから3度目ですね。

前は「ICHIE(イチエ)」という店でしたが、新しい店名は「SIZIN」(詩人?と読むのでしようか)といって「室生天然酵母パン」がウリのパン屋さんのようです。時間をかけて抽出する水だしコーヒーも目玉なようです。


メニューは、前の店にあった「ごはんメニュー」がなくなって、すべてパンのセットになっていました。ちょうど私たちが座っていた横のテーブルに来た老夫婦とその娘さんらしい三人連れは、いったん座ったものの、ごはんメニューがないと聞いてすぐ出ていきました。館の利用者の年齢層ではパンメニューだけでは苦しいでしょうね。

私たちは1,000円前後のこれ↓をオーダーしました。


サンドイッチの具は生ハムを使っていたりで良心的だったのですが、パンが分厚く生地もしっかり固め、しかも大きいので、両手でしっかり持って大口を開けてかぶりつかないとせっかくの具がはみ出てしまいます。なので、片手しか使えないヨメさんにはとうてい無理。皿に載せてパンをめくって食べようとしましたが、パンが大きく、それをちぎって食べようとしても、固めなのでヨメさんには出来ず、私がかわりに小さくちぎりました。

私だけでなく他のお客さんも、すぐ具がはみ出て落ちそうになるので食べにくそうな感じでした。
普通のサンドイッチのようにパンを一口サイズに切ってくれていたら良かったのですが。帰りの車の中でヨメさんは、「美術館では西宮の大谷記念美術館のカフェが一番!」といっていました。(笑)

食べ終わって、ミュージアムショップで絵葉書や本を買ってから、押し花の絵葉書と栞作りに挑戦しました。材料は付属の庭園の樹木の花々を使って館の職員さんが手作りしているとかで、発色が鮮やかでした。
私も作りました。↓絵葉書(センスなくて下手ですね)、と、


栞です。↓


終わってから、玄関前の庭園を散策しました。
この庭園での初夏の見ものは大きなヤマボウシですが、今年はまだつぼみのまま。↓


満開になれば見上げるような樹高で見事ですが、今年は遅れているようです。その代り、サトザクラがまだ咲いていました。
栞に使った花です。↓


今回は残念ながら絵画展としては物足りなかったですが、晩春・初夏の明日香の景色と、庭園の名残の桜、押し花工作が楽しめました。
帰宅して今年のスケジュールをチェックしたら、少なくなったとはいえ外部の画家の展覧会も開催予定になっているので安心しました。期待しましょう。

障害者でもゆったり楽しめる施設として、これからもささやかですが万葉文化館を応援していきたいと思います。みなさんも明日香に来られたら、ぜひ足をお運びください。展示棟の地下には工夫を凝らした展示もあり、万葉文化の世界が存分に堪能できると思います。

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