粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

繰り返される悲劇

2012-07-12 10:09:58 | 事件・事故・時事

埼玉県朝霞市で起きた幼児傷害致死事件。若い母親と同居する無職男双方の暴力、保育所や児童相談所の対応の遅れ、閉鎖的な隣人関係…。まるでビデオテープを見るように繰り返される虐待死の悲劇だ。

亡くなった男児は5歳、母親は23歳だから妊娠したのは17、18歳だ。若さに任せて出産したがすぐシングルになり、自分の快楽のために新しい男を見つけて同居する。しかし23歳の男は生活力がなく、精神年齢はさらに子供で、他人の幼児を疎ましく思い暴力をふるう。母親もそれに同調するばかりか、自分の日頃のイライラから進んで実児を虐待する。

幼児の名前は明日(あした)ちゃんという希望を抱かせる名前だが、この子には悲しいかな、明るい明日はなかった。母親はさすがに出産時は自分の体を痛めた子供に明日を託す気持ちはあったのだろうが。

もしかしたら明日ちゃんは、野球選手になってメジャーのオールスターに選ばれるほどの活躍をしたかもしれない。あるいはやさしい動物好きのお兄さんとなってバンダの出産にも関わっていたかもしれない。さらには新党をつくって政界で活躍するなんてこともあるだろう。

しかしこうした可能性が、母親と無職の同居男によって無惨に閉ざされてしまった。保育園や児童相談所の不手際がしばしば非難されるが、いくら関与を強めても自ずと限界がある。いうまでもなく悪いのはこの2人であることは間違いない。それと彼らの両親はいったどうだったのだろうという疑問が残る。こんな無分別な子供を育ててしまった責任は、本人2人と同じくらいにあると思う。

ところで昨日夜NHKテレビの「ためしてガッテン」で包丁の上手な使い方を特集していた。番組後半に自作のオリジナルケーキをきれいに切れず悩んでいた若い母親がでていた。それを5歳と3歳の姉妹がじっと見守っている。心配そうに、そして楽しそうに。なかなかうまくできず、中身もぐちゃぐちゃだ。しかし番組スタッフが「知恵」を授けたのだろう、父の日に夫を含めた家族団欒のときに見事に鮮やかにケーキを母親は切ることができた。大喜びする幼い姉妹と感謝の言葉をかける夫に、若いママは感涙にむせっていた。

これをみて家庭の幸福とは、こんな家族のささやかな心の触れ合いにあるのだということを実感した。明日ちゃんにもこんなおいしいケーキを食べさせてあげたかった、と思わずにはいられなかった。