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リタイアーのよもやま話

「どうしてと嘆いても、それでも、何ともならんだ事が┄┄あったな」

2016-10-10 22:06:24 | 読書



中沢桂「初恋」

しばし、綺麗な時間に、我が身を
浸して┄┄。

さて、今、畠中 恵の
「しゃばけシリーズ」を読んでいる。

そのなかの「ひなこまち」にあった
文章である。

高僧のつぶやきである。

寛朝が、ふと弟子を見た。

 「世には、ままならぬ事も多い。
秋英、例えば僧であるお前に、も
し好いたおなごが出来、親しい仲
になったら、大問題になるだろう?」

 たとえ大層真面目に、相手を思っ
ていたとしてもだ。

 「へっ、そうなんですか?」
 妖達が、戸惑っている。

「そ、それは勿論」

 秋英が、少し顔を強ばらせ、手
の上にある菓子を見た。江戸で女
犯を犯した僧は、日本橋で晒され
る刑が待っており、その後、破門
・追放になる。寛朝など身分のあ
る僧だと、もっと厳しい罰もあり
得るだろう。

「真っ当な気持ちから出た事でも、
どうにもならぬ事がある。
どうしてと嘆いても、
それでも、何ともならんだ事が┄┄
あったな」

そこで言葉を止めると、寛朝は、
いつになく優しく言った。

「やれ、桜が咲いて散るまでは短い。
故に、色々考えてしまうな」

若だんなも顔を、淡い色の春の花
へと向けた。

この、高僧の寛朝の言葉を読んで、
遠い昔にタイスリップした。

いつも、この言葉を、何度も何度
も繰り返し呟いたことがあったか
らだ。

あり得ないことだが、「生まれか
わったら」なんて言葉が胸をよぎっ
た。

時折、今でも、この言葉を呟くこと
がある。そして、薄れゆく遠い昔に
タイムスリップする。

 

遠い昔、とある職場にいた時、



この曲が流れた。

暫く、この歌声を繰り返し、聴いて
いた。

その後、少し時を経て、この
曲を作曲したビギンが録音したオー
ケストラバージョンを聴くようにな
った。

ビギン版は、違うアレンジで、間奏
のオーケストラの演奏が、胸を掻き
むしるような切なさとやるせなさを
湧き起こして止まなかった。

これは、個人的に、名盤思っている
が、その表現がすごすぎて、売れな
かったかもしれない。

心理状態によっては、首を吊りかね
ない狂おしい情趣だった。

買ったCDは、どこへいったのだろ
う?

その演奏を聴きながら、

「真っ当な気持ちから出た事でも、
どうにもならぬ。
どうしてと嘆いても、
それでも、何ともならんだよな┄。」

と、繰り返し繰り返し、呟いていた。


遠い昔の話だ。