朝日新聞の社説で、川辺川ダムを取り上げている。
利水に関する裁判で国が負け、諦めたためだ。ただし、国交省は治水のためのダムを諦めていないが。
そこで登場するのが、このフレーズ。
“ブナなどの広葉樹を植林して「緑のダム」をつくるのは代替案の一つだ”
私は、「緑のダム」の効用に関しても疑問を抱いているが、
ここでは「広葉樹」「ブナ」という言葉が出てくることに言及したい。
そもそも水に関して広葉樹と針葉樹に、たいして差はない。樹種によっては根の張り方の違いや生長速度の差はあるが、それなら広葉樹というくくりはおかしい。また生長の遅いブナを取り上げる意味はない。
ここにスギやヒノキなど人工林の樹種に対する差別の目を感じる。
いつの頃から日本人に、人工林嫌いが広がったのだろうか。
感覚的な好き嫌いだけならともかく、機能の差を持ち出すべきでない。
だいたいブナは、つい最近まで「低質材」だった。役立たずの木とされていた。
それが加工技術の進歩で、一躍木工素材として注目を浴びただけだ。
すると、水を呼ぶとか、落葉が土を作る、根が土壌を守るなど、本当かどうかわからない効用まで持ち出して「ブナ讃歌」が始まった。
この調子だと、今は持て余し気味のスギの間伐材が、加工技術の革新によって木材界の救世主になる日が来るかもしれないよ。
なお、「森林の洪水を防ぐ機能」についてもあまり期待しない方が良い。
森林は、せいぜい「傘」くらいではないかと思う。
傘をさすと、しとしと雨には濡れずに済むが、集中豪雨や台風には役立たない。同じ程度の役割しかないだろう。だから洪水を防ぐには、力不足だ。
(詳しいことは安形氏に任せます(^^;)
一つの樹種を神格化したり、万能扱いするのはもう止めよう。
利水に関する裁判で国が負け、諦めたためだ。ただし、国交省は治水のためのダムを諦めていないが。
そこで登場するのが、このフレーズ。
“ブナなどの広葉樹を植林して「緑のダム」をつくるのは代替案の一つだ”
私は、「緑のダム」の効用に関しても疑問を抱いているが、
ここでは「広葉樹」「ブナ」という言葉が出てくることに言及したい。
そもそも水に関して広葉樹と針葉樹に、たいして差はない。樹種によっては根の張り方の違いや生長速度の差はあるが、それなら広葉樹というくくりはおかしい。また生長の遅いブナを取り上げる意味はない。
ここにスギやヒノキなど人工林の樹種に対する差別の目を感じる。
いつの頃から日本人に、人工林嫌いが広がったのだろうか。
感覚的な好き嫌いだけならともかく、機能の差を持ち出すべきでない。
だいたいブナは、つい最近まで「低質材」だった。役立たずの木とされていた。
それが加工技術の進歩で、一躍木工素材として注目を浴びただけだ。
すると、水を呼ぶとか、落葉が土を作る、根が土壌を守るなど、本当かどうかわからない効用まで持ち出して「ブナ讃歌」が始まった。
この調子だと、今は持て余し気味のスギの間伐材が、加工技術の革新によって木材界の救世主になる日が来るかもしれないよ。
なお、「森林の洪水を防ぐ機能」についてもあまり期待しない方が良い。
森林は、せいぜい「傘」くらいではないかと思う。
傘をさすと、しとしと雨には濡れずに済むが、集中豪雨や台風には役立たない。同じ程度の役割しかないだろう。だから洪水を防ぐには、力不足だ。
(詳しいことは安形氏に任せます(^^;)
一つの樹種を神格化したり、万能扱いするのはもう止めよう。
http://forester.uf.a.u-tokyo.ac.jp/~kuraji/
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4806713007/
後者は築地書館から最近出た「緑のダム」という本なんですけど,この「著者たくさんオムニバス形式」の本を一読して,その結論を短く纏めることはできないでしょう.著者ごとに主張が大きく異なり(正反対といっていいものもある),緑のダム論争はまだ解決への道のりは長そうだという印象すら受けるでしょう.しかし大事なのは今こうして道しるべや大まかな地図を作っておくことあります. 研究の最先端・行政の対応・市民運動の動きetcを多面的に知ることができる本です.
私の専門はどちらかというと「遅い水の動き」なので,地下水や湧泉を扱うことが多いです.そうなるとこれは地質や地下地質構造がほぼ決まってしまい(具体的には,新しい火山だと極端に地下水が豊富),また,もちろん降水量変動(積雪・融雪も含む)の影響も若干受けます.問題は森林の種類と関係があるかどうかなのですが,これは地質要因に比べて影響が小さいので実証的に関係を明らかにするのは現時点では難しそうです.
なお,蔵治さん自身が勤めている東大愛知演習林での長期森林流域流量観測データをもとにして,数十年の森林の成長が流量(正確には渇水流量)を減らしてきたという研究が発表されたことがありました.これは蔵治さん自身によってデータを追加した結果誤りが指摘されています. では増えているかというと,これまたそうとは言えないという結論がでています.
現時点で,この流域では降水量の長期変動がこういった流量を規定してしまい(かつては渇水流量の年々変動は降水量の変動をそれほど受けないため樹種の変化・森林の成長の影響を検討しやすいと考えられてきた),森林の影響は,もちろん皆無ではないだろうがデータから実証的に検討することは現時点では困難であるとされています.
もっとも,それが地質的要因によって左右されているという可能性も考えられ,川辺川流域では地表流を実測しているということもその本では紹介されていました.
この種の計測はプロでもなかなか困難なのですし,得られたデータから必ずしも科学的にバッチリ答えがだされるとは限らないのですが,行政・市民・科学者が,感情論やなんとなく論ではなく客観的な「証拠」をもとに同じテーブルについて議論をしようとする姿勢をとりはじめているのはうれしいことです.
さて、安形さん、ありがとうございます。「緑のダム」の正否は、なかなか難しいようですね。さすが専門家、一つ一つ疑問を追っていくと頭が痛くなります。
先日、吉野に行った時に、川の流量が随分減ったという話題が出ました。それを移住者は「上流がスギばかりだからだ」と、人工林の問題点と捉えていました。
ところが地元の森林組合の人は「上流の木がよく育って水を吸い上げているから」と説明しました。
同じ事象でも解釈が正反対になってしまう。森と水の関係は難しい。
同じく、人工林にもろくでなし(笑)があります。指摘された管理されていないヒノキ林はその典型。逆に管理されたヒノキ林は、天然林より生物多様性が高いという調査結果も出ています。だから一概に「人工林」とくくれない。
海野さん、今回の水害、大変でしたね。先の新聞社説でも、「治水は必ずしもダムによらなくても可能ではないか」とありますが、それは間違い。「完全な治水はダムを作っても森をつくっても不可能」が正しい(笑)。
おっしゃるとおり、洪水を防ぐよりも冠水しても被害を最小限に抑える仕組みが必要でしょうね。
頭を隠したくなります。作業道を入れたぐらいで崩れるほど急斜面に安易な作業道を入れないのは、当たり前なのですが。県から指示があったからとか、予算がないなどと、言い訳をつけながら安易な作業路を入れています。やっぱり、崩れてます。
このような事態を誰がどのように責任を取るんでしょう。他人になりすました、ずるい発言ですね。
「緑のダム」の言葉に過剰な期待を込めて、それが事実となり新聞記者の頭の中を歩き始めているのでしょうね。
地球温暖化の原因についても似たような危険性を感じてますが。
うらやましいなぁ・・・笑。
雪山は未だ「中世」ですよ。
宗教と科学が未分化の。笑。
科学の問題というより
社会の問題にシフトしがちですね。
そこに価値観という名の感情が被さり、
さらに感情を利用するビジネスが入り込む。
ブナを特別扱いするというのは
感情+ビジネス、以外何者でもないでしょ。
環境ビジネスはもはや巨大ですしね。
それぞれ研究現場では、それなりの成果は出しているはずです。
でも、それが山の現場に反映しないだけでなく、マスコミや一般市民の間にも知識として浸透しない。
今回の総選挙も、「政策選択」だといいつつ、実は小泉さんの思い切りの良さとか、立ち振る舞いに左右されたんじゃないか。候補者も、すぐ変節するし。
>ブナを特別扱いするというのは
>感情+ビジネス、以外何者でもないでしょ。
>環境ビジネスはもはや巨大ですしね。
環境ビジネスじゃなくて、感情ビジネス(笑)。
環境論ではなく、感情論か。
ちょっとニヒルになっちゃったかな。
ブログ「代替案」の管理人です。私のブログでも森林問題を若干扱っております。
川辺川ダムをはじめ緑のダムの運動は、スギやヒノキの放置人工林を、適切に間伐して、下草や潅木が繁茂した状態になれば、雨水の土壌浸透機能と貯留機能を回復させて、20-30%程度の洪水ピーク流量のカットが可能であるというものです。
ピーク流量を20%程度カットできれば、だいたいにおいてダムの必要性をなくすことができます。
ですので、緑のダム論者は、スギやヒノキを悪者にして、「ブナを植えろ」などと叫んでいるわけではありません(もちろん中にはそういう人もいるかも知れませんが・・・)。
田中さんの書かれたことについて
>ブナなどの広葉樹を植林して「緑のダム」をつくるのは代替案の一つだ”
ブナという言葉を入れたのは、多分朝日新聞でしょう。代替案に具体的な種が入っていた記憶はありませんから。ま、そんな話にはおいといて・・
安形さん、お久しぶりです。FADVENにいたKOKOです。
先日熊本県人吉市で行われた「青の革命と水のガバナンス第13回研究会」に参加して、蔵治さんのお話を聞いてきました。
森林の遮断・蒸散・先行水分・湿度や温度による蒸散の違い・クラスト・地表流など、ぼんやりしていた言葉の意味が頭の中でずいぶん整理されました。
また、現在では治水への期待で使われる「緑のダム」という言葉ですが、以前は貯水の意味で使われることが多く田中さんにも批判されました。
ところが、これを言い出したのはもともとは林野庁だったのだそうですね。聞いてびっくりでした。
休憩時間に蔵治さんと話す機会があり、水文学というものの存在を知ったきっかけが安形さんであり、しかも「緑のダム」を否定された事が尾を引き、いまだに「何を信じていいのら・・・」状態であることなどを話して、苦笑いされてしまいました。
でも、安形さんに否定されたことは良かったと思っています。感情や希望的な予測に頼ず、根拠を大事にしたいと思うようになりましたから。
そうそう、住民討論集会では太田猛彦さんの話を3回も聞く機会にめぐまれ、資料もたくさんもらいました。
ダム反対運動はつらいことが多いけど、こうやって田舎にいては聞けないような専門家の話が聞けたりして、たまにはいい思いもするんだなぁとちょっと喜んでいます。
あ、太田さんは国交省側の人だけど、話はそれなりに面白く興味深いものがありました。
森林水文学って面白いですねぇ。新しい学問なんでしょうか、新しいことがどんどん出てくるような気がします。
最近よく思うのが、山の地質(と言いきって良いのかな?)や傾斜と保水力の関係です。
知れば知るほど新しい興味がわきます。
ちょっと話を詰め込みすぎました。すみません。
もちろん,森には森なりの効果があることは確かです(ここで言う森には土層も含みます).そして,いついかなる時もダムが唯一の解というわけではないということも承知.というわけで緑のダムを否定はしません.
しませんが,それが万能だというつもりももちろんない.
FADVEN当時は,緑のダム礼賛発言が主流を占めている時があったかもしれず,それに一石を投じるためにあえて過激な発言はしたかもしれないです・・・
>山の地質(と言いきって良いのかな?)や傾斜と保水力の関係です。
火山湧水マニアのあがたしにとっては当然興味有る問題ですが,この分野全体における長い間の研究対象ですね.
ただ,研究に当たっては「保水力」という言葉の明確な定義をする必要があります.人によって全然違う意味だったりするので・・・
>知れば知るほど新しい興味がわきます
まったく同感です. 職業的研究者としては,知れば知るほど分からないことが増えてくるという面もありますが(笑).
#まぁそういう分野でなくちゃ面白くない