素の木箸についても考えてみた。
実は、私の手元には、クヌギの箸がある。ある工芸家を取材した時にいただいたものだが、その工芸家は、雑木で器や家具を作る運動を行っていた。とくにクヌギは、木炭の原木や椎茸のほだ木としては重要だが、木材としては軽んじられている。しかし、ちゃんと加工すれば、立派な素材であることを示していた。
実際、クヌギは凄いのだ。箸を見ても美しい文様があり、惚れ惚れする。ケヤキやブナ材より私は、好きだな。
……ということで、素の箸。本来箸は、古事記の時代から木を削ったまま使うものだった。2本1組の箸である。それが江戸時代に入って塗り箸が生まれたが、庶民はずっと素の木箸だったはずだ。明治になって割り箸が商業化された(割り箸の誕生に関しては諸説あるが、300年以上前に誕生しているのは間違いなさそうだ)。
もちろん素の木のままでは、長持ちしない。ほとんど使い捨てだった。我が家では、国産割り箸を、割ってからも一度では捨てず1~2週間は使うが、それによく似た使い方をしていたのではなかろうか。
そこでオイルフィニッシュという選択肢も生まれる。塗料ではなく、オイルを塗り込むことで木の材質感を残しつつ、長持ちさせる。もっともオイルの安全性とかは考慮せねばなるまい。浸透性のポリプレマーという手もあるだろう。
ただ、こうした箸が、割り箸に取って代わるかと言えば、あまり可能性はないように思う。営業用に使うのなら、塗り箸と変わらない弱点があるからだ。それに洗って箸立てに入れると、常に同じ2本をセットにできない。客は抜き取るのに抵抗感をもつのではないか、と想像する。