森林ジャーナリストの裏ブログ

表ブログに書けない、書く必要もないドーデモ話をつらつらと。

民主党の森林・林業再生委員会

2006-05-20 00:45:16 | 政策・行政関係

東京で国会議員事務所を訪れた件だが、正確に記せば、前田武志参議院議員の事務所である。

その理由は、何も国会図書館に関する愚痴を言いに行ったのではなく、その晩に開かれた民主党の『次の内閣』農林水産部門、森林・林業再生委員会の会合にオブザーバーで出席させてもらえることになったからだ。

 

政策秘書の鈴木さんの案内で、衆議院の議員会館会議室に行くと、そこには何人かの議員らが集まっていた。名簿には14人ばかりの名が並んでいたが、出席者は8人くらいか。そして2人は途中退座。結構こじんまりした会合である。
今回は第1回目ということで、事務的な手続きが決められた後に、菅直人議員(肩書は、民主党農林漁業再生本部本部長)が、「これまで勉強した日本の林業の問題点を整理してみます」と、黒板に向かいつつ、解説した。

 

それが、なかなか鋭いのだ。菅議員が林業を語るだけでも意外感があるのだが、決して通り一遍ではない。
まず「日本では、林業が成り立っていない」とずばりと言い切った。そして、
1、森林の生長量と伐採量の持続的計画性がない(いわゆる恒続林思想がない)。
2、林野庁の出している二酸化炭素削減(3,9%を森林が吸収)案は、政治的にはともかく科学的には何の意味もない。
3、国有林はおろか、民有林でも本来の「経営」がほとんど行われていない。
4、国産材の利用が進まないのは、ニーズに応えていないうえ、安定供給に欠けるから。そのために必要な林道・作業道の普及も遅れている。
5、用材だけが林業ではなく、森林の廃物の利用(バイオマス・エネルギーを含む)がなければ林業経営は成り立たない。

 

細かい点に関しては、いろいろ突っ込み所があるのだが、本質はそのとおりだと言ってよいだろう。すでに各地を視察して、現場の声を聞いたようだ。

 

その後の議員間の意見交換でも、集まっていた議員は、意見の差はあっても、前提としての認識に大きなズレはなさそうだ。
ただ、前田議員が「森林と市民をつなぐべき森林組合が腐っている」と発言したとき、みんなはピンと来なかったようだが、私は思わず噴き出した(^o^)。

 

実は、私は5年前に民主党の同じような会の勉強会に講師として招かれたことがあって、その時私は、林業が産業として成り立っていない点を力説し、経済的概念からの森林政策を提案した。『日本の森はなぜ危機なのか』と重なる内容である。
が、その際の出席者(議員)は、あまり理解できないような反応だった。森林は税金をつぎ込んで守るべき、という発想が強かったのだ。
だから正直言って、今回の会議の内容もあまり期待していなかったのだが、嬉しい誤算となったようだ。(ちなみに、当時の出席議員は、今回とは全然違う。多くは離党しちゃった。)

 

ただ基本認識はよくても、その改革をどのような政策としてまとめられるのかは別問題。あくまで経済性を重視すれば、林業は立ち直っても見捨てられる森林が出るだろう。地域経済全体を考えないと肝心の森林は守れない。かといって、大規模な資金投入は逆効果だと思うし、そもそも金もない。
今後どんな政策を打ち出すか注目しよう。そして、実行性も。このブログでも話題にした、法制局や既得権益の壁をいかに乗り越える策を練るか。誰も反対しづらい、WinWinの策に期待している。

 

ちなみに、内輪の会合だからだろうが、思わず「林業のことやっても、票にはつながらない」という声も出た(^^;)。それでも「来年の参議院選挙の前までに、山村地域に希望が湧くビジョンを打ち立てたい」とのこと。森林ビジョンの立案は、参院選挙の一人区対策でもある。政治の、表裏の生々しさがある。


ともあれ都市型政党と思われている民主党が、農山村問題に熱心になるのは、結構なことである。党首が、岩手出身の小沢氏になった点も効いているかな。