2012/6/3 久し振りにO橋君と同行するので、しかも彼とは初めての沢登りとあって、どこの沢に行ったものかとっても苦慮しました。というのも、日曜日の天気予報がまったく芳しくなかったからです。降水確率はどこも50%以上。
小雨に降られるのは覚悟の上で、どうせ濡れるのだったらと、水根沢谷も候補に挙げてはいました。でも、当日の気温は低くなるらしい。奥多摩町の予想気温は4月下旬ころの気温だというので「水根沢はちょっと無理だよ~ぉ~」と考えるようになってきました。
日帰りなのでそんなに遠出はできません。そんな中、山梨県東部の天気予報は、比較的早く昼前には雨が上がり、昼過ぎには晴れ間も出るらしい。じゃあ、そちら方面の沢をと探し出したのが、日川の支流、大蔵沢の石間ノ沢だったのです。探し出したと言っても、情報は全くありません。地形図上で、易しげでなだらかな広葉樹林の中を流れる沢だろうと、見当をつけただけの話です。
ところが、若いO橋君の“本格的沢登りへの熱望”が単なる沢歩きに甘んじることを良しとはしませんでした。水根沢谷の寒さなんか気遣い無用ということならば、「まっ、いいか」と考えをコロリと変えても僕自身の抵抗感はまったくありません。
日曜日の朝、雨は降っていませんでした。雨予報の根拠となっていた梅雨前線の北上が思ったほどではなかったようです。
少しでも気温が上がってからと、いつもより遅い出発です。でも、やっぱり気温は低い!
▲そして、今日はN澤さんも久し振りの参加です。彼はそれなりのレベルの山登りを密度濃く実践していますから、大丈夫でしょう。
水根集落の奥にある沢沿いの広場で沢支度を整え、入渓です。10:14ころ。僕にとって3年ぶり10数回目の水根沢谷。
▲最初の滝が出て来ました。ここは簡単に登れます。10:22ころ。
▲すぐ続いて釜と滝があります。O橋君が釜の左端を進みました。10:25ころ。
あれ? おーおーおー! 少し釜が深くなってる!
そうなんです。水根沢谷は2003年だと思いますが、右岸支流のフジマキ沢上部が大崩壊。それで、それより下流の釜などはほとんどが土砂で埋まってしまいました。
本当は泳がなければならないほどにここは深かったのです。N澤さんが左手で残置のシュリンゲを持っていますが、3本ほどある残置を手掛かりに水面付近のスタンスを使ってトラバースし、右足をO橋君の先に見える平らな場所に伸ばし、微妙なバランスで左へ直角に曲がって進むのです。泳いで滝へ取り付く人もいましたが、まだ遡行がスタートしたばっかりですし、泳いで全身濡れるのも嫌なので、この左壁をへつったものです。残置のシュリンゲを使わなければ、Ⅴ-級くらいだと思います。
まあ、もちろん釜の手前右のリッジを使って簡単に巻くことも可能なんですけれどね。それは二人のために黙っていました。
▲へつりをするN澤さん。10:38ころ。見た目よりホールド、スタンスともに豊富なので易しい。
水根沢谷は易しい沢ではないのですが初心者も連れて来やすい。それは落ちたとしても、ドボ~ン!となるだけの場合が多いから、意外と安心なのです。N澤さん、ご免なさいね。
▲水根沢谷は美しい沢でもあります。水の流ればかりに気を取られずに、時折、広い風景(空は狭いのですけれどね)を見ても欲しいのです。10:48ころ。
▲水根沢谷にはこんな状況が幾度も現れます。ただの小滝に過ぎないのに、深い釜や瀞があるせいで困難度が増し、楽しみも増すのです。N澤さんもここの突破に格闘中!
上の写真のもう少し先で岩に取り付きます。10:54ころ。左へトラバースしながら、小滝を越えるのですが、足が滑ったのでしょう。ドボ~ン! 10:58ころ。
僕としては笑うしかありません。水根沢谷はこうやって楽しむ沢なのです。でも、N澤さんは必死なんです。真剣なんです。笑い事ではありません。僕もO橋君も1回もドボ~ンしないので、ちょっと可哀想でしたね。もう一人、ドボ~ン仲間を連れていくべきでした。反省。
▲少し高さのある滝ではザイルを出します。O橋君にとって沢でこのようなザイル操作をするのは初めての体験。いい勉強になっています。11:09ころ。僕は使いません。
▲4mナメ滝。ナメ滝左をシュリンゲに体重をかけてへつることもできますが、一般的には水が渦巻く釜に浸かってナメ滝右の岩場を登ります。
上の写真はO橋君が釜を渡っているところ。11:24ころ。流木が渦に捕まって下流に流れなくなってしまっています。
下はN澤さんが岩場を登ろうとしています。11:32ころ。O橋君はもう少し左を登りました。僕は同じところです。ホールド、スタンスがN澤さんには少し小さいかもしれませんね。Ⅳ級くらいでしょう。
▲狭いゴルジュの陰に隠れてよく見えませんが、大滝なんです。11:43ころ。そんな雰囲気は全くありませんけれどね。ガイドブックには2段10mとあります。どの滝との2段なんだか、どこまでで10mなんだか?よく分かりません。昭和54年発行の『東京周辺の沢』では「15m大滝ナメ」となっています。そんなに高さはありません。
この滝は滝身を両足突っ張って登っても簡単です。左上の木の下の枯れ葉が積もっているあたり沿いに登り、懸垂下降してもいいですし、半分くらいの高さで小バンドを利用して小さく巻いても大丈夫です。僕たちはザイルを出して、最後のルートで巻きました。
▲O橋君が大滝で使ったザイルをしまっている間に、僕とN澤さんは先に進んでいます。写真のところを僕は先に登ってしまったのですが、ザイルを持っていないのでO橋君を待っているところです。岩がまあるいのでザイルを出してあげた方がいいと判断したのです。
O橋君ですが、早くザイルをセットしなければと少し気が焦ったのでしょう。唯一ここで1mほどの滑落をしました。両膝を打ったようです。何ともなかったようでしたが・・・・。12:02ころ。どんな一瞬にも注意を!
▲ゴルジュを突破し、やっと人心地つける場所に出ました。初めての休憩です。そこで吃驚! 3人の持っているテルモスがみんな同じじゃぁないですか! サーモス社製の山専ボトル。底と持つあたりに付けるゴム製品も同じものですし、ご丁寧にもカラーも3種類そろっています。何故にこのテルモスが山専用なのかの講釈もありましたよ。12:33ころ。
▲途中で立派な家が建っていました。これは作業小屋といった次元ではありません。12:40ころ。この横の沢がフジマキ沢だと思われます。
▲再びのゴルジュ突入です。12:42ころ。
▲もうこれくらいは普通ですね。12:50ころ。
▲O橋君がN澤さんにホールドやスタンスの指示を出してあげています。12:56ころ。
▲半円の滝です。まずは左の岩場から越えました。13:16ころ。
▲ザイル操作を終えたO橋君は今度は半円の滝にチャレンジしました。途中で足を滑らせたら、ウォータースライダーみたいに下の釜へダイブします。それも楽しいでしょうね。
でも、O橋君はそうならずに完登! パチパチパチ。13:24~13:26ころ。
▲沢沿いにも時折ヤマツツジが咲いていました。13:29ころ。
▲最近のガイドブックでは半円の滝通過後、仕事道を登山道へ上がるように書いてあります。でも、水根沢はその上流もまだまだ面白い。
この2段の滝などもその一つ。O橋君が登っている1段目はまだ易しい。13:35ころ。でも、N澤さんがフォローしている2段目はⅣ級くらいあるかと思います。13:49ころ。写真のN澤さんのように水流を登らずに、水流左の壁を登るのが正解でしょう。
N澤さんは岩とも水流とも戦っていましたが、勝ち目が見えてこなかったので、退却することにしました。1段目登って右奥から小さく巻けるのです。
▲2段の滝上で合流しているアシダキ沢から登山道へ出ることも出来るのですが、まだ時間も早いので、ハンノキ沢まで足を延ばすことにしました。これまでのゴルジュ連続に比べると、渓相もずいぶん穏やかな感じになって来ました。14:07ころ。
▲それでも、この程度のへつりは出て来ます。14:11ころ。
▲N澤さんに疲労の色が濃く見えるようになったので、ハンノキ沢までは諦めることに。途中の支尾根にかすかな仕事道が見えたので、そこから登山道へ上がることにしました。14:58ころ。
水根バス停16:20のに乗るつもりだったのですが、計算しなおすと、15:37に間に合いそうです。少しだけ急いで、余裕で乗ることができました。
奥多摩駅に着くと、「天益」へ直行です。Bu、Bu、Bu、But、満席です。入れな~い! あっさり諦めて、いざH島へ。駅前の九州の料理と酒の店へ。
電車の中で各自のBMIを計算しました。僕がトップの23くらい。O橋君が20くらい。N澤さんは18ちょっとです! そんな細身のN澤さんを、はたから眺めていて可哀想とは思いつつも叱咤激励するだけでしたが、沢の中での3分の2くらいは震えていましたね、N澤さん。数回のドボ~ンで全身水浸しで、しかも痩せているとあっては、今日の低温の影響をいちばん受けていたのがN澤さんだったのです。
かく言う僕も半分近くは震えていました。O橋君がちっとも震えていなかったのは若さゆえですかね。
「絶対にビールは無理だ」と言っていたのに、乾いた衣服に着替えをし、電車の中で徐々に温まって来ると、居酒屋ではやっぱり「とりあえず、ビール!」となりました。ビール苦手の僕は黒糖焼酎「長雲」のロック。