ザイルと焚火と焼酎と

ザイルを使う登山にちょっぴり憧れ、山中に泊まると焚火を囲み、下山後は焼酎でほのかに酩酊。いい加減なのんびり登山の日記です

沢登りでは今年初めて北秋川の白岩沢でザイルを使用しました

2012年05月30日 | 沢登り/多摩川北秋川水系

2012/5/27  S子の足の調子も先週の沢では問題がありませんでした。というわけで、先週よりは5割増しの長さの沢を目指します。北秋川最奥の白岩(しらや)沢です。ネットで調べても2、3件しかヒットしない、情報がほとんどない沢です。『奥多摩』の著者・宮内敏雄さんも「目星い滝もない沢である」としか記していません。

でも、昔からとても気になる沢で、いつか行ってみたいと思っていました。北秋川の源流は月夜見沢だと言われていますが、入渓点の落合橋から眺めると白岩沢の方が本流に思えて仕方がないのです。白岩沢は沢と接して沢のほぼ中間まで立派な道路がひっついていますから、遡行対象はその上流部だけになってしまいます。出合から遡行可能な月夜見沢に比べるとちょっと残念ですけれど、気楽に楽しめる距離なのでまあいいこととしましょう。

公共交通機関でのアプローチは武蔵五日市駅からのバスですが、これが6:32と9:27しかありません。いつもはもっと仲間がいますし、タクシーを利用して8時前後に駅をスタートするのですが、今日は二人だけなのでそうもいきません。本当は6:32発のバスで行きたいのですが、前夜用事があって帰宅が10時過ぎになり、それから夕食を食べたりしたので、9:27のバスにしたという次第。終点藤倉までは50分近くかかります。

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▲藤倉バス停は惣角沢へ少し入った道路にありますから、北秋川本流に戻ってから上流へ向かって歩きます。以前、そこらへんを間違えてタイムロスしたことがありました。月夜見沢遡行のスタート地点になる落合橋を過ぎたら、白岩沢です。道路から眺める限り、単なる沢歩きにしかならない渓相です。さらに進むと、右へ登って行く道路が別れる地点に着きました。10:53ころ。写真は振り返ってみた様子です。

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▲やがて土の林道になりました。11:00ころ。

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▲さらに山道に変わります。11:02ころ。

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▲山道が沢から離れそうになったので、沢へ下りました。標高720mあたりです。今日は遅いスタートになったので、いつもほどはのんびりと出来ません。11:10ころ。

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▲早い昼食と装備の装着で30分以上はかかります。まずまず佳い雰囲気の沢です。期待を抱きながら歩いていますから、こんな滝の連続に出遭うと喜びも一入ですね。11:55ころ。最初に見た感じでは3段の滝かなと思いましたが、実際に進んで見ると下が2段の滝で上の滝とは離れていました。2段の滝は1mと2mです。2m滝は流れの右の岩が脆くて直登出来ません。左を小さく巻くのですが、これも少々いやらしかったです。

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▲上流に見えていた滝がこれです。5m。12:04ころ。岩をチェックしてみましたが、すぐ下の滝のようにボロボロと岩が剥がれるようなことはありません。流れの右を登ることにします。S子にはザイルを出すこととし、僕がザイルを引きながら登ります。見た目でⅢ級-くらいだろうと思いました。実際に登ってみてもそのくらいなのですが、若干の岩の脆さと落ち口の滑り易さとがあって、主観的にはⅢ+くらいはあるでしょうか?

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▲S子のフォロウです。ザイルは8ミリ×30m。12:19ころ。今年初めて沢でのザイル使用です。ザイルを使うと少し充実感が生まれますね。

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▲ザイルセットの方法に満点の正解はないと思っています。この5m滝では、いちばん近くにあった大きな木の幹に支点を取り、まずは長めに伸ばしてセルフビレイを取りました。セルフビレイ側(左)のザイルの途中にフォロワー用の確保支点を作って確保します。

大きな木を支点にしていますから、ボディビレイにこだわらなくてもいいと思います。それに、セカンドのビレイですし。

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▲この辺りの山林も里に近い訳ですから、ご多分にもれず植林帯が多くあります。したがって、倒木もあり、沢も荒れます。倒木がうるさい箇所ではこの写真のように仕事道がすぐそばにあったりして、利用させてもらいました。12:33ころ。

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▲標高770m付近で北からの大神宮ノ沢を合わせてから再び滝が連続するようになります。12:38ころ。

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▲5m滝です。流れのすぐ右を登りました。12:39ころ。

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▲続いて現れた滝です。6mほどでしょうか。12:42ころ。

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▲上の写真4枚のナメは12:44~12:49ころのもの。ナメが連続していて、白岩沢でいちばん美しい流れだと思います。

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▲ここは標高825m付近の二俣です。12:52ころ。右に見えている流れは狢岩(むじなや)沢、左が本流の呼び名を変えて仏岩沢です。ここでしばらく小休止です。

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▲まだ佳い渓相は続くようです。ナメ小滝が現れます。13:07ころ。

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▲ホウ!ホウ!ホウ! と、文字にし難い歓声が僕の唇から弾き出ました。大滝の出現です。この滝の存在だけはネットで知っていましたから、まさに期待通りの姿です。13:09ころ。

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▲大滝前衛の小滝です。13:11ころ。大滝の真下まで進みましたが、結局戻ることになりました。この小滝群の下降もちょっとだけいやらしい。

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▲大滝です。13:14ころ。15mはあると思います。大滝が登攀出来そうなら、登攀するつもりで来たので、ハーケンとハンマーも持って来ています。流れの左がルートになるのでしょうが、案の定、ハーケンの姿なんかまったく見えません。

少し遠目から眺めた時には、登れそうに見えていました。すぐそばまで来てよ~く見ても、やっぱり登れそうに見えます。ところが、周囲の地層を見ると、奥に高く、手前に低くなっているようです。つまり、逆層です。

オ、オ、オ、と、今度はシビアな目で再び岩を眺めました。小テラスに見えていた場所が今度は外傾し安定して留まれない場所に見えて来ます。少し離れて、再度見直すと、上部の小テラスらしき場所もヤバそうな場所に見えて来ました。

この滝を登るのならば、ハーケンももっとたくさん持って来なければ駄目でしょう。ザイルも9ミリザイルが必要のようです。

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▲大滝の登攀はあっさりと諦め、高巻きを開始しました。小滝を3つほど下降し、左岸に取り付いて高巻きます。写真は高巻きし終えて、沢床に戻るところ。13:31ころ。

沢の流れが途絶えている個所が、大滝の落ち口です。

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▲大滝の上流では植林帯が沢に接近するようになりました。倒木も多くなり、沢身を歩けなくなることも多くなります。13:38ころ。

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▲作業小屋も現れたりします。14:09ころ。

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▲巨大な岩が出現しました。水流は岩の左側ですが、沢とは関係なく、ただゴロンと存在しています。14:15ころ。

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▲この大岩を右から越して、裏側の大岩の姿にまた驚かせられました。14:21ころ。波のように水平な重なり合う模様や、人が入り込んで座禅修行でも出来そうな穴が開いています。

家に帰って宮内敏雄さんの『奥多摩』を読むと、出ていました。この岩は仏岩と呼ばれているのだそうです。「仏岩は沢の真中にある巨岩で、俚人がこの岩の上で小石を何気なく蹴転がしたら、斜面を上部に転がったなどの怪譚があるのである」

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▲ウツギです。14:25ころ。茎の芯が中空になっているので空木(うつぎ)と呼ばれるのだそうです。また、旧暦の卯月(4月)に咲くので「卯の花」とも呼ばれます。

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▲チゴユリ(稚児百合)です。花言葉は「恥ずかしがりや」「純潔」だとか。14:31ころ。

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▲沢の倒木やボサも増えてきて、沢底を歩くメリットが少なくなってきました。左岸の急登を登ることにしました。14:45ころ。

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▲倉掛尾根に沿って走る風張林道に飛び出しました。15:04ころ。この先に風張峠があります。予定通りの場所に出たので満足です。

利用できるバスの本数が少ないですから、最悪でも16:00までにはここに到着するつもりでした。休憩時間も少なめに歩きましたから、余裕の到着。

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▲最初はマイヅルソウ(舞鶴草)かなと考えていたのですが、マイヅルソウは葉の形がハート形でそれこそ鶴が舞うような形だとのこと。

これはユキザサ(雪笹)なのだそうです。葉っぱが笹の葉のようですね。15:57ころ。

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都民の森からのバスが16:45に出ます。まだまだ時間的には余裕。でも、ゆっくり歩き過ぎたのか16:30頃になっても建物が見えて来ません。すると、大きな音量で放送が聞こえてきて、閉園時刻が16:30であることと、バスの発車時刻が16:40!!だと言うじゃありませんか!?

建物も見えて来て、16:45なら余裕だと思っていたのに、この放送です。ゆっくりと歩いていたのでは間に合いません。急ぎ足で、最後になると僕だけ先行して走ってバス停に向かいました。

本当に罪作りな放送ですよね。やっぱり16:45じゃあないですか! 最後に少しだけですが走って損をしました。

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武蔵五日市駅へ直行するバスだったので、打ち上げはH島でしました。九州の料理と酒が出る店です。少~し高いのですが、気に入っている店です。ここには奄美大島の黒糖焼酎ではお勧めかつ稀少な「長雲」が置いてあるのです。ロックで飲むと、黒糖独特の素朴で甘いような香りと味が広がります。この日は数量限定でキビナゴのから揚げもあり、美味しく頂きました。


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