ザイルと焚火と焼酎と

ザイルを使う登山にちょっぴり憧れ、山中に泊まると焚火を囲み、下山後は焼酎でほのかに酩酊。いい加減なのんびり登山の日記です

ウェストンの槍ヶ岳登頂横尾本谷ルートの解明―――初日はグダグダのんびり 1/4

2014年08月25日 | ハードハイク/北アルプス

まずは次の写真を見て下さい。

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今回の山行で横尾のコルに立った際、目に飛び込んで来た槍ヶ岳です。
全ての始まりは20年近く昔に初めて横尾本谷右俣を遡行し、横尾のコルに立って抱いた印象が出発点なのです。どんな印象を抱いたかというと、「このまま山腹をトラバースすれば、槍ヶ岳への近道になりそうだ」というもの。
そのことは今回山行を共にしてくれたK松さんにもすぐに語った記憶があり、いつの日か歩いてみようと、漠然と考え始めていたのです。

その後、ウェストンの著作に接する機会があり、彼の槍ヶ岳登頂横尾本谷ルートが僕が辿ろうとしているルートと同じではないかと思い始めました。
つまり、個人的な思い入れルートという意味合いだけではなく、ウェストンが辿ったルートを再トレースするという、大袈裟に言えば歴史的意義も加わったのですね。

という訳で、この地図をご覧ください。

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最初の写真は横尾のコルから撮ったものでしたが、槍ヶ岳の左に見えている雪渓は大喰カールですね。そして、地図の赤線はウェストンが辿ったと僕の推測するコースです。
「大喰峠」という名称は公式には存在しません。ウェストンが著作の中でも述べていますが、彼が個人的に命名した地名なのです。

僕が彼の記述を読んで推測したコースなのですが、誰が読んでもそのように考えられるに違いないはずなのですけれど、実際にはそうではありませんでした。
例えば、手元にある僕の本で『ヤマケイアルペンガイド 上高地・槍・穂高』(2000年発行 山と渓谷社)には次のように書かれています。
「日本アルプス探険期にあっては、かのウエストンとその一行がこの谷に入り、天狗原を経由して槍ヶ岳に登ったという歴史的な意義を持つ登路である」
微妙にぼかして書いてありますが、厳密に言えば天狗原は経由していません。どこまでが天狗原かはよく知りませんが、百歩譲ったとしても、「経由」したのではなく、「かすめ通る」くらいにしか言えないと思います。
また、『現代登山全集2 槍 穂高 上高地』(昭和36年初版発行、東京創元新社)には、
「横尾谷をつめ雪渓にでて(中略)現在の横尾尾根天狗池鞍部(横尾のコルのこと)あたりに立ったものであろう。一行はこの鞍部を越えて槍沢に下り、(中略)こうしてウェストンはいまの天狗池鞍部に立って、穂高連峰の一角ははじめて踏まれたのである。したがってこの鞍部はウェストン乗越と称されてもしかるべきところなのである。ウェストンは(中略)この乗越に『大喰峠と命名、高度約一万フィート』と記している」と記されています。書いているのは山崎安治氏です。
横尾のコルは約2700m、フィート換算すると8858フィートぐらいです。ウェストンの高度表記は比較的正確ですから、彼なら「高度約9000フィート」と記録するはずです。
同じ本の中で山川淳氏の担当している各コース説明にも次のように記されています。
「梓川からでも、ほとんどとられていないが、ウェストンの選んだコースがある。横尾から涸沢へ行く路をとり、丸木橋を渡らずにそのまま本谷右俣をつめる。横尾尾根の鞍部を乗り越すと天狗池で、ここから槍へは肩の小屋の穂苅氏のつけた路がある」
穂苅三寿雄氏が槍沢小屋を開設したのは1917年、肩の小屋(現・槍ヶ岳山荘)を開設したのが1926年のことですから、両小屋ともウェストンが日本を去った後のことです。ウェストンが日本滞在中にはまだその路はなかったはずです。

どういう理由があるのかは知りませんが、ウェストンが辿った槍ヶ岳登頂横尾本谷ルートは、横尾のコルから天狗池経由のコースであると、一般的には考えられているのです。
それじゃあということで、ウェストンが100年以上も昔に歩いたルートはいったいどこなのか? それを解明する山旅をスタートさせることになったのです。

2014/8/12  前夜発のさわやか信州号で上高地着5:30ころ。メンバーは僕とY根君とO橋君。K松さんは前日入山し、徳沢で待っています。

ところが、上高地はあいにくの雨。
ここのところ連日雨であったことも考慮して、早々に予定変更しました。つまり、初日の横尾本谷右俣黄金平泊を中止、横尾泊とし、二日目に空身で予定のコースを歩ききる。そう変更したのです。
徳沢ではK松さんと無事合流。結局、雨が小降りになるまで徳沢で停滞しました。

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▲横尾の天場に着き、しばらく避難小屋の軒の下で雨宿りしていると、雨も止んでくれました。テントを設営し、のんびりタイムです。13:40ころ。
右のゴアライトはK松さんのテントで1~2人用。K松さんはこの山行終了後も一人残る予定です。左の赤いフライのテントがO橋君ので、2人用。

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▲おつまみを出しあって、飲み始めてはいました。なんと! あれほど軽量化をお願いしていたのに、O橋君は缶ビールを6缶も持って来ていました。
おつまみだけでは寂しくなったので、夕食も作り始めました。僕が作ったのはスープ。クノールのオニオンコンソメカップスープです。ただし、ひと工夫加えます。細かく切ったモロヘイヤとサイコロ状に切ったベーコンを入れたのです。なかなかいけましたよ。
写真は相変わらず撮り忘れて、ぎりぎりセーフ! 14:51ころ。

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▲そしてびっくりなのが、O橋君のメインの肉料理! ぶ厚い豚肉ステーキです! しかも、美味しく焼き上げるために鉄製の重たいフライパンも持参。15:03ころ。
う~う~っ! 酒が進む~っ! 
ワインかブランデーが欲しい~っ! と思ったら、ビール党のK松さんがブランデーを持って来ていました。ラッキー!

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▲両面焼き色が付いたら、ナイフで切り分けて、いただきま~す! 15:07ころ。

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▲付け合わせのポテト&オニオンもあるとは! 本格的! 15:18ころ。

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▲ここらでちょっと周囲のロケーション説明を。まずは屏風岩。15:45ころ。

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▲屏風ノ頭の左側には穂高や明神の山々が。15:49ころ。

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▲その穂高や明神の山々ですが、おそらくこんな感じの同定で正しいのかと思います。

ところで、ウェストンも1912年8月19日、この辺りで幕営しています。
「夜になってキャンプを張り、マツの木の楽しい焚火のそばで夕食をとる。きれいな三日月が蝶ヶ岳の上から昇り、背後に威圧するようにそそり立つ穂高の尖峰と岩壁が月光に映えている」
ちなみに、ウェストンの文章はこれからもたくさん引用します。それを赤字で記しますが、引用文献は以下の通り。
『日本アルプス 登山と探検』(岡村精一訳 平凡社ライブラリー)
『日本アルプス再訪』(水野勉訳 平凡社ライブラリー)
『日本アルプス登攀日記』(三井嘉雄訳 東洋文庫)
ただし、上記三冊のうちのどれなのかは記載を省きます。悪しからず。

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▲僕たちの宴会は続きます。なんと! O橋君の豚肉ステーキはまだありました。
しかも、ただの豚肉ではなくて、麹と蜂蜜をまぶして一晩寝かせるという下ごしらえまでしてあるのです。15:52ころ。

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▲ここでメンバー紹介を。16:00ころ。
右から、まずはO橋君。最新の僕のザイルパートナー。すでに僕を乗り越えていってしまった感がジワジワ。多忙なのでなかなかザイルを組めていませんが・・・・
真ん中は、Y根君。超超多忙なアルパインクライマー。年に数回山に行ければいい方だとか。フリーもコンスタントに続けられれば5.12は行くと思うのですが・・・・ 彼にも軽量化の徹底を告げていたにもかかわらず、何もかもを念のために持参。極めつけは8×30mザイルをと言っておいたのに、ダブルザイルを2本も!(さすがにこれは気付かずに2本入れてしまったみたいですが)
左がK松さん。僕たちの中では超鉄人。上高地起点で北鎌尾根を10数時間で上高地に戻ったり、同じく上高地起点で槍ヶ岳~北穂高岳~奥穂高岳~前穂高岳ピストン~西穂高岳~上高地を24時間で歩ききったりするのです! 槍ヶ岳が大好きで、これまで88回登頂。そのうち22回は北鎌尾根から! 他にも富士登山駅伝の山頂往復6区を走ったり、富士登山競走を走ったりと、話題の尽きない人物です。

そして今回、偶然でしょうが、メンバーの年齢構成が絶妙でした。アラサー、アラフォー、アラフィフ、アラカンとほぼ10歳違いで揃ったのです。まあ、誰がどれでとは言いませんが。

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▲僕たちのテントから10mと離れていない草むらで、サルが食事をしています。なにやら草を食べているようですね。16:48ころ。

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▲主食はY根君の担当。五目寿司です。山では酸味がある方が食が進み易いですね。16:53ころ。

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▲五目寿司の完成品。17:05ころ。

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▲屏風岩の上空に赤く染まった雲が浮かびます。明日の好天が約束されているようです。18:52ころ。

明朝は3時起床。4時前には出発するつもりです。
おやすみなさい。

続きは http://blog.goo.ne.jp/1940sachiko/e/17fc3f259613d5024803bd324ddbd40d

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1 コメント

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羨ましいにつきます。技術と体力のあるものだけの... (N澤)
2014-08-28 05:38:10
羨ましいにつきます。技術と体力のあるものだけの世界ですね。地形図と記載ルートを見比べて楽しんでいます。
次回が楽しみです。
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