おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書43「日本人の戦争」(ドナルド・キーン)文藝春秋

2009-10-20 22:20:34 | つぶやき
 以前、山田風太郎の「戦中派不戦日記」を読んだ。講談社文庫から出たこの本は、昭和20年1月1日から12月31日まで、満23歳の、一医学生がつづった激動の昭和20年の日記である。山田の後書きによると、小学校の同級生男子34人中14人が戦死している。筆者は、医学生ということで兵役を免除された。その事実からこの日記は「傍観者」の記録ではなかったか、と。
 一方で、その山田の日記から、筆者は、「山田は日本の勝利を心から望んでいたし、勝利以外の終戦は想像することさえ拒否していた。東京空襲を目撃した後も日本は降伏すべきではないと言う確信は揺るぐことがなかった」と総括する。「二人の世界観は、根本的に違っていた」とも。
 また、医学書などそっちのけで、英米やフランス文学などを濫読していた山田に対して、キーン氏は、読書によってその人の世界観が形成されるなどというのは勘違いで、山田は自由の重要性を少しも感じていないことは不可解である、とも。たしかに山田は日記中でも、一貫して、アメリカに対する復讐をヒステリックなほど叫んでいる。このへんのキーン氏の分析は興味深い。
 「作家の日記を読む」との副題を持つこの本に登場する作家は、山田風太郎をはじめ、高見順、伊藤整、内田百、平林たい子、永井荷風・・・。この中では、荷風の日記は読んだことがあった。徹底した「反戦」「軍部批判」に貫かれている。
 他の作家達の日記の多くは、戦争批判や体制批判とはほど遠い。
 8月15日。この日を期に転換した作家たち。荷風のように戦争中は自ら発表しなかった姿勢の一貫性。
 いずれにせよ、後から(戦後になって)回想したものよりも、戦争という惨禍と変化の時代に日本人であるとはどういうことかが日々記録されていることに真実の声を見いだしている。
 なお、荷風の日記は、戦後書き直されたという説、「軍閥への憎悪や占領軍に対する好意を強調した」という意見も紹介している。

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