① 昨日、次のようなニュース(時事通信)。
兵庫県明石市の歩道橋事故で、改正検察審査会法に基づき、明石署の榊 和晄 (かずあき) ・元副署長(63)を強制起訴する検事役の指定弁護士が、元副署長らの取り調べの全過程を録音・録画(可視化)する意向を固めたことがわかった。全面可視化が実施されれば、初のケースとなる。
関係者によると、指定弁護士3人は今月5日、神戸地検の山根英嗣・次席検事らに対し、録音・録画に必要な機器の貸与を依頼。地検は「上級庁と相談したい」と回答したという。
検察・警察は裁判員裁判で自白の任意性を立証するため、取り調べの一部を録音・録画しているが、全面可視化には「容疑者が心を開かなくなる」などと反対。これに対し、日本弁護士連合会は、脅迫や誘導による 冤罪 ( えんざい ) を防ぐため、取り調べのすべてを録音・録画するよう求めている。
② 今日は次のような記事(讀賣新聞)。
郵便不正事件に絡み、偽の障害者団体証明書を発行したとして虚偽有印公文書作成などの罪に問われた厚生労働省元局長・村木厚子被告(54)の公判が17日、大阪地裁であった。自称障害者団体「 凛 (りん) の会」元会長・倉沢邦夫被告(74)とともに、民主党の石井一参院議員(75)に証明書発行の口添えを依頼したとされる元会員(67)が証人出廷し、「石井議員の事務所に行った記憶はない。供述調書は検事の作文」などと述べた。「事実と違う」と主張しても、机をたたかれたとも証言。検察側の取り調べを批判した。
検察側主張では、元会員は2004年2月下旬、倉沢被告とともに議員会館に石井議員を訪ね、証明書発行について口添えを依頼。石井議員は「厚労省に知り合いがいるから電話しておく」と応じ、村木被告の上司だった塩田幸雄・元障害保健福祉部長(58)に電話で依頼したとされる。倉沢被告も公判で、元会員と一緒に石井議員を訪ねた、と証言した。
ところが、元会員は「石井議員の事務所に行った記憶は全くなく、その時の映像が(頭に)出てこない」と証言。調書にある石井議員とのやりとりについても「取り調べ検事に『作文だ』と言ったが、認めてもらえなかった」と語った。
取り調べ状況について、元会員は「『記憶がない』と説明しても、検事から『いや、そうじゃない。事実はこうなんだ』と言われ、押しつけられた」と説明。「(検事が)声を荒らげたり、机をたたいたりすることが脅迫というなら、脅迫はあった」と言い切った。
③ 足利事件に関しては、テープから垣間見られた、取り調べでの執拗な誘導尋問、犯人だとの予断からの警察、検察の取り調べ。それを受けたかのようなマスコミの報道・・・。こうした問題点が指摘された。
担当の弁護士は、足利事件の誤判の責任は裁判官、検察官、警察官、弁護士、マスコミそれぞれにあったとして、「関与したすべての者が職責を果たさなかったために悲劇が生まれた。深刻な反省が求められる」と語っている。
本書は、リクルート事件の元被告・江副氏と弁護団からの「裁判員制度」を念頭にした問題提起の書。
リクルート事件とは、1986(昭和61)年、政府・官僚・政治家・NTT会長といった政官財界を巻き込んだ、リクルートコスモス株譲渡を中心とする「贈収賄」事件。
そのうち、江副裁判は、13年もの年月がかかって、結局有罪判決(執行猶予付き)となった。
その時の取り調べの実態を中心に、始まった「裁判員制度」をからめての「取調べの全面可視化」を主張している。
冒頭にあげた、3つの事例(記事)にも深く関係しているといえよう。
江副氏は取り調べのようすを次のように書く。
「この調書に署名すれば、早期釈放する」「署名しなければ、長期拘留にする。(そうなると)保釈後は浦島太郎になるぞ」
参考人調べでは、「依田社長は藤波官房長官訪問についてフォローアップのためにお礼を言っている」としてそれに沿った証言を執拗に迫られた、という。結局、検事に強要されて検事の思い通りの調書を取られてしまった、と。
また、「お前は嘘をついていた。真藤(NTT会長)はさっき落ちた!真藤はお前から直接電話を受けたと言っている」と言って土下座を強要された、とも。
こうした経過をふまえて、弁護団の一人は、このリクルート事件は、東京地検特捜部が誤った筋書きを設定してしまって、修正されないまま、筋書きを前提とした供述調書が大量に作成され、その調書をもとに判決が下された、と語る。
13年の長期裁判の結果、江副氏には、有罪判決(執行猶予付き)が下された。こうした結果が出たのだから、検察の取り調べを含め、江副氏の主張は間違っている、と言うことも可能だ。しかし、この書で問題にしているのは、今の取調べのやり方についての、厳しい批判。それが、冒頭の事例だ。今も変わらない密室での取り調べ。
裁判員制度のもと、市民が殺人や強盗などの裁判に関わって、死刑判決もありうるような量刑判断をしなければならない(それも3~5日で判決を下す)、そういう制度の中でこそ、公正な裁判、判断をするためには、「取り調べの可視化」が必要だ、ということだ。
裁判員制度が、検察主導の裁判・判決につながるのではなく、被告人の公正な裁判を受ける権利を実現するために存在するものでもなくてはならない。
そうした観点で、検察のあり方、マスコミ報道のあり方などを含めて、きわめて現代的な課題への問題提起の書である。
兵庫県明石市の歩道橋事故で、改正検察審査会法に基づき、明石署の榊 和晄 (かずあき) ・元副署長(63)を強制起訴する検事役の指定弁護士が、元副署長らの取り調べの全過程を録音・録画(可視化)する意向を固めたことがわかった。全面可視化が実施されれば、初のケースとなる。
関係者によると、指定弁護士3人は今月5日、神戸地検の山根英嗣・次席検事らに対し、録音・録画に必要な機器の貸与を依頼。地検は「上級庁と相談したい」と回答したという。
検察・警察は裁判員裁判で自白の任意性を立証するため、取り調べの一部を録音・録画しているが、全面可視化には「容疑者が心を開かなくなる」などと反対。これに対し、日本弁護士連合会は、脅迫や誘導による 冤罪 ( えんざい ) を防ぐため、取り調べのすべてを録音・録画するよう求めている。
② 今日は次のような記事(讀賣新聞)。
郵便不正事件に絡み、偽の障害者団体証明書を発行したとして虚偽有印公文書作成などの罪に問われた厚生労働省元局長・村木厚子被告(54)の公判が17日、大阪地裁であった。自称障害者団体「 凛 (りん) の会」元会長・倉沢邦夫被告(74)とともに、民主党の石井一参院議員(75)に証明書発行の口添えを依頼したとされる元会員(67)が証人出廷し、「石井議員の事務所に行った記憶はない。供述調書は検事の作文」などと述べた。「事実と違う」と主張しても、机をたたかれたとも証言。検察側の取り調べを批判した。
検察側主張では、元会員は2004年2月下旬、倉沢被告とともに議員会館に石井議員を訪ね、証明書発行について口添えを依頼。石井議員は「厚労省に知り合いがいるから電話しておく」と応じ、村木被告の上司だった塩田幸雄・元障害保健福祉部長(58)に電話で依頼したとされる。倉沢被告も公判で、元会員と一緒に石井議員を訪ねた、と証言した。
ところが、元会員は「石井議員の事務所に行った記憶は全くなく、その時の映像が(頭に)出てこない」と証言。調書にある石井議員とのやりとりについても「取り調べ検事に『作文だ』と言ったが、認めてもらえなかった」と語った。
取り調べ状況について、元会員は「『記憶がない』と説明しても、検事から『いや、そうじゃない。事実はこうなんだ』と言われ、押しつけられた」と説明。「(検事が)声を荒らげたり、机をたたいたりすることが脅迫というなら、脅迫はあった」と言い切った。
③ 足利事件に関しては、テープから垣間見られた、取り調べでの執拗な誘導尋問、犯人だとの予断からの警察、検察の取り調べ。それを受けたかのようなマスコミの報道・・・。こうした問題点が指摘された。
担当の弁護士は、足利事件の誤判の責任は裁判官、検察官、警察官、弁護士、マスコミそれぞれにあったとして、「関与したすべての者が職責を果たさなかったために悲劇が生まれた。深刻な反省が求められる」と語っている。
本書は、リクルート事件の元被告・江副氏と弁護団からの「裁判員制度」を念頭にした問題提起の書。
リクルート事件とは、1986(昭和61)年、政府・官僚・政治家・NTT会長といった政官財界を巻き込んだ、リクルートコスモス株譲渡を中心とする「贈収賄」事件。
そのうち、江副裁判は、13年もの年月がかかって、結局有罪判決(執行猶予付き)となった。
その時の取り調べの実態を中心に、始まった「裁判員制度」をからめての「取調べの全面可視化」を主張している。
冒頭にあげた、3つの事例(記事)にも深く関係しているといえよう。
江副氏は取り調べのようすを次のように書く。
「この調書に署名すれば、早期釈放する」「署名しなければ、長期拘留にする。(そうなると)保釈後は浦島太郎になるぞ」
参考人調べでは、「依田社長は藤波官房長官訪問についてフォローアップのためにお礼を言っている」としてそれに沿った証言を執拗に迫られた、という。結局、検事に強要されて検事の思い通りの調書を取られてしまった、と。
また、「お前は嘘をついていた。真藤(NTT会長)はさっき落ちた!真藤はお前から直接電話を受けたと言っている」と言って土下座を強要された、とも。
こうした経過をふまえて、弁護団の一人は、このリクルート事件は、東京地検特捜部が誤った筋書きを設定してしまって、修正されないまま、筋書きを前提とした供述調書が大量に作成され、その調書をもとに判決が下された、と語る。
13年の長期裁判の結果、江副氏には、有罪判決(執行猶予付き)が下された。こうした結果が出たのだから、検察の取り調べを含め、江副氏の主張は間違っている、と言うことも可能だ。しかし、この書で問題にしているのは、今の取調べのやり方についての、厳しい批判。それが、冒頭の事例だ。今も変わらない密室での取り調べ。
裁判員制度のもと、市民が殺人や強盗などの裁判に関わって、死刑判決もありうるような量刑判断をしなければならない(それも3~5日で判決を下す)、そういう制度の中でこそ、公正な裁判、判断をするためには、「取り調べの可視化」が必要だ、ということだ。
裁判員制度が、検察主導の裁判・判決につながるのではなく、被告人の公正な裁判を受ける権利を実現するために存在するものでもなくてはならない。
そうした観点で、検察のあり方、マスコミ報道のあり方などを含めて、きわめて現代的な課題への問題提起の書である。