無意識日記
宇多田光 word:i_
 



事である。解り易くも歌詞に"懐かしい/く"と2回も登場するのだから。映像的な立体感溢れるサウンドの中、プリミティヴなリズムと浮遊するメロディが縦横に踊る。ルーツに遡る力強さと浮き世に対して揺るぎ無い不変の真理の交錯するその場所に、時間の流れに対する不思議な感覚が立ち上がる。要するにソレこそが"懐かしさ"の感覚だ。宇多田ヒカルブランドとしては当時は違和感アリアリだった同曲だが、聖域の登場も経て今やその世界観の中核とも解釈できる曲となった。人間の根底にある懐かしさの感情と05年12月に対する実際の懐かしさを同時に味わえる今を生きる吾々は幸福だ。

コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )




聴いているとよくあるけれど、ソレは具体的に現前のサウンド自体或いは類似の音楽を聴き手が過去に聴いた経験がある事を必ずしも要請しない。つまりどういう事かといえば、個々が遠い過去の事物と再会した時に感じる"懐かしい"という感情そのものを音楽,サウンド自体に封じ込めておければよいのである。ピンクフロイドなどは(少なくとも私にとっては)その典型で、英語の歌詞が全く聞き取れなくても、強烈に懐かしさの感情が込み上げてくる。イマジネーションの豊かさは、まるで生まれる前にすら導かれるかの効果を催す。当然、光の音楽にも同様の力を持つ歌がある。(続く)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )