おなじみNHWBBSで、「シングルとミニアルバムとの区別がよくわかりません。」という投稿があったので、それについてつらつらと。
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元を辿れば、「シングル盤」とは、アナログレコード時代の「ちっちゃい盤」のことだった。EP盤(Extended Playの略)ってヤツね。あるいはドーナツ盤とか。それがCDに移行した際、アナログにならって、あの小さい8cmCDでシングルが発売されるようになって(アルバムCD発売から遅れること5~6年だったかな)、当然円盤が小さい分、収録分数がが少なかった。つまり曲数も少なかった。
ところが、先日もどこでだかの記事で触れられてたように、宇多田ヒカルがデビューしてきた頃からアルバムCDと同じ12cm盤によるシングル、「マキシ・シングル」が発売されることが多くなっていき、ジャケットデザインの確保や陳列・輸送の利便性なども相まって、結局この「マキシ盤」が主流になったわけさね。
いっぽう、「ミニアルバム」っていうのも存在する。この名称は「シングルというには曲数が多い、でもアルバムというには曲数が少ない」という理由がまずあるのだが、それとともにシングルとの大きな違いは「リーダートラックを決めない」ことにある。たとえそのCDの1曲目のタイトルがそのままミニアルバムのタイトルになっていたとしても、5曲入りなら5曲入りの作品として扱う、それが「カップリング曲が多いシングル」と「ミニアルバム」との最大の違いになる。
実は、この差をしっかりと強調している事例が、宇多田ヒカルにもちゃんとあるのである。恐らく昔からのファンはご存知と思われるが・・・。
逆からいえば、シングルCD/マキシシングル/ミニアルバム等々の名称について考えるのであれば、宇多田ヒカルは恰好のサンプルだともいえる。
彼女のCDシングルを列挙してみよう。
1st 1998.12.09(08cm)TODT-5242 2曲入り1,020「Automatic/time will tell」
1st 1998.12.09(12cm)TOCT-4127 2曲入り1,020「Automatic/time will tell」
2nd 1999.02.17(08cm)TODT-5267 2曲入り1,020「Movin' On Without You」
2nd 1999.02.17(12cm)TOCT-4138 2曲入り1,020「Movin' On Without You」
3rd 1999.04.28(08cm)TODT-5300 4曲入り1,020「First Love」
3rd 1999.04.28(12cm)TOCT-4150 4曲入り1,020「First Love」
4th 1999.11.10 (12cm)TOCT-4180 4曲入り1,100「Addicted To You」
5th 2000.04.19(12cm)TOCT-22070 5曲入り1,260「Wait & See ~リスク~」
6th 2000.06.30(12cm)TOCT-4230 4曲入り1,050「For You/タイム・リミット」
7th 2001.02.16(12cm)TOCT-4301 3曲入り1,100「Can You Keep A Secret?」
8th 2001.07.25(12cm)TOCT-4311 6曲入り1,100「FINAL DISTANCE」
9th 2001.11.28(12cm)TOCT-4351 4曲入り1,100「traveling」
10th 2002.03.20(12cm)TOCT-4361 4曲入り1,100「光」
11th 2002.05.09(12cm)TOCT-4381 4曲入り1,100「SAKURAドロップス/Letters」
12th 2003.01.29(12cm)TOCT-4455 4曲入り1,100「COLORS」
13th 2004.04.21(12cm)TOCT-4700 2曲入り 660「誰かの願いが叶うころ」
14th 2005.09.28(CD)TOCT-5001 1曲入り 660「Be My Last」
14th 2005.09.28(CD+DVD)TOCT-5002 2枚組み1,320「Be My Last」
15th 2005.12.14(CD)TOCT-5003 2曲入り1,050「Passion」
15th 2005.12.14(CD+DVD)TOCT-5004 2枚組み1,525「Passion」
16th 2006.02.22(CD)TOCT-5005 3曲入り1,100「Keep Tryin’」
・・・書くの疲れた。(爆) それはさておき。
「Be My Last」の1曲、一番曲数が多いのが「FINAL DISTANCE」の6曲、次が「Wait & See ~リスク~」の5曲、最も多いのが「4曲入り」のパターン、というのがわかると思ふ。"4曲入り"といっても両A面とそのカラオケ2曲、というパターンも含まれているが)
『では、6曲入り35分、という「FINAL DISTANCE」と、5曲入り22分の「リスク」の2枚がミニアルバムということ?』と思われるだろうが、実は、正確には違うのである。面白いことに6曲入りの「FINAL DISTANCE」の方が“マキシ・シングル”で、5曲入り「リスク」の方が“ミニ・アルバム”なのだった。
カンのいいかたはもうお気づきかと思ふ。これは、CD番号を見れば瞭然なのだ。今の2枚以外の番号を眺めてみると、8cmシングルの3枚は「TODT」の5000番台、12cmシングルは「TOCT」の4000番台だということがわかる。(「Be My Last」以降3部作はTOCT-500*と“飛び番号”扱いになっている。理由は謎。DVD同梱だからということでもないらしい。) 「FINAL DISTANCE」を見ても、TOCT-4311であって、他の12cmシングルと同列扱いであることがわかるが、「リスク」の方の番号は、TOCT-22070と、ひとつだけ5桁なのだ。
ここで今度はアルバムのCD番号一覧である。
1st Album 1999.3.10 TOCT-24067 3,059「First Love」
2nd Album 2001.3.28 TOCT-24601 3,059「Distance」
2nd Album 2001.7.25 TOJT-24651-2 3,900「Distance」(アナログ盤2枚組)
3rd Album 2002.6.19 TOCT-24819 3,059「DEEP RIVER」
3rd Album 2002.9.30 TOJT-24851-2 3,059「DEEP RIVER」(アナログ盤2枚組)
Compilation 2004.3.31 TOCT-25300 3,059「Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1」
・・・ご覧の通り、アルバムはTOCTの24000番~25000番台と5桁の番号があてられている。「リスク」は22000番台と、少し離れているが、シングルというよりはアルバムだ、というのはこれでなんとなくわかると思ふ。
理由は、当時も言われていたんじゃないかな、前述のように、「FINAL DISTANCE」というCDが、表題曲とその原曲と原曲のリミックス2曲、それぞれのカラオケ2曲、という風に、“FINAL DISTANCE”という楽曲1曲に焦点が合わされていたのに対して、「Wait & See ~リスク~」というCDは、まずリード・トラックの“Wait & See”とそのリミックスとカラオケが収録されているが、それとは独立に、“はやとちり”というオリジナルの新曲と、カヴァーというには余りにも素晴らし過ぎる“Fly Me To The Moon (in other words)”という2つのテイクも収録されている。表題曲のみならず、その他2つがそれぞれ独自の地位を主張している。だからミニアルバムなのであった。
これは、一概に曲数だけでマキシ・シングルかミニ・アルバムかの判別がつけられない好例であるといえよう。
・・・・・・といっても、この「Wait & See ~リスク~」CD、オフィシャルでは当然のごとく“5枚目のシングル”として掲載されているし、当時のオリコンチャートでも、アルバムチャートじゃなくシングルチャートに登場していた。だから、アーティスト・サイドの意向や、レコード会社の意向(或いは都合、或いは何某かの止むを得ない事情)は、あっさり無視されてるのね。(^_^;
というわけで、
Q.シングルとミニアルバムの違いはなんですか?
という問いに対する回答は、
A.シングル・チャートに入っているのがマキシ・シングル、
アルバム・チャートに入っているのがミニ・アルバム、です。
・・・ということになっちゃいます。(≧∀≦; 以上!(笑)
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・・・ふはっ、しまった、このエントリ、
> あのさぁ、「リスク」だけ番号5桁だから、これだけミニアルバムじゃない?
・・・の一行だけで済む話じゃないかっ!!(涙爆)
・・・・・・またつまらぬ長文を綴ってしまった・・・(T.T)
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