ブログ 「ごまめの歯軋り」

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「文語訳 旧訳聖書 Ⅳ 預言」

2020年08月29日 | 書評
ペチュニア

イスラエル民族の再興を願う3大預言書と12小預言書

3) 「文語訳 旧訳聖書 Ⅳ 預言」(岩波文庫2015年)   (その51)

11) ミカ書

作者は紀元前8世紀の預言者ミカに帰される。構成は7つからなり、本書の中でミカは支配階級に抑圧されている人たちの苦しみに共感し、横暴な人たち(その中には賄賂によって都合の良い預言をする預言者や祭司も含まれる)の不正を厳しく糾弾している。 ホセア書と同じ時代である。
第1章: ユダの王ウジヤ、ヨタム、アハズ、ヒビキヤの世にモレシテ人ミカに臨めるエホバの言である。サマリアとエルサレムの破壊のことについて述べられる。万民よ聴け主エホバ汝らに証しを立てられる。ヤコブの咎イスラエルの罪の故に大地は裂け山は溶ける。サマリヤは野の石塚となり、石像は砕かれ金は溶け偶像は悉く毀れり。ミカはこれがために叫び駝鳥のごとく啼ん。サビル、ザアナン、ベデエゼル、マロテ、ラキン、モレセテガテ、アクジブ、マレシアに住む者嘆きに依りて立つところを知らず。
第2章: 不義を図り悪事を企てる者らに禍あれ、これより逃げる能わず、悲哀の歌を言い終われば我らは滅ぼされる。預言する勿れ、恥辱彼らを離れざる。人もし風に歩み偽りを述べ我葡萄酒と濃い酒のことについて我に預言するというのであれば、その人はこの民の預言者になれる。ヤコブの末裔よ悉く集え、我彼らをボズラの羊の群れの様に滅ぼさん。撃ち破る敵の王の前にたってエホバは進み給う。
第3章: ヤコブの首領よイスラエルの侯伯よ汝ら聞け、公義は汝らの知るべきことではない。汝らは善を憎み悪を好み弱き者の肉を食らう、汝らエホバを呼んでもエホバは応えず、隠れ給う。我が民を惑わす預言者は彼らに獲物を与える者に向かっては平安あらんと言い、何もくれない者に向かっては戦いの準備をせよという。エホバは彼らについて暗闇の中ではエホバは応答しない、その恥ずべき姿は赤面なりという。ヤコブの首領よイスラエルの侯伯よ聴け、彼らは血をもってシオンを建て、不義をもってエルサレムを建てる。彼らは賂をとりて裁きを行い、祭司らは金をとりて教えをなす、預言者は銀子を取りて占いをなし、エホバは我に居ますれば我らに禍はないという。
第4章: 審判の日になって、エホバの家は山の上に立ち諸々の頂を超えて聳え、万民川のごとくこれエホバに流れ帰す。律はシオンより出でエホバの言葉はエルサレムより出る。エホバは多くの民を裁き強き国を戒め給う。彼らは剣を鍬に変え、槍を鎌に変え、国と国は相攻めず重ねて戦をしない。一切の民は各々神の名に依りて歩む、我らはエホバの名に依りて永遠なり。その日には弱き者、追い散らされた者を集め強き民となさん。シオンの娘よ産婦のごとく苦しみ産め、いま村を出てバビロンに行かざるを得ず、彼処にて汝救われん。シオンよ武装して立ち上がれ、あまたの国民を打ち砕き彼らの財産を分捕りエホバに捧げよ。
第5章: べテレヘム、エフラタはユダの中では小さな邑であるが、イスラエルの君を昔より輩出してきた、(旧訳聖書は王権神授説により王家を保護し、外敵が顕れ国が滅ぶときは王と民の宗教心の喪失のせいにする。イスラエルを支配する外国の強国どうしの興亡はすべてエホバの計画によるエホバの大軍がなしたものと自分の成果にする。)彼はエホバの力によって立ち、今は大いなるものになった。彼は平和の力、アッスリア人が攻め入らんとするとき、7人の牧者、8人の君を立て対戦した。彼らアッスリアを倒し我らを救った。審判の日には彼らの軍備戦闘力は失われ、彼らの邑、城は廃墟となり、魔術士はいなくなり、柱像やアシラ像も倒される。
第6章: メシアが生まれる場所である小さな村ベツレヘムと、包囲されて打たれ、滅ぼされて神のさばきを受けるエルサレムとを対照させる。エホバはイスラエルと論争をなした。エルサレムよ我が民よモアブの王バラクが図りし事、バラムが反論したこと、シッテムからギルガルのことを鑑み汝らエホバの正義を知るだろう。善事の何なるかを汝に告げた、エホバが汝らに求めることはただ正義を行い憐れみを愛し遜って神と共に歩むことではないか。汝らは食うとも飽かないいつも腹をすかしている、汝らは移しても救うことはできない汝らの罪によって滅ぼすのみ。
第7章: 善人地に絶つ、人の中に直き者梨、皆血を流さんと伏して伺う、網をもって兄弟を陥れる。両手は悪をなすに忙しく牧伯・裁判人は賄賂を求め、力ある人とは悪をなす人のことである。何の神か汝に如かん、汝エホバは罪を赦して、生き残り者の咎を見過ごし給う。神は憐れみを喜ぶゆえに諸々の罪を海の底に沈め給う。
(ミカ書おわり)
(つづく)