ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 春山昇華著 「サブプライム問題とは何かーアメリカ帝国の終焉」 宝島社新書

2008年08月31日 | 書評
米国の住宅バブル、略奪的貸付、証券化金融技術、世界資本市場からサブプライム問題を解明 第5回
第2章 サブプライムローンの略奪的貸付 (1)

 アメリカの住宅ローンの金利を見る。並以上の所得者向けの住宅ローン(プライムローン)の金利は3%である。低所得者向けの住宅ローン(サブプライムローン)は、30年固定金利で6%(返済リスクを考慮して3%高い)、変動金利で最初の5年間は6%、後は毎年変動して高くなる。高額なローンではジャンボ30年固定で7%である。これらにて手数料が乗せられ実質金利はさらにアップする。これが政府の定めた住宅ローンの標準型であった。ところが変形タイプの住宅ローン3/27では最初の3年間はは低い優遇金利が適用されるがその後は金利水準が高くなる。2004年以降政策金利の引き上げによって、優遇期間終了後の金利上昇が高くなり一気に支払い不能が増加した。その他オプションArmやネガティブアモチ(金利以下の返済しか出来ない客の元金は減らない)といった変形型が横行した。日本の銀行ではリスクがありそうな客には金は貸さないが、アメリカの銀行はリスクに応じて金利を上げて金を貸すのであった。サブプライムローン問題はこの変形ローン(実質的な略奪的貸付)で起きている。悪徳ブローカや金融機関はさらに法外な手数料を上乗せする。アメリカの消費者にも問題がある。問題となった消費者の多くは、住宅をローンで買ったあと、生活費を捻出するため不動産を担保にして借金をしている。不動産担保ローンの金利は7.8%である。さらに悪い事には低所得者にはカードローン借金者が多い。無担保消費者ローンの金利は14.5%である。話を逆に回転させるとカード-ローン多額債務者が、住宅担保ローンに乗り換えるために、サブプライムローンを組んで住宅ブローカーから住宅を買うと云うケースもある。恐ろしいサラ金地獄である。これも住宅価格が上昇して、金利が低い時は成り立つ話であった。しかし一挙に成立条件が消え去ったのである。そして破産して家を追い出された。不動産担保ローンに客を奪われたカード会社も不動産担保ローンに殺到した。

医療問題 真野俊樹著 「入門 医療経済学」 中公新書

2008年08月31日 | 書評
医療制度を考える上で、医療経済学的視点は欠かせない 第16回
医療と最新の経済学 (2)

医療におけるリスクとは、金融でいう価値の減少ではなく、経営や保険理論でいう「経済主体の安定に対して影響を与える偶然の事象」と定義される。高齢社会とは普通の人が歳とともに障害を背負うリスクが高くなる社会であろう。健康を失うリスクは年とともに増加するので、医薬品市場(7兆円)や健康食品市場(1兆円)が繁盛するのである。とくに健康関連の消費の増加はストレス社会から来る不安による。生活のリスク増加による不安を起さないためにはサービスの信用が必要である。医療制度は生命保険契約と補完して社会システムの市場の失敗を補っている。しかし医療においても価格変動と云うリスクは、診療報酬(公定価格)の低下と云う形でおき、供給側の死命を制する。これが現在の医療崩壊の一因でもある。また医療現場では医療事故、薬害エイズ・肝炎、手術の感染症併発などリスクも多い。安全機材の使用と医師の教育と云うリスクマネージメントにお金をかけなくてはならない。

環境問題 丸山茂徳著 「科学者の9割は地球温暖化炭酸ガス犯人説はウソだと知っている」 宝島社新書

2008年08月31日 | 書評
地球は寒冷期を迎え、人口爆発で石油は枯渇する事態こそ文明の最大危機だ 第7回

第1章:「地球温暖化」炭酸ガス犯人説のウソと「寒冷化」の予兆 (3)

さてここからが本書の「炭酸学原因説への反論」となる。考古学・気候学・地質学・地球科学の立場からの異論である。ICPPがあえて無視しているのか、少数意見として排除しているのかは知らないが、これまで地球温暖化説の異論は多多あった。これから有力な反証を取り上げてゆく。1998年スべンマークは太陽活動と宇宙線の関係から温暖化が進んだという見解を発表した。黒点が増えて太陽活動が活発になると太陽風(プラズマ)が地球に吹いて、新星爆発による宇宙線を吹き飛ばすのである。宇宙線は大気中の分子をイオン化させ、それが凝結核となって雲を発生させ、太陽光を反射し気温が下がるという仮説である。1980年から1995年の宇宙線量と雲量の関係は低層雲で極めてよい相関を示す。地球に降り注ぐ宇宙線は窒素原子を炭素原子放射性同位体(14C)に変化させる。14C(または10Be)を測定して宇宙線量や温度との関係が求められる。温度が高いと植物の炭酸同化作用は活発化する。この時植物は選択的に同位体炭素12(12C)と体内に取り込むため、相対的に大気中の13Cは増加する。1995年名古屋大学の北川教授は縄文杉の炭素13同位体の推移を調べたが、1600年から2000年間の気温と宇宙線量曲線とぴったり相関していたのである。

自作漢詩 「豪雨夜襲」

2008年08月31日 | 漢詩・自由詩


夜来雷聲天際     夜来雷聲 天際に聞く

濁流迫岸水生     濁流岸に迫り 水は紋を生ず

傾盆滌地無乾土     盆を傾け地を滌い 乾土無く
    
素昊雨餘有断     素昊雨餘 断雲有り 

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(赤い字は韻:十二文 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)