ブログ 「ごまめの歯軋り」

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「文語訳 旧訳聖書 Ⅳ 預言」

2020年08月20日 | 書評
オクラ

イスラエル民族の再興を願う3大預言書と12小預言書

3) 「文語訳 旧訳聖書 Ⅳ 預言」(岩波文庫2015年)   (その42)

5) ダニエル書 (その5)

第10章: 10章~12章までは、実際には一つの幻をダニエルが見たことについて述べています。10章はその序(導入するための備え)というべきものであり、11章は幻とその解釈であり、12章は結語となっています。クロス王の治世元年に、ユダヤ人のエルサレムヘの帰還が始まり、神の民の70年捕囚は終わりを告げました。しかしダニエルはそのままペルャにとどまったのです。その頃のダニエルの年齢はおそらく90歳前後と考えられます。彼はエルサレムに帰還しませんでした。ペルシャ王クロスの3年にダニエルは一つの黙示を得た。そのことばは真実で、大きないくさのことであった。彼はそのことばを理解し、その幻を悟っていた。「大いなる戦い」とは、天における神とサタンとの戦いです。ダニエルは、三週間の喪に服していた。三週間、ダニエルは、ごちそうも食べず、肉もぶどう酒も口にせず、また身に油も塗らなかった。
第11章: メデア人ダリヨスがバビロンの王となった元年ペルシャに3人の王(①カンビュセス、②スメルディス、③ダリヨス・ヒュスタスペス)が興ったが、4人目の者(クセルクセス)がすべてを支配しギリシャを攻めた。ひとりの勇敢な王(アレクサンダー大王)が起こり、大きな権力をもって治め、思いのままにふるまう。しかし、彼の国は破れ、天の四方に向けて分割される。「北」と「南」の基準は神の民ユダヤ(エルサレム)の位置から見た方角です。「北」はペルシャ「セレウコス王朝」、「南」はエジプト「ブトレマイオス王朝」です。彼ら(プトレマイオス家とセレウコス家)は同盟を結び、和睦をするために南の王の娘(ベルニケ)が北の王(アンティオコス2世セオス)にとつぐ。しかし北と南の王国は戦いを繰り返す。本章5節から20節までその戦いのシーソーゲームが続くがこれは省略する。第1節から45節までは、ペルシャのセレウコス王朝の内部抗争と宗教支配についての記述である。ひとりの卑劣な者(巧言を弄する者)が起こる」にある「彼」をセレウコス4世と解釈し、その後の「ひとりの卑劣な者」をアンティオコス4世エピファネスのことであるという解釈がある。アンティオコス4世エピファネスは多くの財宝を携えて、彼の心は聖なる契約(選民であるユダヤ人の信仰)を敵視して、ほしいままにふるまい、自分の国に帰る。彼エピファネスは再び南へ攻めて行くが、キティムの船(ローマの艦隊)が彼エピファネスに立ち向かって来るので、彼は落胆して引き返し、聖なる契約にいきりたち、ほしいままにふるまう。その聖なる契約(ユダヤ人の信仰)を捨てた者たちを重く取り立てるようになる。思慮深い人(神を恐れるユダヤの人々)のうちのある者は、終わりの時までに彼らを練り、清め、白くするために倒れる。彼はとりでの神(宗教的権威・経済的力・軍事力をもった偽りの神)をあがめ、金、銀、宝石、宝物で、彼の先祖たちの知らなかった神をあがめる。また彼は外国の神の助けによって、城壁のあるとりで(神の都エルサレム)を取り、彼が認める者には、栄誉を増し加え、多くのものを治めさせ、代価として国土を分け与える。南の王が北と戦いを交える。北の王は戦車、騎兵、および大船団を率いて、彼を襲撃し、国々に侵入し、押し流して越えて行く。彼は麗しい国(イスラエル)に攻め入り、多くの国々が倒れる。しかし、エドムとモアブ、またアモン人のおもだった人々は、彼の手から逃げる。彼は金銀の秘蔵物と、エジプトのすべての宝物を手に入れ、ルブ人とクシュ人が彼につき従う。彼は、海(地中海)と聖なる麗しい山(シオンの山)との間に、本営の天幕を張る(ハルマゲドンの戦い)。しかし、ついに彼の終わりが来て、彼を助ける者はひとりもない。
第12章: 民の艱難の時期に大いなる君ミカエルが現れる。汝の民は救われる。「ダニエルよ。あなたは終わりの時まで、このことばを秘めておき、この書を封じておけ。多くの者は知識を増そうと探り回ろう。」ダニエルが見ていると、見よ、ふたりの人が立っていて、ひとりは川のこちら岸に、ほかのひとりは川の向こう岸にいた。ダニエルは川の水の上にいる、あの亜麻布の衣を着た人に言った。「この不思議なことは、いつになって終わるのですか。」答えは「ひと時とふた時と半時」とは、三年半に相当します。この時がユダヤ人にとって大患難の時、最大の試練の時を迎えます。あの亜麻布の衣を着た人は言った。「ダニエルよ。行け。このことばは、終わりの時まで、秘められ、封じられているからだ。」それは千二百九十日である。
(ダニエル書 終わり)
(つづく)