猪瀬直樹メルマガ 日本の研究 2007年11月29日発行 より抜粋
「メディアが取り上げない防衛装備調達の最大の問題点」 軍事ジャーナリスト 清谷信一
■我が国の防衛装備調達の異常さ
防衛装備調達の最大の問題点は、装備調達に先だって調達期間、調達数、予算総額を決めない我が国の防衛省の特異な調達システムにある。実はこれを改めれば簡単に数千億円のコストの削減が可能だ。
諸外国では装備の調達に際しては、まず自国を取り巻く将来の安全保障環境を予測し、5年なり、10年なりの具体的な未来における周辺諸国(あるいは仮想敵)の脅威の度合いを見積もる。それに合わせて戦略、ドクトリンを決定し、それに沿って装備の調達を決める。
ところが、防衛省では調達する装備の数も、総数を揃えるまでの期間も、必要な予算の総額も事実上決めていない。だから、ダラダラといつ終わるともなく細々と調達が続けられている。結果として調達に20年以上の年月がかかることも珍しくない。数が揃った頃には旧式兵器である。
先行きが不透明で、リスクが高く、コストがかかり、しかも生産性は低い仕事となる。故にサプライサイドは非常に大きなマージンを乗せざるを得ない。よって国産品も輸入品も調達コストは諸外国の数倍から10倍という異常な値段になっている。
■防衛省の装備調達から商社を排除すれば調達コストは下がるか
現在の我が国の防衛費の総額は英国と概ね同じレベルだ。その英国の装備調達部門であるDE&S( Defence Equipment and Support、かつてのDPAおよびDLOが07年4月に合併)の人員は約2万9000人である(英国防省のHPより)。これに対して防衛省装備施設本部の定員は593人。同じく経理装備局の定員は249人。だが、道路公団の例を見ても明らかなように、官が民間より効率的に仕事をこなすとはかなり難しいと言えよう。現在の商社の防衛省担当者をすべて集めても、恐らく2000人にも届かないだろう。つまり、調達に関わる人数だけを考えると、現在の商社を利用した防衛省が直接海外から調達を行うよりも効率的であるとも考えられる。ある意味防衛省の仕事をアウトソーシングしているわけで、他国より進んでいると言えなくもない。
調達を合理化するためには抜本的に調達のシステム、また調達に関する考え方のレベルから変えなければならない。まず、諸外国と比べて防衛省や自衛隊の現状がいかに異常であるかを、当の防衛省や自衛隊はもちろん、政治家やメディア、納税者たる我々国民が知る必要がある。そうでなければ、改革は単に防衛省の焼け太りで終わるだけである。
「メディアが取り上げない防衛装備調達の最大の問題点」 軍事ジャーナリスト 清谷信一
■我が国の防衛装備調達の異常さ
防衛装備調達の最大の問題点は、装備調達に先だって調達期間、調達数、予算総額を決めない我が国の防衛省の特異な調達システムにある。実はこれを改めれば簡単に数千億円のコストの削減が可能だ。
諸外国では装備の調達に際しては、まず自国を取り巻く将来の安全保障環境を予測し、5年なり、10年なりの具体的な未来における周辺諸国(あるいは仮想敵)の脅威の度合いを見積もる。それに合わせて戦略、ドクトリンを決定し、それに沿って装備の調達を決める。
ところが、防衛省では調達する装備の数も、総数を揃えるまでの期間も、必要な予算の総額も事実上決めていない。だから、ダラダラといつ終わるともなく細々と調達が続けられている。結果として調達に20年以上の年月がかかることも珍しくない。数が揃った頃には旧式兵器である。
先行きが不透明で、リスクが高く、コストがかかり、しかも生産性は低い仕事となる。故にサプライサイドは非常に大きなマージンを乗せざるを得ない。よって国産品も輸入品も調達コストは諸外国の数倍から10倍という異常な値段になっている。
■防衛省の装備調達から商社を排除すれば調達コストは下がるか
現在の我が国の防衛費の総額は英国と概ね同じレベルだ。その英国の装備調達部門であるDE&S( Defence Equipment and Support、かつてのDPAおよびDLOが07年4月に合併)の人員は約2万9000人である(英国防省のHPより)。これに対して防衛省装備施設本部の定員は593人。同じく経理装備局の定員は249人。だが、道路公団の例を見ても明らかなように、官が民間より効率的に仕事をこなすとはかなり難しいと言えよう。現在の商社の防衛省担当者をすべて集めても、恐らく2000人にも届かないだろう。つまり、調達に関わる人数だけを考えると、現在の商社を利用した防衛省が直接海外から調達を行うよりも効率的であるとも考えられる。ある意味防衛省の仕事をアウトソーシングしているわけで、他国より進んでいると言えなくもない。
調達を合理化するためには抜本的に調達のシステム、また調達に関する考え方のレベルから変えなければならない。まず、諸外国と比べて防衛省や自衛隊の現状がいかに異常であるかを、当の防衛省や自衛隊はもちろん、政治家やメディア、納税者たる我々国民が知る必要がある。そうでなければ、改革は単に防衛省の焼け太りで終わるだけである。