紅蓮(ぐれん)のポケット

子どもの本の作家・三輪裕子のふつうの毎日
2015年夏。三宅島で農業を始め、東京と行ったり、来たりの生活になる

5・ウェールズ地方で

2004-08-11 15:56:17 | 8・山と旅の思い出
ウェ-ルズ地方で3週間過ごした。ウェールズは鉄道網があまり発達してないので、レンタカーを借りることにした。が、そのおかげでずいぶん移動が楽になり、なんとか旅ができたと思う。4人も小さい子がいると、荷物が多い上に、一人が寝てしまうとにっちもさっちもいかなくなってしまう。その点、車だと楽だった。車の後ろの座席で、4人の子どもたちは、折り重なるようにして、よく眠っていた。
おなかがすいたといえば、レストランなどすぐには見つけることができない上、待ったがきかない子どもたちなので、車を止め、食料を出ては、即ピクニック気分を味わった。



ウェールズでは、南部と北部の二カ所の農場に泊まった。南部の宿、乗馬学校が併設されている宿だった。白いクロスがかかったテーブルでディナーを食べるのだけど、子どもたちもここでは、ちゃんと食事をしないとだめだとわかるらしく、驚くほど行儀良く食べていた。



北部の宿は、ごくふつうの農家で、あいている部屋に泊めてくれた。ウェールズなまりが強く、ほとんど言葉が通じなかったが、おじさんもおばさんも子どもたちも、暖かくもてなしてくれた。
この二カ所の農場に泊まったおかげで、本を書けたと思っている。生まれて初めて馬の手入れもしたし、馬にも乗ったし、羊にミルクもあげたし。暇があると、近くの湖で遊んだり、ハイキングに出かけた。毎日が新鮮で楽しかった。



ウェールズでは、お城もたくさん見た。一目惚れしたスノードンという山にも登った。この山はほんとうにカッコのいい山なので、ぜひ物語には登場させたいと思った。
それらの体験をもとに「緑色の休み時間」を書いたのだけど、旅をしている最中、物語は生まれた。
息子が、農場のランダルという名の男の子と、英語も話せないのに会話をして、通じているらしいのを見て、インスピレーションがわいたのだ。(写真真ん中がランダル少年のモデル)



そして、旅をしながら、物語はしだいに頭の中で一つの形をなしていった。忘れないように、夜、子どもを寝かしつけては、ストーリーの大筋をノートに書き留めていった。

 

それは、最初にストーリーがあって、それに沿って取材をして書いた、一作目の「ぼくらの夏は山小屋で」とは全く創作課程がちがっていた。そういう風にしても創作ができることを、私はその旅で初めて知ったのだった。

★イギリスの旅
1・おそろしくも楽しいイギリス旅行
2・なぜイギリスにいくことにしたのか
3・二つの幸運
4・旅立ち
5・ウェールズ地方で
6・湖水地方
7・コニストン湖へ
8.最後に



4 コメント

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なな、なんと! (柑子)
2004-08-12 23:26:35
ランダムがいたのですか!

私はランサムの名前をもじったのか、などと考えておりました(-▽-)。



言葉が通じなくても友達になれるというのは、実体験に基づいていたのですね。すごいなぁ。
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柑子さんへ (紅蓮)
2004-08-13 05:42:53
ランダルの写真を、このBlogに付け加えました。なかなかに素敵な少年でした。

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緑色の休み時間 (史aya子&繪e子)
2009-02-08 18:26:17
ようやく手に入れて、先ほど一気に拝読しました。
引き込まれて、トイレにゆくのも忘れて読み続けました。
子どもの頃に読みたかった!
言葉を介さない友情を、言葉で書ききるところがまず素晴らしいです。
読みながら、無言の会話が見えて来て、あたしも言いたいことが伝わるか、広太の気持ちを解って、と一緒になって、心の中で説明しました(笑)
でも本人たちは案外冷静。
自分の心に正直なのですね。
風景も、とても美しかったです。
大人が読んでも楽しい本。
子どもが読んだら、大きな夢と希望になりますね。
甥っこたち、いまはまだチビですけれど、もう少ししたら読ませてあげます。
今日は読者としての書き込みです。
素晴らしい本を、ありがとうございます。
子どもはみんな、STAND BY MEなんですね。
あたしもまた、旅に出たいです。
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史aya子&繪e子さんへ (紅蓮)
2009-02-08 21:28:48
読んでくださったのね。どうもありがとう♪
この本も、この本を書こうと思ったきっかけをくれたイギリス旅行も、私にとって大切なものです。
旅をしながら、子ども達をベッドにいれ、部屋の片隅の小さな明かりで、毎日物語をつづっていました。
そんな日々のことを思い出すと、またイギリスを旅したくなります。
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